2011年09月29日

【ザ・インタビューズ移植】札幌のユースはなぜ強いんですか?

【Q.札幌のユースはなぜ強いんですか? 】



嬉しいシーン
  質問をいただいてから考えたりしていたので、
  ずいぶん時間が経ってしまいました。
  お待たせしてすみません。
  以下はユース(U-18)のことに限定して
  書いています。U-15以下のことは
  語れるほどよく知らないので。


(尚志高校戦でのナリゴール)


コンサユース、今年は特に好結果ですもんね。今のところ。
なぜだろー。
私なりに考えられる要因をいくつか挙げてみます。

◆最初からチームの完成度が高かったこと
ユースはトップチームで活躍するプロ選手を育成するのが主な目的の機関ですから、ユースの大会でチーム自体が好成績を残すことよりも、個々の選手が力を伸ばすことを優先していると思います。


もちろん育成するのは試合に勝つための選手ですし、「勝ちたい強い気持ち」自体が選手として身につけるべき個の力でもありますから、毎試合、選手たちは1試合ごとに全部全力で勝とうとしますし、勝つことを求められます。勝つことでしか得られない成功体験は成長の貴重な糧になりますし、勝つことによってより強い相手と真剣勝負する機会に多く恵まれますから。だから好成績より育成が目的とは言っても、「勝たなくてよい試合」があるわけではないので、その点は誤解のないようにお願いします。
そのうえでの話ですが、通年でユースの試合を眺めていると、特に選手の起用やポジションに関して素人なりに考えることがありました。例えば有望な、経験を積ませたい1年生には春先から少しずつ出場機会を与え、増やしていって成長を促しているんだなとか、3年生の進路がおおむね決まるころを過ぎると、3年生より1、2年生の方が優先して使われるようになるんだなとか。ポジションをしばしば変えて慣れない位置でもプレーさせて、うまく機能しないことも含めいろんな経験をさせているんだなとか。(傍から見ているだけですから、怪我とか体調不良とか学校行事の都合とかプライベートな事情とかそういう前提事情は知らないまま、試合に現に出場している選手が誰か、だけを見ての理由の推測ですから、まったく的外れなものも相当あるかもしれませんけど(笑)。)

ここ数年のコンサユースのサイクルは、春に新しい1年生たちが入ってきて雪が溶けてようやく外でサッカーができるようになるころ北海道プリンスリーグが開幕し、7月半ば過ぎまで続きます。その期間は新しいメンバーでの実戦経験を積んでいくことと1年生を代わる代わる試合に慣れさせることが並行して進みます。メンバーもポジションも流動的です。プリンスリーグは優勝することが必須(=じゃないと秋の高円宮杯の出場権を逃してしまうことになる)ですから、けっこうギリギリの試合もあったりしてドキドキの日々です。無事それが終わると次は夏のクラブユース選手権@J村のシーズンです。
クラセンではその年のチームが初めて全国レベルのチームと対戦することになります。北海道とは違う本州の暑さも大敵ですが、それよりももっと、相手の早いプレス、速いパススピード、強い当たり、簡単には勝てない足元勝負、体の使い方、そして時には「ずるいプレー」に、面食らったり戸惑ったりします。毎年初日の試合の前半くらいまではおたおたびっくりしつつプレーしているような印象を受けます。あんまりよい成績を残せないことが多い大会ですが、この大会を経てチームがひとまわりたくましくなるような気がします。そして秋に始まる高円宮杯は、コンサユースにとって「いよいよ本番」。これまで培ってきたチームプレーとか、選手個人の力を全国の舞台で思い切りぶつける大会になります。
これを過ぎるとJユースのグループリーグがあるのですが、このころになるとかなり1、2年生の起用が増えて、クラセンのころとはチームの様相がずいぶん変わっている感じになります。
長々と書いてきて何が言いたかったかと言うと、ここ数年のコンサユースの平均的なサイクルでは、チームは常に新しいメンバーで形成途上であり、常に若く経験の少ない選手が混じっており、完成形と見えたときにはもう新しいシーズンに突入している、状態でした。
しかし、今年のチームは趣が違うのです。
遡ること約2年前になりますが、一昨年の夏クラセンが終わったあと、試合に出るメンバーと出場ポジションがずいぶん変わりました。クラセンで真剣勝負の体験を経てこのまま高円宮杯へ向けて熟成していくのかと思ったら、直後の知事杯から選手のポジションもずいぶん変わり、当時1年生だった(今の3年生の)奈良くん(CB)や拓馬(ボランチ)はそのころからずっと中軸のポジションで出場しています。
翌年(つまり去年)は1年生で最初からレギュラーになる選手が多く、公式戦のメンバーのほとんどが1、2年生という状態が続きました。3年生で試合に出てるのはFWの三上陽輔、MFの菅原康介、GKの松原修平の3人だけという感じで。ですから今年のチームのほとんどの選手は去年から恒常的に試合に出ていた選手なのです。
そういう意味で、今年のチームは春先から例年と熟成度が違いました。雪解け前の春先の広島遠征でなんだかすごく広島を押し込んで勝ってしまって驚いたのは(→ http://www.consadole.net/akik/article/1173 )、たぶんこの連携・チーム熟成度の違いがあったからなんじゃないかと思っています。例年なら「新しいチーム作りの試行錯誤時期」にあたる旧プリンスリーグのシーズンに、今年はプレミアリーグで継続的に全国レベルの相手としのぎを削る対戦を重ね、互角以上に戦える環境がさらにチーム力を向上させるという好循環を招いたと思います。もっとも、この点を考えると、今年ここまで1年生の試合出場がないことが来年どう響いてくるのか、不安びくびくなんですけど。(プレミアリーグが始まったことによるコンサユースへの影響については、こちらの質問に対する私の考え→ http://www.consadole.net/akik/article/1436 もどうぞご覧ください。)
さらに言うと、今の2年生、3年生の中心選手にはU-12からコンサ育ちの選手が多くいて、U-12からじゃないとしても、ほとんどは札幌U-15からU-18へ進んだ選手です。長い選手同士で9年間一緒ですし、6~8年間一緒にプレーしている選手たちがごろごろいます。互いの特徴はわかりきっているはずですから、そりゃ連携もよくなりますよね。


◆良い選手が揃っていたこと
今のメンバーのほとんどが去年からレギュラーだった大きな理由は、それだけの選手が揃っていたからでしょう。たぶん。選手の能力を見極める力は私にはありませんから、監督が試合に出す選手を見てそう思うだけですけど(笑)。
どうして今年の2年生、3年生にこんな多くの能力の高い選手が揃っていたのか。
偶然かもしれませんw
無理矢理推測?するとしたら、今の3年生(貴之、貴哉)が小学校4年生でU-12に入ったのは2003年にあたります。ゴメスや夢実や一希や彰吾の学年だと2004年。日本中が日韓W杯で盛り上がっていた2002年ころとか、コンサドーレが岡田監督のもとJ2で優勝した2000年や、札幌ドームが開業し、J1にいたコンサドーレの観客がうなぎ登りだった2001年ころには、北海道でサッカーを始める子供たちも多かったことでしょう。今のコンサユースの主力選手はそのころの子供たちにあたるんじゃないかなと思ってます。
・・・となると、その後日本ハムファイターズが札幌に移転して、マスコミの熱狂ぶりもそちらに移ってしまってからの後の世代はどうなんだろ?とちょっと心配になるところでもありますけど(汗)。


◆ユースで選手を育成する基盤が充実してきたこと
北海道サッカークラブ(コンサドーレの運営会社)が財政的危機に瀕して、「5段階計画」と称する経営立て直しとチームの長期的強化のための計画を打ち出したのが2003年シーズン末。計画初年度がスタートしたのが2004年のことでした。ユースに力を入れて自前で選手を育成していく方針はたぶん以前からあったのでしょうが、この計画で改めて、クラブの基本方針として方向性が確立されました。貧乏な財政の中でもアカデミーには(比較的)大きな予算を割き、アカデミー専用の練習場とかユース選手用のバス、自宅から通えない選手のための寮の設備など、少しずつ育成環境を充実させてきました。物的設備だけじゃなく、育成にあたるスタッフの充実も大きく前進していることでしょう。現在のU-18の四方田監督は、1999年にトップチームのコーチとしてコンサドーレにいらしたのですが、2002年からはU-18のコーチになり、2004年からはU-18の監督としてユース選手の育成にあたっています。数えたらもう今年で10年目になりますね。北海道のこの年代の子供たちを多く見てきて、さぞやたくさんのノウハウ蓄積があることでしょう。U-12監督の浅沼さんや札幌U-15監督の名塚さんも長く指導にあたってくれています。
アカデミーに力を入れた地道な積み重ねの蓄積が、こうして花が開いてきたのかなと嬉しく思います。サポとしてはこのままずっとずっと長く続けていただけますように・・・と願っています。

2005年4月時点での四方田監督インタビュー http://archive.sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jtoto/column/200504/at00004383.html を読み返すと、着実に進んできたことが感じられて嬉しくなりました。

2011-09-29 07:37:10 

posted by あきっく |07:37 | ザ・インタビューズ移植 | コメント(0) | トラックバック(0)

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