スポンサーリンク

2009年01月21日

石崎監督は、ホームとアウェイの戦い方を変えるのか?

J2は、今季、全18チーム3回戦51試合の長丁場になる。
さらに、新加入の富山、岡山、栃木含め地方都市が多く、移動も大変になることは予想に難くない。

この点について、石崎監督は↓のように発言している。
【2009シーズン始動!】札幌:新監督就任会見での矢萩竹美社長・石崎信弘監督コメント(09.01.13)
Q:札幌の場合、首都圏のチームと違ってアウェイゲームの際の移動距離が長かったり、気温差が大きかったりするわけですが、ホームゲームとアウェイゲームでの戦い方や考え方を変えたりというプランはお持ちでしょうか?
「やはり気温差がかなりあると思いますし、移動もJ2のほうが大変だと思います。アウェイでどんなにおもしろいサッカーをしても、クラブには金は落ちませんので(笑)、出来るだけホームでおもしろいサッカーをしてサポーターの方にたくさん来てもらえるようにしたいと思います。アウェイでは、フィジカルのところを考えながらやっていかなければかなり厳しくなると思っています」


この文面を見る限り、ホームとアウェイで戦い方を変えるともとれる発言である。

続きを読む...

posted by whiteowl |13:10 | Tactics (戦術) | コメント(4) | トラックバック(1)

2008年10月23日

ゾーンディフェンスを考える。 -その6-

さて、久々の復活となりますが、今回のゾーンディフェンスを考えるは、
三浦監督が、その戦術をどう修正しているか考えていきたいと思います。


以前のゾーンディフェンスを考える。 -その5-で、


◎図1
(●・・・守備者 ○・・・攻撃側 ◎・・・ボールホルダー)

 ◎    ○
        ↓
 ● ×←●(※ここにスペースが出来るので左にヘルプにいけない) 


>上図1のように、ボールホルダーに対して、常に1対1なのです。
>左右から挟もうとするとラインが崩れてそこにスペースが出来るので、
>基本的にヘルプに行きません。

という点を指摘しました。これは修正されてます。
どう修正されているかといえば、(※下図2参照。)


◎図2
(●・・・守備者 ○・・・攻撃側 ◎・・・ボールホルダー)


◎     ○
↑ ←●
●    ←●    ←●


全体的に選手がボールサイド(ボール側)にスライドして、ボールホルダーに対して
二人がプレスにいってます。そして、ヘルプに行った選手があけたスペースを
その隣の人が埋めてカバーリングするということをしています。(※上図2参照。)


また、ゾーンディフェンスを考える。 -その4-で指摘した

>4-4-2の4-4の2ラインによって自陣のゴール前に
>2枚のゾーンの防御網を張り、その陣形を極力維持することで、
>自陣に相手に使われるスペースを消し、相手に自陣に侵入する隙を与えないこと。
>しかし、その一方で、陣形を維持することのみに囚われるとボールホルダーへの
>プレッシャーが弱くなり、流石にノープレッシャーでは、J1の高い技術の前に
>精度の高いクロスやミドルシュートを沢山蹴られる結果となっていること。

>そして、この2つのバランスをどうするかが一つのジレンマである。


このジレンマも、以前より、明らかに球際に強く当たりに行くように
なっていますし、マークも厳しくなっています。
ただ、人に付いていくことが多くなったので、その結果、
DFラインにスペースを作ることも多くなってきました。
しかし、以前からやってはいたのですが、DFラインの選手があけたスペースに対しては、
2列目の中盤の選手がカバーに入っています。(※図3参照)
さらに、チームとしてだいぶこなれて来た感じはします。


◎図3
(●・・・守備者 ○・・・攻撃側 ◎・・・ボールホルダー)
 
◎
↑
●   ●(2列目の中盤の選手)
    ↓ 
    ↓
 ← ←     ●    ●     ●  (←DFラインはここ)




上図2と図3であげたように、また、その他の所でもチームとしてカバーリングが
以前に比べて、しっかり出来るようになっていると感じています。
特に、この間の柏戦でそれをすごく感じました。
それが、負けはしましたが、私があの試合で選手を評価していた点でもありました。


上を見て、そんなこともできなかったのかと思う人がいるかもしれません。
それは、そんなこともできなかったともいえるし、一人ではなく
チームで行うわけですから、そんなことをするのが難しいといえるかもしれません。


毎日のように練習しているのですから、当たり前なのかもしれませんが、
日々、戦術の完成度は上がっています。
この間の柏戦の前半を見ればわかるように、カバーリングが上手くいってるときは、
J1でも守備が大きく破綻することは無かった。(※1失点目は、セットプレイ。)
今の選手を出来るだけ維持して今の戦術を実行できれば、
J2なら通用するレベルにあると私は思っているので、正直もったいない。

このやり方をリセットして、もう一度作り直すとなると、
ここまでくるのにこれだけ時間がかかったのですから、
再び次の戦術の完成度を上げるまで、かなり時間がかかるのは目に見えています・・・(・・;)

従って、J2最下位になっても育成をメインにするというならまだしも、
1年でのJ1再昇格を狙うなら、よっぽどの監督でもない限りは、
私は監督交代の方がギャンブルだと考えています。



フランスの1部リーグに、リヨンというチームがあります。
昨日のスペインのセビージャの話札幌とセビージャ(セビリア)FC。ではないのですが、
今でこそフランスリーグを7連覇する強豪ですが、それまではエレベーターチームでした。

さて、リヨンの転機は、同じ監督による長期政権を基本としたことにあるとされています。
リヨンの監督は、自分が辞めると言うか、どこかに引き抜かれてしまった場合を除いて、
3年以上同じ監督による長期政権になっています。


個で対抗できないチームは、組織を磨くしかありません。
しかし、組織をつくるには時間がかかるということを、もう一度考えなおすべきだと思います。

posted by whiteowl |13:24 | Tactics (戦術) | コメント(8) | トラックバック(1)

2008年10月04日

ゾーンディフェンスを考える。 -その5-

ゾーンディフェンスを考える。も5回目を迎えました。
本当は、3回位で終わる予定だったのですが、長期シリーズになりました・・・(・・;)
(※今までのものは↓)
ゾーンディフェンスを考える。 -その1-
ゾーンディフェンスを考える。 -その2-
ゾーンディフェンスを考える。 -その3-
ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

今回は、現在J1で最多失点を誇り、理論倒れだとか札幌の選手には無理と言われる(笑)
札幌における三浦監督のゾーンによる守備戦術についての分析の2回目です。


その4では、4-4-2の4-4の2ラインによって自陣のゴール前に
2枚のゾーンの防御網を張り、その陣形を極力維持することで、
自陣に相手に使われるスペースを消し、相手に自陣に侵入する隙を与えないこと。
しかし、その一方で、陣形を維持することのみに囚われるとボールホルダーへの
プレッシャーが弱くなり、流石にノープレッシャーでは、J1の高い技術の前に
精度の高いクロスやミドルシュートを沢山蹴られる結果となっていること。

そして、この2つのバランスをどうするかが一つのジレンマであることに触れました。


今回は、この中盤をフラットに並べて2ラインでゾーンをする
4-4-2の欠点について考えたいと思います。


◎図1(4-4-2の並びとゾーンの意識)
(●・・・選手)

       ●    ●
━━━━━━━━━━━━━━━
┃    ┃    ┃    ┃    ┃
┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃
━━━━━━━━━━━━━━━
┃    ┃    ┃    ┃    ┃
┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃
━━━━━━━━━━━━━━━
          ●



上図を眺めてもらうとわかるのですが、システムのバランスが良いということは、
裏を返せば、局面では、味方の数的優位を作りにくいということなのです。
4-4の局面では、ゾーンであるから結局ボールホルダーに対して1対1になります。
だから、1対1できちんと守備が出来ないと相手を止められません。
どういうことかというと、基本的には数的優位を作って相手から
例えば上下から挟んでボールを奪ったり、左右から挟んで取るということに向いていないのです。
(※だから、まずFWが前線から追い回して、360度対応ではなく
180度対応で済む守りやすいサイドにボールを出させる必要があります。)


◎図2
(●・・・守備者 ○・・・攻撃側 ◎・・・ボールホルダー)

 ◎    ○
        ↓
 ● ×←●(※ここにスペースが出来るので左にヘルプにいけない) 



上図2のように、ボールホルダーに対して、常に1対1なのです。
左右から挟もうとするとラインが崩れてそこにスペースが出来るので、
基本的にヘルプに行きません。というか行けません。

ただし、ラインがコンパクトになっていれば、上下から挟めます。(図3参考)


◎図3
(●・・・守備者 ◎・・・ボールホルダー)

 ●
 ↓

 ◎

 ↑
 ●



従って、DFラインをあげて全体的に縦にコンパクトにする必要があるわけです。

しかし、やはり自分のゾーンでは1対1で守ることがどうしても多くなります。
三浦監督はこの4-4-2の布陣をするにあたって、この欠点をカバーするために、
4-4の選手に何を一番求めているかといえば、1対1の守備能力を求めるわけです。

だから、SBにも中盤の4人にも、まずCB並みの守備力を求めるし、
フィジカルの強い(≒背の高い)選手をまず第一に求めるわけです。
特に、サイドのSHよりも中央のCHには高い守備力が求められます。
(※フィジカルの強い選手を均一に並べることで、ゾーンのデメリットである
マークの受け渡しによって発生しやすい身長差などのミスマッチの機会も減らすことが出来ます。)

従って、マーカスについては賛否両論ありますが、私は別に監督が贔屓しているわけではなく、
このシステムを機能させるために、ボディコンタクトとDFが強い
マーカスを重用しているだけだと思っています。
これは、裏を返せば、マーカス以上に守備ができれば試合に出られるということです。
(※実際に、大塚はすぐ試合に出ている。)
要は、マーカス以上に守備のできるCHがいないというだけのことです。

また、実はこの4-4-2のシステムは、1対1での守備が基本であるにもかかわらず、
現状の札幌は、その1対1で全く止められていないわけですから、
このゾーンの守り方を止めて「マンツーマンっぽい」守備戦術に
変えたところで大差はないと思われます。


確かに、三浦監督はちょっと難しいことを選手に求めている節はあります(笑)。
フィールドプレイヤー10人が、常にハードワークをして、
ゾーンとラインコントロールの戦術理解が高くないと機能しないからです。
ただ、これをマスターすれば、サッカーはつまらないですが確実に強くなります。
(※モウリーニョもサッカーはつまらないと批判されていましたが、
彼の残した実績は今さら語る必要もありません。)

マスターできなければ、年俸総額に見合った選手の実力しか出せないというだけです。
1+1=2のサッカーでは勝てません、それを3や4にしなければ、J1では勝てません。
それを実現するのが戦術の力(≒監督)だと私は思っています。


最後に、三浦監督への批判として、選手に無理な戦術を強いるのではなく、
選手の長所を活かした戦術を採るべきだという意見もよく見ます。
まず、その個がジダンやトッテイ、リケルメのように飛びぬけており、
一人で局面を打開できるくらいの能力がなければ、個に頼る戦術をしたところで通用しません。
また、組織ではなく個に頼る戦術は、その個がいなくなると機能しなくなります。

札幌は、そのスーパーな個を引っこ抜かれて低迷する経験をし、
それを反省してJ1で通用する組織を構築するための5段階計画であったはずです。


確かに、三浦監督の理想とするところは今の札幌には、かなり高いハードルかもしれません。
しかし、今の三浦監督のやり方でJ2で5~6番目の人件費でJ1に上がったわけですから、
そこをJ1基準に合わせて進化させるしかなかった。
今回は、それに失敗したということなのだと思います。
三浦監督の理想は、J1残留には最低ラインなのだと思うのです。
そこを満たせないから、この順位なのではないでしょうか。

そして、戦術の積み重ねという点で、怪我人が多かったという点もマイナスであったと思います。
開幕前の大塚、曽田、西澤、西嶋など昨季DF陣の軸であった選手の怪我による離脱。
ブルーノの解雇とクライトンより三浦サッカー向きだったアルセウの突然の退団。
果たして、このような状況で昨季の戦術の蓄積がどれほどあったのか甚だ疑問です。
戦術を浸透させるのに、監督や選手がコロコロ入れ替わるのは、
どう考えてもマイナスでしかありません。

一番悔しい思いをしているのは、多分、三浦監督です。
だから、私はもう少しましな状況でJ1残留にリベンジして欲しいと思っているわけです。
来季も三浦監督続投希望。

posted by whiteowl |00:44 | Tactics (戦術) | コメント(21) | トラックバック(1)

2008年10月03日

ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

ゾーンディフェンスを考える。の4回目です。
(※今までのものは↓)
ゾーンディフェンスを考える。 -その1-
ゾーンディフェンスを考える。 -その2-
ゾーンディフェンスを考える。 -その3-

今回は、札幌における三浦監督のゾーンによる守備戦術について分析を試みます。



まず、三浦監督が用いている中盤を横に並べる4-4-2の並びを確認します。(※図1)


◎図1(4-4-2の並びとゾーンの意識)
(●・・・選手)

       ●    ●
━━━━━━━━━━━━━━━
┃    ┃    ┃    ┃    ┃
┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃
━━━━━━━━━━━━━━━
┃    ┃    ┃    ┃    ┃
┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃ ● ┃
━━━━━━━━━━━━━━━
          ●



守備時は、4-4-2の2ラインを自陣に退き気味に敷いて、
4-4を出来るだけコンパクトにして自陣を均等に8等分したゾーンに配置します。
図1を見ればわかるように、初期配置の状態で自陣にスペースはありません。
この点は、札幌における三浦監督の戦術が他のゾーンとは違う点であり、
長所でもあり短所でもあります。


まず、なぜ横並びの「4」なのかという点ですが、
これは、「3バックは両サイドにスペースがあるので、サイド攻撃をしろ」という
サッカーの定石からもわかるように、ピッチの横幅に対して守備側は、
3人だと少なく、4人がちょうど良いということなのです。
当然横に5人以上並べても守れますが、サッカーは攻守が一体なので、
守備に人数をかければ、攻撃時に人数が減ることになります。


少し脱線しますが、3-5-2は、中盤の両WBが最終ラインに吸収されて
5バックになりがちなため、守備的な布陣といわれています。
また、2002年W杯時、トルシエ監督が用いていた「フラット3」という
3バックなのに横に並んでラインディフェンスをするというやり方は、一般的ではありません。
(※今現在、当のトルシエ含めてやってる人は、ほとんどいません。)
3バックの場合、以前書いたように二人のストッパーの後ろにスイーパーを置く形が普通です。
ただ、この場合、ラインディフェンスを敷かないので、ラインコントロールが出来ず、
オフサイドが取りにくいので全体をコンパクトにしにくくなります。


閑話休題。
選手間のバランスを重視すると、自陣に相手に使われるスペースを生み出しにくい。
(ただし、守備時にはすばやく初期陣形に戻らなければ隙が出来るので、
GKを除くフィールドプレイヤーが、攻守の切り替え時に
縦にハードワーク(激しい上下運動)しなければいけません。下記参照。
クライトンと三浦監督。)
しかし、バランスを維持することのみにこだわると、ボールホルダーに
十分なプレッシャーがかからずボールホルダーを自由にしてしまいます。
これがJ1では、選手の基礎的な技術が高いために
J2よりも自由にクロスやミドルシュートを蹴られる結果になっています。

また、ゾーンディフェンスは、相手の攻撃を受けて立つので、
特に速い選手、後ろから飛び込んでくる選手に対して守りにくい。

では、これらを解決するためにゾーンの意識を弱めて、
より人に付いて行くようにしたとします。
すると今度は、ゾーンにギャップが生まれて僅かですが自陣にスペースができます。
昨季のJ2時代も、京都のパウリーニョなどにそこをつかれたことはありました。
上手い選手は、僅かなスペースをつくりそこをこじ開けてきます。

このバランスが、ひとつのジレンマであることは間違いないです。
将棋は、初期配置が最も堅いといわれていますが、それと似ています。
初期配置では隙がないのですが、そこから攻めたり守ったりするには
駒(選手)が動かねばなりません。
しかし、そこから駒(選手)が動くと隙が出来るため、できるだけ初期配置を維持する。
そうすると、こちらから積極的に攻めることが出来ず、相手に厳しく付いていく守備もしにくい。


オシムが、リスクのないサッカーはつまらないと言っていましたが、
この4-4-2のシステムは、リスクをとりません。だから、面白くない(笑)。

しかし、布陣を維持するために攻守にハードワークが必要ですが、
守備は機能すれば、隙がないので理論的には、素晴らしく堅くなることだけは間違いありません。
それに、攻撃も選手間のバランスが良いので、効率よくカウンターができます。
また、つまらないサッカーですが、実績は申し分ありません。
このシステムを用いたヴァレンシアのクーペル監督は、99-01の2年連続、
欧州CL(チャンピオンズリーグ)で準優勝しています。
04-05シーズンに、チェルシーのモウリーニョ監督がこの戦術を用いて
イングランドの国内リーグとカップの2冠に輝きました。
(※これが一般的に普及するきっかけといわれています。)

この話をすると決まって、欧州の強豪クラブだから実現できるのであって、
札幌では出来ないという批判がきます。

確かに、機能させるためには自陣に退き気味に構えるとはいえ、
ラインコントロールをしてDFラインを上げて全体を縦にコンパクトにし、
選手間のゾーンのマークの受け渡しもスムーズに行う必要があります。
しかし、現代サッカーはスペースを生み出さないようにするため全体的に縦に
コンパクトになっていて、ラインコントロールとゾーンディフェンスは必須の技能です。
できないならやらなくてもいいという類の守備戦術ではありません。
しかも、現在の札幌は欧州レベルの完成度を求められているわけではありません。

また、4-4-2というシステムは、一般的に採用されていることからもわかるとおり
非常にオーソドックスな布陣です。
ある程度これを機能させることが出来れば、今後応用、発展させやすい。
(※例えば、4-2-3-1、4-3-3など)

そうはいっても、やはりこの戦術は難しいと思うかもしれません。
しかし、他のJ1クラブと比べて個人の技量に劣る札幌が、
ハードワークもせず、頭も使わないで、どうやって他のJ1クラブと戦うというのでしょうか?
技量で劣るなら、相手より動き頭を使うしかありません。
まして、ある程度機能させれば、このシステムがJ1でやれる
ポテンシャルを秘めていることは、大宮時代の三浦監督が、
J1に昇格し2季残留して自身が証明していることです。
機能させることに価値がないシステムとは思いませんし、
浦和ならまだしも、大宮に出来ることが札幌に出来ないとするのは、
逆にあまりにも選手を馬鹿にしているのではないでしょうか。


今までも書きましたが、完璧な戦術などありません。
そして、個で劣るチームは、組織を磨いて戦術の穴をカバーして対抗するしかありません。
そのためには、時間がかかるので、監督や選手をコロコロ代えず戦術を浸透させる必要があります。
この4-4-2は、今後の戦術の基礎として学ぶ価値があると思います。

今季、児玉前社長曰くJ2で5、6番目と思われていた戦力にもかかわらず、
戦術でJ1にあがってきたチームが、その要となる曽田とブルーノとアルセウという
ディフェンスの軸を失っては、機能するものも機能しません。


長くなったので、その5に続きます・・・(・・;)

posted by whiteowl |00:14 | Tactics (戦術) | コメント(7) | トラックバック(1)

2008年10月02日

ゾーンディフェンスを考える。 -その3-

ゾーンディフェンスを考える。も3回目になりました・・・(・・;)

1回目は、サッカーに限らない球技における一般的な意味での
ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスの意味を確認しました。
一般的な説明のされ方として『マンツーマンは人、ゾーンは地域。』というが、
どちらもボールホルダーに人が付いてプレッシャーをかけて、
ボールホルダーを自由にしてはならないことが重要であることを確認しました。
ゾーンディフェンスを考える。 -その1-

2回目は、現代サッカーでは、
基本的にマンツーマンではなく、ゾーンで守備をしていることに触れました。
ゾーンディフェンスを考える。 -その2-
(※2回目で書き忘れましたがセットプレイ時は、マンツーマンで守る場合も多いです。
それについては、以前書いたのでそちらを参照してください。
セットプレイ時のゾーンディフェンスの問題点について)



今回は、マンツーマン(マンマーク)ディフェンスとゾーンディフェンスの
サッカーに限らない一般的なメリット、デメリットを比較したいと思います。


まず、マンツーマンディフェンスとは、
「常に特定の相手選手に1対1で付くディフェンスの方法」です。

〇マンツーマンディフェンスのメリット相手選手に守備側が誰が付くのか選択できる。
そのため、「長身>長身」、「足が速い>足が速い」などの対応がしやすい。

② 守備を行う相手が明確で、1対1による守備を基本とするため、初心者でもわかりやすい。


〇マンツーマンディフェンスのデメリット

① 攻撃側の選手の位置に守備側の配置が固定されてしまう。
そのため、ディフェンスの選手間が離れてしまいバランスが保ちにくくなる。

② ①が原因でディフェンス間の距離が離れると、
ディフェンスの選手が抜かれた場合、他の選手がフォローし難い。
また、守備側の選手が存在しないスペースができやすい



次に、ゾーンディフェンスとは、
「特定の相手選手に付かず、自陣の守備エリアを各ゾーンに別けて、
それぞれディフェンスの選手が各ゾーンを受け持ち、
自分の受け持つゾーンに侵入してきた相手選手に対してディフェンスする方法」です。


〇ゾーンディフェンスのメリット

① これは、マンツーマンのデメリットと裏返しになりますが、
特定の選手をマークしないので、守備側の配置がオフェンスの選手の位置や動きに依存しない。
そのため、ディフェンスの選手間のバランスが保ちやすい。

② ①が原因でディフェンスの選手間のバランスが良いと、ディフェンスの選手が抜かれても
他の選手がフォローしやすく、ディフェンスの選手が存在しないスペースを作りにくい。

③ 以上のメリットから、ディフェンスの選手同士の連携が上手く取れていれば、
個々の選手の1対1における守備能力がそれほど高くなくとも
失点を防ぐことができるとされている。


〇ゾーンディフェンスのデメリット

① マークの受渡しが、ゾーンの境界で行われるため、
ディフェンスの選手のマークがあやふやになってしまうことが多い。

② マークの受渡しを行うとオフェンスの選手とディフェンスの選手の間に
身長差や能力差といったミスマッチが発生しやすい。
(※相手選手に対してマークの受渡し行うか、マークの受渡しを行わず
そのままついて行くかは、その時の状況やチームの方針などによって異なる。)

③ マークの受渡しを行わないとゾーンの配置が崩れ守備のバランスが悪くなり
ゾーンディフェンスの利点が失われる。

④ それぞれのマークが固定されていないため、リバウンドが取られやすい。


参考:
ゾーンディフェンス マンツーマンディフェンス 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



以上が、マンツーマンとゾーンディフェンスのメリットとデメリットをまとめたものです。


ここから札幌がゾーンディフェンスをする理由を考えていきます。
まず、三浦監督がよく口にしていますが、マンツーマンの場合、
そのデメリットである選手間の配置がアンバランスになると
お互いがフォローしにくく、スペースが出来ます。
ゾーンならば、選手間のバランスが良いため、結果的に
『ディフェンスの選手同士の連携が上手く取れていれば、
個々の選手の1対1における守備能力がそれほど高くなくとも
失点を防ぐことができる』という点を重視しているということになります。

選手の能力と年俸が必ずしも比例するわけではないですが、
総額年俸がJ1最低の札幌は、個の能力をカバーすべく
よりゾーンのメリットを追求する必要があるということだと思います。


ただ、ここまで来ると問題の本質は、ゾーンの最大のデメリットである
恐らく「マークの受け渡し」なのだということに気づいていただけると思います。
要は、どこまでボールホルダーに付いていって、
どこでそのマークを放すかという問題なのです。

そこで札幌の守備再建においてよく見られる
『ゾーンからマンツーマンに切り替えれば失点を防げる』という点について考えます。

まず、ゾーンからマンツーマンに切り替えるというのは間違いです。
2回目でも触れましたが、現代サッカーでは、セットプレイ以外でマンツーマンで守るのは、
特定の危険な選手に固定のマークを付けるという以外ないからです。

ただ、恐らくこれは、「マンツーマンっぽく」もっと人に付いて、
「危ない時はマークの受け渡しを全くせずに相手に付いていくか、
そこまでしないまでも、もっと相手に徹底的に付いていくべきだ。」という
批判なのだと思います。

まず、マークの受け渡しを全くしないとどうなるかということですが、
これはマンツーマンのデメリットと同じことを招きます。
選手間のバランスが崩れて、フォローがしにくくなり危険なスペースを作ります。
従って、新たな問題を引き起こすので失点を防ぐという問題の解決にはつながらないと考えます。

次に、もっと相手に徹底的についていくべきだという批判ですが、
「程度の問題」なのですが、それは私が1回目に触れていたことと
重なることにお気づきいただけるでしょうか?バランスを崩さない範囲で、
結局、『自分のゾーンでは、しっかり相手に付いて守備をしろ』ということなのです。


ただ、マークの受け渡しについては、難しいことは間違いないです。
「吉弘、柴田」と「西澤、箕輪」の一番の違いはここだと思われます。
一番大事なのは、マークを確認する声を自分と周囲が出すことです。
あとは、チームの約束事を確認して周囲とコミュニケーションをとる
そして、試合をして経験を積んでいくしかありません。
ゾーンディフェンスは、現代サッカーにおいて基本的な戦術ですから
極端な話、札幌でできないなら、他のチームに行っても活躍できません。

従って、三浦監督が何か特別な要求を選手にしていると私は思いませんし、
個の力で劣る札幌は、ゾーンの組織を磨くことで、
J1の攻撃力に対抗するしかないと思っています。
個の力で劣る札幌が、より「マンツーマンっぽい」守り方をしても
守りきれると思いません。

最後にひとついえることは、「欠点のない戦術などない」ということです。


次回は、今までのゾーンディフェンスに関する考察から
札幌における三浦監督の戦術についてもう少し考えていこうと思います。

posted by whiteowl |22:24 | Tactics (戦術) | コメント(14) | トラックバック(1)

2008年10月01日

ゾーンディフェンスを考える。 -その2-

よく、『人に付くのがマンツーマンディフェンス。地域を守るのがゾーンディフェンス』
という表現のされ方をしますが、ゾーンディフェンスを考える。 -その1-では、
ゾーンといえども、ボール保持者(ボールホルダー)を
自由にしてはいけないということに触れました。


しかし、ゾーンディフェンスを考える上で、様々な誤解があるようなので
予定を変更して今回はまずそこを整理していきたいと思います。

現代サッカーでは、基本的にマンツーマンディフェンスをしているチームはありません。
マンツーマンディフェンスは、常に特定の相手選手に1対1で付くディフェンスの方法です。
例えば、芳賀が試合中ずっとFC東京のFWの赤嶺に付く(をマークする)。
これをマンツーマン(マンマーク)ディフェンスといい、現在も相手の危険な選手に対して、
このように特定のマーカー(マークする人)を付けることはあります。
(※例であって、実際の試合ではしていません。)

しかし、現代サッカーは、選手のアスリート能力が向上し、
以前と比べて運動量が各段に増えたため、
マンツーマンでは相手選手に付ききれなくなったといわれています。
特に、スペースへ走りこむ選手へのパスをマンツーマンで付くことが難しいのです。
そのため、危険なスペースに人を配置して、そこを相手に使われないようにする
というのが基本的な考え方であるゾーンディフェンスが有効とされています。
従って、どんなチームも普通、ゾーンディフェンスをしています。


3バックは、マンツーマンだという言説もよく見受けますが、あれもゾーンです。
前のストッパーの二人がゾーンで守備をして、
後方のスイーパーがカバーリングをしています。(※下図参照)
確かに、ストッパーは相手FWをマークすることが多いですが、
四六時中相手FWに付いているわけではなく自分のゾーンに来た時だけマークします。

◎図(3バックの守り方)


 ●(ストッパー(ゾーン))  ●(ストッパー(ゾーン))

        ●(スイーパーorリベロ(カバーリング))

        ●(ゴールキーパー)


ですから、マークの受け渡しが発生した時点で、それはマンツーマンではなくて、
ゾーンです。ボールホルダー(ボール保持者)が移動して守備エリア(ゾーン)が、
変わったのでマーカーも変わったのです。


しかし、ゾーンであっても自分の守備範囲では相手とは1対1の状況ですから、
その範囲では、相手を止める、ボールを奪うとマンツーマンとすることは変わりません。
ゾーンだから、スペースを埋めることが重要で相手を
素通りさせても良いということにはなりません。


冒頭の『マンツーマンは人、ゾーンは地域。』というイメージが一般的に強いために、
誤解している人が多いようですが、ゾーンだから地域優先で相手をマークしなくて良い
ということにはなりません。この言葉は確かにマンツーマンとゾーンの違いを
端的に表していますが、ゾーンだろうがマンツーマンだろうが、
人に対して人が付いてしっかりディフェンスしなければ相手を止められません。
そこのところはどんな戦術を用いたとしても変わりません。


参考:
ゾーンディフェンス マンツーマンディフェンス 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



前回、マンツーマンとゾーンのメリット、デメリットという予告でしたが、
それはまた次回ということで・・・。

あと、三浦監督の求めるゾーンが特殊なのかという話ですが、その話もいずれしたいと思います。
ただ、三浦監督の戦術は、現イタリアセリエAインターミラノ(インテル)監督のモウリーニョが、
チェルシー時代にやっていた戦術に似ていて、その後、一般的に広まった戦術であり、
三浦監督の戦術が特別であると私は思っていません。

posted by whiteowl |13:12 | Tactics (戦術) | コメント(4) | トラックバック(1)

2008年09月30日

ゾーンディフェンスを考える。 -その1-

以前も札幌が用いている守備戦術であるゾーンディフェンスについて触れましたが、
(セットプレイ時のゾーンディフェンスの問題点について)
FC東京戦の失点を自らのゾーンを気にするあまりボールホルダーに
当たりに行かなかったための失点として、
ゾーンディフェンスそのものの問題とするのは、私は早計だと思います。

ゾーンディフェンスはきちんと機能させれば、とても良い守り方です。
バスケットボールのNBAでは、2000-2001年シーズンまで
ゾーンディフェンスが守備戦術として強力すぎるという理由で、禁止していたくらいです。
バスケとサッカーでは、種目が違うから関係ないということはありません。
確かにルールは違いますが、基本的な考え方は同じだからです。


まず、ゾーンディフェンスという考え方についてもう一度整理したいと思います。

『マンツーマンディフェンスが常に特定の相手選手に対して1対1でくっ付いて(マークして)
ディフェンスするのに対して、ゾーンディフェンスは特定の相手選手に付かず、
自陣の守備エリアを各ゾーン(地域)に別けて、それぞれディフェンスの選手が各ゾーンを受け持ち、
自分の受け持つゾーンに侵入してきた相手選手に対して守備を行うというものである。
また、ボールホルダー(ボールを持っている選手)に対しては
原則的に最も近い位置にいる選手が守備を行う。』
(※太字は、筆者による加筆。)
ゾーンディフェンス 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

太字にしたところ、『ボールホルダーに対しては、原則的に最も近い位置にいる選手が守備を行う。』
が重要と考えます。
つまり、ゾーンでもマンツーのようにボール保持者を自由にしてはいけないのです。

先ほどのバスケで考えるともっとわかりやすい。
ゴール下に5人の選手が立ってゾーンを作ります。ゴール下にスペースはありません。
しかし、ここでただゴール下の選手が立っているだけで、
ボールホルダーに対してプレッシャーをかけないと遠目からどんどんシュートを狙われます。
(※ただ、ボールホルダーに対してプレッシャーをかけたとしても、
ゾーンそのものが、遠目からのシュートに弱いという弱点はあります。
しかし、遠目からのシュートは近距離のシュートよりも確率が低くなります。)

従って、ゾーンだからボールホルダーに対してプレッシャーに行かないというのは誤りです。
ゾーンであっても、ボールホルダーに対しては、
常にプレッシャーがかかっていなければなりません。


札幌の場合で考えて見ましょう。ゴール前に人が居てもボールホルダーに対する
プレッシャーが弱いので、J1では精度の高いクロスやミドルシュートを蹴られて
失点するシーンというシーンを我々は多々目撃しています。
確かに、ゾーンは遠距離攻撃に弱いという特性をもちますが、さすがにノープレッシャーでは、
バスケと同じで(相手が上手ければ上手いほど)遠目から3ポイントシュートをガンガン決められます。

やはり、ゾーンであってもボールホルダーに対するプレッシャーが弱いという
状況は避けねばなりません。
それは、『ゾーン』という言葉から連想される『地域を守る』という発想が
強いからなのかも知れませんが、選手も発想を切り替えてゾーンをしないと
ゾーンディフェンスは機能しないと思います。
箕輪が来た時、監督に守備時に相手をどこまで追いかけて良いのか聞いたといいます。
ゾーンを理解するためには非常に良い質問だと思いました。

また、ゾーンが機能しないのは、ゾーンがマンツーに比べて高い戦術理解度が
必要だからだとする人も居ますが、ゾーンは完成度によりますが
機能させるだけなら、それほど難しい戦術ではありません。
現に、バスケど素人の私でも、高校の球技大会で(その完成度はさておいて(笑))
ゾーンディフェンスをしていたくらいです。
確かに、バスケは5人で、サッカーは11人、コートの広さも違います。
しかし、基本的な考えは同じです。
その戦術を機能させる上で何が大事なのかを理解すれば問題ありません。


次は、マンツーマンとゾーンのメリット、デメリットを比較したいと思っています。

posted by whiteowl |12:18 | Tactics (戦術) | コメント(6) | トラックバック(1)

前へ