2008年12月05日
家本主審。 -嫌われた審判を読んで-
オシム目当て買ったNumberに、思いがけず興味深い記事があった。 それは、今年始めのゼロックススーパーカップで、警告11枚、退場者3人を出して そのジャッジが問題視された家本政明SR(スペシャルレフェリー)のノンフィクション記事だ。 家本SRの真面目さと研究熱心さ、 レフェリー間で彼のジャッジチングに対する評価が高いことが書いてあった。 例えば、無期限停止の処分を受け、その間に、人の動きを解析することに没頭し、 そのフィジカル理論を大体大のサッカー部に伝え、 その大体大が、2部でありながら全日本大学トーナメントで優勝したこと。 家本氏のレフェリングに対して、仲間内だけではなく海外からの評価も高く、 海外からの審判の依頼が多いことなどが書かれていた。 また、今回の無期限停止期間中にも、様々な嫌がらせがあり、 婚約していたフィアンセとの結婚も延期になったことも書いてあった。 しかし、これを読んで私の家本SRへの評価は変わらなかったし、 むしろ、やっぱりそうかという思いのほうが強かった。 私の今までの家本SRのジャッジに対する印象は、真面目すぎるというものであった。 今回の記事は、そのことを示している。彼の判定は、杓子定規すぎる。 2枚目のイエローを、1枚目と同じ基準で出す。 今年のゼロックススーパーカップは、警告11枚、退場者3人を出さねば、 試合ができないほど荒れていたという印象はない。 それが、今季初めての試合で、今季のレフェリングの基準になる試合であったとしても多すぎる。 カードの数が多いということは、すなわち、試合をコントロールできなかったことを意味する。 審判は、試合の統治者であり絶大な権力を持っているが、舞台(ピッチ)の主役ではない。 我々は、審判のカードショーを見に行っているわけではない。サッカーを見に行っている。 選手に一人でも退場者を出すとゲームのバランスが崩れ、試合そのものの面白さをそがれる。 審判は試合をコントロールする一方で、積極的に退場者を出さないようにしなければならない。 審判が、目立ってはいけない。 家本SRの問題は、選手とのコミュニケーション不足にあると感じていた。 それは、以前にも指摘した。ゼロックススーパーカップ-審判考-(3月2日) 彼が真面目すぎるので、毅然というよりかは高飛車な印象を与えて 選手に反感を買っている節があった。 (※それを裏付けるような内容が、該当記事には書いてあった。) 私もアマチュアの遊びに近い試合ではあるが、審判をしたことがある。 人間だから、ミスもあるし瞬時の判断には迷いも生じる。 審判に完璧さを求める人が多いが、それは無理だ。断言できる(笑)。 だから、大事なことは自分の判断を相手に納得させることであり、 そのためには、迷っていると悟られずに自分の判断に自信を持たなければいけないし、 選手とコミュニケーションをとらねばならない。 語弊を恐れずに表現するなら、審判に求められているのは正しいジャッジをすることではなく、 選手や観衆に自分のジャッジを納得させることなのではないか。 例えば、岩政を2枚目のイエローで退場させたシーン。 その前に、家本SRは、岩政のハードコンタクトに気づいていて目をつけていたらしい。 それで、やったからしてやったりではいけない。 しかも、この時、目をつけて待ち構えていて出した判定であるにもかかわらず、 副審に意見を求めた。これでは、選手からの信頼を失う。 この例でいうなら、一言、本人に言えば良い。 「君のプレーには目をつけている、次やったら退場だぞ」と。 このような一言があるかないかで、選手の納得の度合いが違ってくる。 選手が納得した態度を示せば、観客が必要以上に騒ぐこともない。 Numberの記事の後半を読むと、家本SR本人が、 「以前の自分はプロレフェリーとして常に完璧でなくてはならないという意識が強すぎたように思います。 (中略)柔らかい対応を必要とする場面もあると思うし、 目の前の選手たちとどうやって今日の試合を運営していくか、を考えるようになりました。」 と語っている。 延期になっていた結婚式も決まったようであるし、一度の失敗に厳しい日本社会であるが、 失敗から多くのことを学んだ姿を示せれば、失った信頼もいつか取り戻せるだろう。
posted by whiteowl |15:41 | J-league | コメント(4) | トラックバック(1)