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2008年09月27日

クライトンと三浦監督。

ダヴィとは違い単年契約だったため、こちらは移籍金はかからないようだが、
ダヴィとともに今季限りとの報道がされているクライトン。

今のところ2ゴール8アシストと抜群の存在感を示している。
いい選手であることに間違いはない。

ただ、いい選手であるからこそ、このクライトンの使い方を誤ったのが
今季の札幌低迷の一因と考える。
三浦監督は、最後までクライトンを上手く使えなかった。
それが彼と三浦監督との確執が報じられた原因とも考えられる。



三浦監督の用いる中盤をフラットに並べる4-4-2のシステムに、「王様」は必要ない。
フィールドプレイヤー10人全ての選手が、ハードワークしないと機能しないシステムだからだ。

理由は単純明快だ。自陣に引き気味で4-4の2ラインで
自陣を均等に割り振ったゾーンで守備をするゾーンディフェンスの網を張る。
自陣のスペースを無くすことで相手に攻撃の糸口を与えず、
相手ボールを奪い素早くカウンターに転じるというのが三浦戦術の肝である。

しかし、再び相手にボールを奪われたら、すぐに戻って2ラインを維持しなければならない。
クライトンは、カウンターで攻め上がった後すぐに、自分の守備位置に戻らないため、
札幌のゾーンディフェンスに穴を開けてきた。
クライトンが得点に多大な貢献をしながらも、「諸刃の剣」と言われ続けたのはこのせいである。


本来、4-4-2の布陣が主流のイングランド・プレミアリーグでは、中盤の真ん中の選手を
「ボランチ」とは呼ばずに「CH(セントラルハーフ)」と呼ぶ。
理由は、ボランチは守備的MFと言われる通り守備に重きをおいたMFだが、
CHは、守備もするが状況に応じて攻めあがるからだ。

昨季、欧州チャンピオンズリーグを制覇したマンチェスター・ユナイテッドも
主にこの4-4-2のシステムを採用しており、
プレミアリーグ得点王に輝いたC・ロナウドばかりに注目が集まりがちだが、
CHのスコールズが地味ながら、ものすごい運動量で攻守のバランスをとっていた。

札幌にはこのスコールズに当たる選手がいなかった。芳賀は確かに運動量はあるが、
攻撃の点で物足りない。クライトンは攻撃力はあるが守備に穴を開ける。
これが、最初、クライトンがボランチで使われずにFWで使われていた理由であったと思われる。

しかし、この4-4-2の布陣は、縦方向の激しい上下動がないと攻撃が機能しない。
要は、退いて守ってそこからボールを奪ったら上がって、
相手に取られたらまた再び自陣に戻るというのをひたすら繰り返すのである。
(※だから、10人がハードワークしないとこのシステムは機能しない。)
しかし、J1に上がって相手にボールを圧倒的に支配され防戦一方になっていた札幌は、
チームとして上がることが出来ず、個の力でこの局面を打開するしかなくなっていた。
だから、ゾーンに穴を開けたとしてもクライトンをボランチで使わざるを得なかった。
それから、三浦監督が昨季から札幌で用いてきた4-4-2との間でジレンマが始まる。


元を辿れば、事の発端はキャンプ中のアルセウ退団に始まる。
確かに、アルセウは三浦戦術のCHとして必要な激しいDFと運動量をもっており、
柏では物足りないとされたようだが展開力も兼ね備えていた。
しかし、このチームの攻守の要となり激しい運動量を必要とされるCHのポジションに
ブラジルの選手を使うということが、そもそもギャンブルだったのかもしれない。
全員がそうとは言わないが、規律に縛られるというのが、あまり得意ではない国民性だからだ。
クライトンも然りだったが、シーズンが始まってしまったことや、補強費が限られている
札幌は高額年俸の選手をコロコロ代えるわけにはいかなかったと思われる。

クライトンと三浦監督、チームの歯車はこの頃から狂いだしていたのかもしれない。
チーム戦術の要、チームの主力となるCHの選手をシーズン前に
きちんと確保できなかったことが、やはり痛かった。
この部分については、強化部はFWのノナト獲得よりも非難されて然るべきだ。


繰り返すが、クライトンは間違いなく良い選手だ。ただ、札幌のチーム戦術には合わなかった。
早い段階でチーム戦術を確立し、それを担う人材をきちんとシーズン前に確保しないと
選手と監督のお互いにとって、良い結果に繋がらない好例だと思うのだ。

posted by whiteowl |08:04 | Consadole Sapporo | コメント(8) | トラックバック(1)