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2008年10月04日

ゾーンディフェンスを考える。 -その5-

ゾーンディフェンスを考える。も5回目を迎えました。
本当は、3回位で終わる予定だったのですが、長期シリーズになりました・・・(・・;)
(※今までのものは↓)
ゾーンディフェンスを考える。 -その1-
ゾーンディフェンスを考える。 -その2-
ゾーンディフェンスを考える。 -その3-
ゾーンディフェンスを考える。 -その4-

今回は、現在J1で最多失点を誇り、理論倒れだとか札幌の選手には無理と言われる(笑)
札幌における三浦監督のゾーンによる守備戦術についての分析の2回目です。


その4では、4-4-2の4-4の2ラインによって自陣のゴール前に
2枚のゾーンの防御網を張り、その陣形を極力維持することで、
自陣に相手に使われるスペースを消し、相手に自陣に侵入する隙を与えないこと。
しかし、その一方で、陣形を維持することのみに囚われるとボールホルダーへの
プレッシャーが弱くなり、流石にノープレッシャーでは、J1の高い技術の前に
精度の高いクロスやミドルシュートを沢山蹴られる結果となっていること。

そして、この2つのバランスをどうするかが一つのジレンマであることに触れました。


今回は、この中盤をフラットに並べて2ラインでゾーンをする
4-4-2の欠点について考えたいと思います。


◎図1(4-4-2の並びとゾーンの意識)
(●・・・選手)

       ●    ●
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上図を眺めてもらうとわかるのですが、システムのバランスが良いということは、
裏を返せば、局面では、味方の数的優位を作りにくいということなのです。
4-4の局面では、ゾーンであるから結局ボールホルダーに対して1対1になります。
だから、1対1できちんと守備が出来ないと相手を止められません。
どういうことかというと、基本的には数的優位を作って相手から
例えば上下から挟んでボールを奪ったり、左右から挟んで取るということに向いていないのです。
(※だから、まずFWが前線から追い回して、360度対応ではなく
180度対応で済む守りやすいサイドにボールを出させる必要があります。)


◎図2
(●・・・守備者 ○・・・攻撃側 ◎・・・ボールホルダー)

 ◎    ○
        ↓
 ● ×←●(※ここにスペースが出来るので左にヘルプにいけない) 



上図2のように、ボールホルダーに対して、常に1対1なのです。
左右から挟もうとするとラインが崩れてそこにスペースが出来るので、
基本的にヘルプに行きません。というか行けません。

ただし、ラインがコンパクトになっていれば、上下から挟めます。(図3参考)


◎図3
(●・・・守備者 ◎・・・ボールホルダー)

 ●
 ↓

 ◎

 ↑
 ●



従って、DFラインをあげて全体的に縦にコンパクトにする必要があるわけです。

しかし、やはり自分のゾーンでは1対1で守ることがどうしても多くなります。
三浦監督はこの4-4-2の布陣をするにあたって、この欠点をカバーするために、
4-4の選手に何を一番求めているかといえば、1対1の守備能力を求めるわけです。

だから、SBにも中盤の4人にも、まずCB並みの守備力を求めるし、
フィジカルの強い(≒背の高い)選手をまず第一に求めるわけです。
特に、サイドのSHよりも中央のCHには高い守備力が求められます。
(※フィジカルの強い選手を均一に並べることで、ゾーンのデメリットである
マークの受け渡しによって発生しやすい身長差などのミスマッチの機会も減らすことが出来ます。)

従って、マーカスについては賛否両論ありますが、私は別に監督が贔屓しているわけではなく、
このシステムを機能させるために、ボディコンタクトとDFが強い
マーカスを重用しているだけだと思っています。
これは、裏を返せば、マーカス以上に守備ができれば試合に出られるということです。
(※実際に、大塚はすぐ試合に出ている。)
要は、マーカス以上に守備のできるCHがいないというだけのことです。

また、実はこの4-4-2のシステムは、1対1での守備が基本であるにもかかわらず、
現状の札幌は、その1対1で全く止められていないわけですから、
このゾーンの守り方を止めて「マンツーマンっぽい」守備戦術に
変えたところで大差はないと思われます。


確かに、三浦監督はちょっと難しいことを選手に求めている節はあります(笑)。
フィールドプレイヤー10人が、常にハードワークをして、
ゾーンとラインコントロールの戦術理解が高くないと機能しないからです。
ただ、これをマスターすれば、サッカーはつまらないですが確実に強くなります。
(※モウリーニョもサッカーはつまらないと批判されていましたが、
彼の残した実績は今さら語る必要もありません。)

マスターできなければ、年俸総額に見合った選手の実力しか出せないというだけです。
1+1=2のサッカーでは勝てません、それを3や4にしなければ、J1では勝てません。
それを実現するのが戦術の力(≒監督)だと私は思っています。


最後に、三浦監督への批判として、選手に無理な戦術を強いるのではなく、
選手の長所を活かした戦術を採るべきだという意見もよく見ます。
まず、その個がジダンやトッテイ、リケルメのように飛びぬけており、
一人で局面を打開できるくらいの能力がなければ、個に頼る戦術をしたところで通用しません。
また、組織ではなく個に頼る戦術は、その個がいなくなると機能しなくなります。

札幌は、そのスーパーな個を引っこ抜かれて低迷する経験をし、
それを反省してJ1で通用する組織を構築するための5段階計画であったはずです。


確かに、三浦監督の理想とするところは今の札幌には、かなり高いハードルかもしれません。
しかし、今の三浦監督のやり方でJ2で5~6番目の人件費でJ1に上がったわけですから、
そこをJ1基準に合わせて進化させるしかなかった。
今回は、それに失敗したということなのだと思います。
三浦監督の理想は、J1残留には最低ラインなのだと思うのです。
そこを満たせないから、この順位なのではないでしょうか。

そして、戦術の積み重ねという点で、怪我人が多かったという点もマイナスであったと思います。
開幕前の大塚、曽田、西澤、西嶋など昨季DF陣の軸であった選手の怪我による離脱。
ブルーノの解雇とクライトンより三浦サッカー向きだったアルセウの突然の退団。
果たして、このような状況で昨季の戦術の蓄積がどれほどあったのか甚だ疑問です。
戦術を浸透させるのに、監督や選手がコロコロ入れ替わるのは、
どう考えてもマイナスでしかありません。

一番悔しい思いをしているのは、多分、三浦監督です。
だから、私はもう少しましな状況でJ1残留にリベンジして欲しいと思っているわけです。
来季も三浦監督続投希望。

posted by whiteowl |00:44 | Tactics (戦術) | コメント(21) | トラックバック(1)