コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2008年11月15日

<第6話> みんなどうしたの?

9月16日以来の空想短編集になりますが、関心のない方はスルーでお願いします。
少々長めだし (笑)


【みんなどうしたの?】

中学を卒業してから27年も経つというのに
古びた温泉旅館で行われた同期会には約半数の45人もが参加。
1泊での同期会は初の試みだった。

夕食を兼ねた大広間での宴会も終わり
二次会を…… といきたいところだが
残念ながら旅館の中も外へ出ても、飲み屋やカラオケBOXは一切無い。
誰かの部屋に集まって飲み会の続きをしようとか
とりあえず温泉に入ろうとか、大広間を出たところにある
少し広い場所でガヤガヤと盛り上がっていた。

その時、右奥の方向でガシャン!という大きな音がした。
「何だ?」 「どうした?」 と、みんな音の方向へ走って行った。
いつもなら真っ先に突っ走って行く私はナゼか足が動かない。
その場に私1人が取り残された。

みんなの声も、そしてバタバタというスリッパ音も聞こえなくなってから
ようやく私の足が動いた。

急ぎ足で音がした方へ向かった。突き当たりのガラス戸が破られている。
どうやらガシャンという音は、それが原因だったようだ。
みんな左右に分かれ廊下に座り、誰もが下を向いている。頭を掻いている者もいる。
「どうしたのさ」 と、今でも顔を会わせる機会が割と多い男子に聞いたが
チラッと私の顔を見て直ぐに下を向いた。
続けて元気のいい女子にも 「どうした?」 と声をかけたけど反応が無い。
異様な光景に動揺した私は傍らにあった1人掛けの椅子を蹴り倒して
「みんな!何なんだよ!何があったんだよ !!」 と叫んだ。

音がした時、ナゼ私の足だけが動かなかったのか。ここで一体何が起こったのか。
従業員を探しに戻ってみたが、宴会場もフロントも空っぽで誰もいない。
再び割られたガラス戸の場所へ。

私はガラス戸の向こう側へ行くしかないだろうと考えた。
何か手掛かりが見つかるかも知れないと思ったのだ。
ガラス戸の向こうは、廊下の左右に客室が並んでいるが
どの部屋も戸が開いたままで中は真っ暗だ。

角を曲がった時、奥の方にある1つの部屋から灯りが漏れていた。
備え付きテレビの音声が、ほんのかすかに漏れている。
その部屋の前まであと2歩というところで 「入れよ」 という男の声。
浴衣の上に丹前を羽織っている男の顔には確かに見覚えがある。
それは中学1年だった頃の我々に散々からかわれていた英語教師だった。

「お前が首謀者だったよな」
「はっ? 何がですか?」
「俺を馬鹿にしていた首謀者だよ」
「僕じゃない!…… いや僕だけじゃないですよ」
教師は声を張り上げて 「俺にとっては、お前が最も嫌な存在だった!」

その時、後の入り口から他の生徒達が、わらわらと狭い部屋に入ってきた。
「みんな歩けるようになったんだ!」 と私は味方を得た気がしてホッとした。
しかし1人から意外な言葉が返ってきた。
「お前だよ。お前が首謀者だったんだよ」
「えっ?」
すると英語教師も 「ほうらみろ。みんなもお前が首謀者だと認めている」
他のみんなもトーンの低い声で 「お前が首謀者だった」 などと言い出し
部屋の中がその声で一杯となり、耐えられなくなった私は耳を塞ぎしゃがみこんだ。

みんなの声がピークになったところで突然静寂が訪れた。
英語教師の姿が無い。テレビもスイッチが切れている。

「……え?なに?」 と女子が3~4人キョロキョロしている。
「さっきまで宴会だったよな」 と仲良しの男子が私を見ながら問いかける。

どうやら正常な空間に戻ったようだ。

私はその後、みんなの前で出来事を全て話した。みんな信じて聞いてくれている。
「多分、その英語教師は現世に存在していない。
中学生だった我々に散々からかわれたという嫌な記憶が残っていたのだろう。
我々的にはコミュニケーションを取っていたつもりの接し方も
先生にしてみれば、とても嫌だったということだ。
今日は我々がここに集まることを知り
先生にとっての首謀者だった僕に怒りをぶつけたくて現れたのだろう」

--- END ---

posted by hiroki |10:21 | 空想短編集 |

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この記事に対するコメント一覧
Re:<第6話> みんなどうしたの?

^_^;古びた温泉旅館
硫黄がキラキラ黄金色に
輝いていた黄金湯温泉。

先日久々に樹齢700年
桂の神木を見て来ました。
林檎並木も今は昔話・・

posted by 風に吹かれて| 2008-11-15 14:31

Re:<第6話> みんなどうしたの?

心ないことを言ったり言われたり、20年以上経っても覚えてるんですが、30年経つと言葉より影響が残ってます。

個人史の中の恥ずべき記憶でも、忘れず(逃げず)に自分の幼さ心なさを忘れづは、できます。

受けた傷をどうしよう。
その場なら怒ることで解消されても、年数経つと・・・
許すことで自分も救われるそうですが、相手が目の前にいるわけじゃなし。

解決できることではなく、目を逸らさないことで向上していくしかないんでしょうか。

posted by OWLS| 2008-11-15 20:26

Re:<第6話> みんなどうしたの?

>風に吹かれてさん 、OWLSさん
いつもコメントありがとうございます (^-^)
また何かネタが浮かんだら、たわいも無い超短編小説を書きますので
懲りずにお読みいただけると嬉しいです。

posted by hiroki| 2008-11-16 13:11