コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2008年07月29日

<第4話> 起きている時と寝ている時

【起きてる時と寝てる時】

10日前の日曜日、僕は札幌市西区の幹線道路沿いを歩いていた。
ちょうど昼時で、そろそろお腹が空いてきたから何か軽く食べようと考え
コンビニか安そうな食堂を探しながら車でしか通ったことのない道を歩いた。

信号を渡ろうとして立っていると、道路の反対側に見たことのある初老の男性がいた。
『え~と、あの人は……』 と、少し考えた後、僕は仰天した!
昨年の春に病気で亡くなった以前同じ職場にいた先輩だ !!

信号が青に変わった。僕はその場に立ちすくんでいた。
すると先輩がニコニコしながら大股で道路を渡って来た。

「久しぶりだな!元気そうだね!」 と普通に声をかけられた。
「あの~ …… 昨年亡くなられましたよね……?」 と恐る恐る聞いてみた。

「アハハ! そうだね~ こっちでは死んだとか亡くなったとかって言うものね」

最初は仰天していたけど全く怖さは無かった。
なぜなら、服装もそうだし、もう何もかもが普通に生きている人と同じだからである。

怖がっていないけど、かなり不思議そうにしている僕に、先輩は説明をしてくれた。
我々は、寝ている時は精神があちらの世界…… 俗に言う死後の世界へ行っているそうだ。
そして眠りから覚めたら、精神がこちらの世界に戻って来ているとのこと。
「時々夢を見ることがあるでしょ? あれは実は夢じゃなくて、あの世での出来事を
見ているんだよ。でも大抵は目が覚めた時点で忘れちゃうんだよね~」
そしてこちらで死ぬと、その瞬間から、全てが逆になるのだそうである。

「いま俺は、自分がいる世界 (こちらで言うところの死後の世界) で眠っていて
そこで見ている夢が君と立ち話をしている俺なのさ (笑) 」 わかるかい?

僕は聞いた。「ということは、その辺にいる人の中に、あの世で夢を見ている人……
すなわち、あの世の人も混ざっているということですか?」

「あれっ? 先輩?」 大先輩の姿は既に消えていた。

僕は、今ここで見たことを幻想だとは思わないようにするつもりだ。
「先輩、きっと目が覚めたんだな~」

--- END ---

posted by hiroki |18:10 | 空想短編集 |