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2005年12月23日

過去の記憶 VOL3

 唯志はもどかしさでじりじりしていた。

 【 …のパスを…がスルーして決まってしまった。】
 「えっ。」
 【 前半40分レイソル1点をリードしました。】
 「なんだよ。この段階でリードされると、かなりきついな。」
 唯志はヴィッツの下から出てくると軽く伸びをした。

 思えばコンサドーレの今年はすばらしい年だった。集大成の年だった。
 それもこれもこの試合に勝たなければ意味がない。
 本当に行って応援したかったのに。

 【 前半を終わりまして、0-1でコンサドーレがレイソルに1点ビハインドです。】
 「おい唯志、次、ヒーターコア交換が待ってるぞ。」父親の声で我にかえった。
 「ちょっと、少し休憩させてくれよ。」唯志は、熱い紅茶を飲むために、工場の上にある自室に入った。

 ここには大好きなコンサの歴史がほんの少しだけあるのだ。唯志が唯一落ち着ける空間なのだ。
 初めてエメルソンを見た時の鳥栖スタジアムのチケット、ビジュとの肩を組んだ写真。 札幌ドームの開幕戦でたたきすぎて壊れたメガホン、偶然撮れた天皇杯の相川のvゴール、試合日程を手書きで書き込んだ自分だけのオフシャルガイドブック、新聞や雑誌を切り抜いたスクラップブック、試合を録画したビデオテープやDVD、そして洗濯をしすぎてぼろぼろになったマフラー。雨の試合でシミがついてしまった赤と黒の帽子。これらは唯志だけの大切なものだ。コンサの思いでが詰まっている。

 「そういえば、今日、試合に出ている藤田との写真もあったっけ。ちょっと色あせてるな」「さて、後半だ。」
 唯志はまた工場にもどり、今度はティーダの下にもぐった。


posted by asa3804 |21:21 | コンサドラマ | コメント(0) | トラックバック(0)