2009年11月23日
湿った空気は重いのか?
禅問答のようなタイトルですが、湿った空気は乾いた空気より、重いのでしょうか軽いのでしょうか。 夏場の、湿度が高いジットリした空気は、体が重たく感じるし、空気自体も密度が高くて濃厚なように感じます。 湿った雪が乾いた雪より重たいように、湿った空気というのは乾燥した空気に水蒸気を加えたものだから、乾いた空気より重いはずです・・か? 答えは逆です。 湿った空気は乾いた空気よりも軽いのです。
そんなのウソだろっ! と思った人は、ある意味で正常な感覚の持ち主ですが、簡単な例えとしては、純金(24金)に銅などの軽い金属を混ぜて18金の合金を作ると、24金よりは軽くなるのと同様なことですから、数式が嫌いじゃない人は一緒に考えてみましょう。 重さの無い袋を用意して、これに乾燥空気を詰めます。 この袋(と空気)の重さは、当然ながら乾燥空気の重さだけです。 この乾燥空気の重さを Wd とします。 この袋の中に水蒸気を混ぜると、水蒸気の重さの分だけ袋(と空気)の重さが増えます。 その重さを Wm とすると、 Wm = Wd + Ww となります。 (Wm は湿った空気の重さ、Ww は水蒸気の重さ) もし体積が変わらずに重さだけが増えたのなら、同体積の乾燥空気より比重が大きくなるから、浮力を失って沈みます。 しかし相手は、空気という「気体」です。乾燥空気の中に「液体」の水を加えた訳ではありません。 気体の体積は、温度や、自身の圧力と外界の圧力との兼ね合いによって、膨らんだり縮んだりという体積変化をします。 高校で習ったと思われる、「気体の状態方程式」を思い出して下さい。 気体の体積は、気体を構成する成分の分子量によって決まり、1モルの気体は、0℃・1気圧で22.4リットルの体積を占めます。 この「体積」値は気体の「種類」に関係なく一定で、気体の「重さ」が気体の「分子量」に従って変わります。 空気(大気)の成分は、窒素と酸素とアルゴンと二酸化炭素と水蒸気・・(以下略)であり、二酸化炭素までの比率はどこでもほぼ一定ですが、水蒸気は場所によって大幅に変わります。 簡単のために、空気は 窒素=80%、酸素=20%、他は0% という比率になっていると見なして、乾燥空気の分子量を計算してみると(窒素の分子量を28、酸素の分子量を32とすれば)、 28×0.8+32×0.2=28.8 になります。 この空気に水蒸気(=水の分子)を(例えば2%)混ぜるとすると、その分だけ他の分子の比率が減り、 窒素=79%、酸素=19%、水=2% という比率で計算してみると、水(H2O)の分子量を18(=1×2+16)とすれば、 28×0.79+32×0.19+18×0.02=28.56 となって、乾燥空気よりも軽くなります。 この結果は、液体の水は空気より重いという直感的な意識とは反するでしょうけど、その由来は、(気体のH2Oである)水蒸気は空気より軽いことに依ります。 これが原因で、「湿った空気が流入すると大気の状態が不安定となり、対流が起こりやすくなって雲が発達しやすい」という現象が起こります。 上下方向の温度の違いによって対流が起こることは、鍋の中や浴槽での対流を見慣れていれば受け入れ易い事実でしょうけど、下層に湿った空気が流入すると不安定になるということは、あまりピンとは来ないかも知れません。 うちの壁に掛かってる気象計(普段は見てない・笑)
posted by 雁来 萌 |21:46 | 気象細事記 | コメント(5) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:湿った空気は重いのか?
はじめまして。
確かに水蒸気の多い空気は軽いというのは(少なくても理論上は)わかるのですが、極端な話、
湯気っている風呂場のような場合は重いですよね。
風呂場や雲、あるいは霧みたいにはっきり目で「液体の水」が見えるとまではいかなくても、湿度が
高い場合、わずかながら「液体の水」が存在している気もするのですが、違うでしょうか?
湿度の多い空気は軽いというのは理論上のことに過ぎず、実測したのか疑問なんですが、本当に
そうなんでしょうか?
posted by かもめ| 2009-11-23 22:25
Re:湿った空気は重いのか?
かもめさん、いらっしゃいませ。
理屈っぽい人は大好きです。
湯気っている風呂場の空気は重い・・とは感じないので、答えようが難しいです。
空気中に液体の水滴が浮いている状態を「霧」と言い、それを下から見たら「雲」と呼ぶので、「雲」と「霧」とは同じ物です。
風呂場にも水滴が浮いているので、大きな風呂場を遠くから見たら「霧」に見えるでしょう。
湿度が高い場合に、わずかでも「液体の水」が存在していたら、それは「霧」になってしまって、「空気」ではなくなります。
「空気」と「水滴」が混じっている状態の重さを測っても、それは「空気」の重さを測ることにはならず、多分、「水滴」の重さを測ってしまうことになると思います。
理論というのは実際の現象を説明するためのもので、現実を説明できないような理論は役に立ちません。
私は水蒸気の重さを測ったことが無いし、1モルの気体の容積を測ったことも無いし、酸素の分子量を測ったこともありません。
でも、実験結果に基づく理論を使えば現実をうまく説明できるから、受け入れざるを得ないのです。
受け入れたくない場合は、自分で違う理論を作ってそれを証明するしか無いんですね。
posted by 萌| 2009-11-23 23:40
Re:湿った空気は重いのか?
萌さん、レスありがとうございます。
私が言いたかったのは、水蒸気が過飽和のときなら、乾燥した空気よりも重いのではないかと思ったのです。
(私の書き方が悪かったみたいで申し訳ありません)
以前から疑問に思っていたので、これを機に頑張って調べてみたいと思います。
今後ともよろしくお願いたします。
posted by かもめ| 2009-11-24 20:19
過飽和は寝て待て
ひょっとして、水蒸気(気体)と湯気(液体)とを混同してるのかなぁ、とも思いましたが、そうではないようですね。
水蒸気が水滴に「凝結」するためには、中心(種)になる粒子が必要で、種が無ければ水蒸気のままでしばらく留まって過飽和にもなり得ます。
しかし空気中には種になる粒子が沢山あるので、ちょっとでも過飽和になるとすぐ水滴が出来てしまって、残りの空気は100%の飽和状態を保ちます。
過飽和になったとしても、水蒸気が増えた分だけ体積が増えるので、密度が増える訳ではないんですね。
疑問に思った事は、トコトン調べて考えるのが楽しいですよ。
posted by 萌| 2009-11-24 22:18
Re:湿った空気は重いのか?
再度のレス、ありがとうございます。
大丈夫です。水蒸気は無色透明で目に見えないのは知っております。
(湯気を水蒸気だと勘違いしている人は多いですよね)
> 過飽和になったとしても、水蒸気が増えた分だけ体積が増えるので、密度が増える訳ではないんですね
過飽和の場合、H4O2分子とか、H6O3分子とかが存在するかと思ってました。
posted by かもめ| 2009-11-24 22:37