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2008年04月17日

「名選手、名監督にあらず。」

「名選手、名監督にあらず。」という格言を覆す監督が今季のJ1に現れた。
シーズンが終わってないので、まだどうなるかはわからないが・・・(・・;)

名古屋のストイコビッチ監督だ。

まだ、私には「監督」と呼ぶことにも多少抵抗がある。
彼が、現役時代、名選手であったことに誰も異論はないだろう。
彼の愛称であった”ピクシー”は、その妖精のような華麗なプレイスタイルに由来している。
よくJリーグの名場面としてTVで放送されることも多いので、
ご存知の方も多いかもしれないが、私にはストイコビッチといえば忘れられないプレイがある。
雨でぬかるんだピッチでボールが転がらない、そこで、ボールを地面につけることなく
リフティングだけでゴール前に運んだプレイである。
あれを見た当時、本当に衝撃的で、度肝を抜かれた記憶がある。
前日本代表監督のオシムが監督をしていた旧ユーゴスラビア代表としても、
1990年のイタリアW杯で、マラドーナのいたアルゼンチンに負けはしたが、ベスト8になっている。

そして、サッカー番組のインタビューで名古屋のFWの玉田が、ストイコビッチ監督は、
選手にプレイの手本を示しながら指導するらしいのだが、それがあまりにも
上手すぎると言っていた(笑。


昨年末、国際コーチのライセンスを持たないことから、監督就任が危ぶまれ、
今までにサッカーチームの監督経験もなく、また、このブログのタイトルにあげた
「名選手、名監督にあらず」という格言もあり、私は、正直監督としては
未知な部分が多くどうだろうという印象だった。

だが、その一方で、彼の現役時代の華麗なプレイは知っていたし、旧ユーゴ代表では、
前日本代表監督であったオシム、名古屋では、現在はイングランドプレミアリーグのアーセナルで
指導をしているベンゲルという二人の名将の指導を受けているだけに、
どのようなサッカーをするのかということに関して、ものすごく興味があった。


(長いので、続きは続きに・・・)


蓋を開けてみると、昨年J1の18チーム中11位だったチームが、
現在、まだ6節が終わった段階だが、5勝1分けの1位。
序盤戦、好調をキープしている。
監督が代わるだけで、これだけ成績が変わるのかという実感である。

戦術面で、特に斬新なことをしているという印象は無い。
徹底したサイドからの攻撃と組織的な守備、そして、走らない選手は使わない。
至ってシンプルな方針だ。本人も戦術を変えずに継続することの重要性を
再三語っており、方針のシンプルさ故の強みはあるのだろう。

しかし、私は、監督としての彼の上手さは、戦術面よりも勝利に向けた
チームのモチベーションの上げ方や、選手からの監督への信頼が高い
などのメンタル面が、一番の原因ではないかと思っている。

今までの試合後のインタビューを読み返してみたが、
インタビューで、ストイコビッチ監督が繰り返し使っている言葉がある。
それは、「精神力」だ。

【J1:第6節 清水 vs 名古屋】試合終了後の各選手コメント [ J's GOAL ]
【J1:第6節 清水 vs 名古屋】ストイコビッチ監督(名古屋)記者会見コメント [ J's GOAL ]
【J1:第5節 名古屋 vs 横浜FM】試合終了後の各選手コメント [ J's GOAL ]
【J1:第5節 名古屋 vs 横浜FM】ストイコビッチ監督(名古屋)記者会見コメント [ J's GOAL ]
(他節のコメントは、J's GOALで見てください。m(._.*)m)

彼は現役時代に、試合でよく熱くなってカードをもらっていたが、
それは、彼が誰よりもチームの勝利に対して強い気持ちで臨んでいたことの証でもあった。
それは、監督となった今も変わらないのだろう。
インタビューでは、何度もメンタル精神力という言葉が出てくることからも、
何よりも試合に勝つことへの強いメンタリティを感じたし、
選手に、それを一番に求めているように思えた。

そして、同時に、選手からの監督(戦術)への強い信頼(積極的な肯定)も感じた。

FWの玉田を始めとして、多くの選手が「やっていて楽しいサッカー」と口々に語り、
GKの楢崎は、「今年の方が勝つべくして勝っているという自信が持てる戦いができていると思う」
とまで言っている、勝っていることもあるだろうが監督の戦術に
対する選手の強い信頼が見られる。

そして、ストイコビッチ監督は、選手の評価はコメントしないと語っており、
インタビューで選手を褒めることはしても選手をけなさなかった。
(勝っているので、今のところけなす必要はないでしょうけれど・・・(笑。)
自分が選手時代に監督に批判されて嫌な思いをしたことを反面教師にしているのかもしれない。

これで、私が思い出すのは、今はジュビロのコーチをしている柳下前監督である。
私は、彼の3年目の(昇格)失敗は、ある程度厳しさも必要だが、選手を良い意味で
乗せることに失敗したことも原因の一つではないかと思っている。
(それに対して、ほとんど同様の戦力で結果を残した三浦監督の人身掌握力は流石といえるだろう。)

監督が選手から信頼される方法は、選手としての実績や監督としての実績、
指導方法であったり、試合結果であったり、採りいれた戦術などの
有形無形の様々な要因であろう。しかし、その結果として導き出される
選手と監督(戦術)との間の信頼関係によって、こうも劇的にチームは、
変わるのだなというのが率直な印象である。
(チームが不振に陥った時に本当の監督としての力量が試されるのでしょうけれど・・・。)

選手と監督のインタビューを見ていて思ったのは、今の名古屋の好調さは、
戦術の優位性もあるかもしれないが、一番は、ストイコビッチ監督が醸し出す
これら有形無形の力によって、選手が戦術に対して自信を持ち、
メンタル面が変わったことが、結果につながっているのではないかということだ。


序盤戦不振であった浦和も、選手の不満が高まっていたオジェックから
エンゲルスへ監督を交代したが、功を奏したようである。


翻って、札幌の場合は、戦力的に考えて、負けが多くなることは仕方がない。
それはある程度覚悟の上で、J1残留のために一貫した方針をフロントは
とっていくべきであろう。しかし、監督と選手の信頼関係が崩れ、それが
修復不可能である時、早目に対処しなければ、チームは泥沼にはまるだろう。

チームが低迷した時に、監督交代はチーム浮上のための一つの劇薬であるが、
劇薬であるだけに副作用も強い。リメンバー2002年である・・・(・・;)
低迷した時も、監督(戦術)を信じてそれを貫くというのが、最も堅実な方針であると思うが、
その一方で、監督の戦術に選手の心がついていかなくなった時は、監督交代の時期に
来ているのではないか。


今季の札幌に関しては、そんなことを考えなくて済むことを祈っている。

posted by whiteowl |00:37 | J-league | コメント(2) | トラックバック(1)

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Re:「名選手、名監督にあらず。」

 今年の序盤のサプライズは何といっても名古屋の躍進でしょう。
 正直、予想としてムリヤリピクシーを監督にしたフロントからしてお家騒動は今年も恒例行事で、すったもんだの末結局は個人の能力の高さで中位力を発揮するだろうと思ってました(笑)。
 が、ピクシーの能力は予想を裏切るもので、選手達がのびのびやっている印象があります。おっしゃるとおり、選手と監督の信頼関係がうまくいっているからこそでしょう。さらなる躍進をする可能性は高いように思います。
 柳下監督をけなすつもりはないのですが、昇格争いから脱落したのは「厳しさ」を求めすぎたからのように思います。
 活を入れるにしても、受け取り方は選手によって違います。なにくそと思う選手もいれば、考え込んでしまう選手もいるはず。そのへんのフォローがうまく行かなかったのではないでしょうか(もっとも、コーチ陣などスタッフにもそういう能力は求められるのでしょうが)。
 三浦監督はそのあたり非常に神経を使っているのでしょうね。それでもメンバーが固定化しつつあるのが気になりますが・・・。
 

posted by フラッ太| 2008-04-18 15:55

Re:「名選手、名監督にあらず。」

ホント、名古屋、サプライズですよ。
それだけに監督の力でここまで変わるのだなと思ったわけです。

監督も選手を煽てたり叱ったりと、そうやって結果を出して
いかないとなると本当に大変な職業だと思います。

監督と選手の関係を書く度に組織論になって、
何か良い組織(会社)とダメな組織(会社)を書いてるような
気が毎回しております(笑。

posted by whiteowl| 2008-04-18 22:04

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