2010年07月18日
守備ブロックをつくる守り方。 -W杯と三浦札幌の比較-
今回のW杯で、多くの国が採用していた“4-4”で2ラインをつくる “4-4-1+1”のシステム。 札幌もこの守り方を実践して3年前にJ1昇格を実現したことは記憶に新しい。 この守備システムの特徴は、DFラインとその手前でラインを2つつくって ゾーンディフェンスをおこない、ゴール前の危険なスペースを埋めることにある。 2ラインとFW以外の+1の選手をどこに置くかで多少のバリエーションがある。 2ラインの間に、守備専門のアンカーを置けば、より守備的な4-1-4-1になり、 FWにおけば、より攻撃的な4-4-2になる。 いわゆる、“守備ブロック”をつくるという守り方だ。 1つのラインを4人で構成する理由は、3人だと両サイドにスペースができ、 5人以上だと後ろに人数がかかりすぎるため、4人がちょうど良いとされる。 (※実際は、ピッチの横幅に対して4人でも足りないので、本当に危険な場面ではDFラインの人数は増える。) 各国の実力差を埋め、この守り方の有効性が示された今回のW杯という印象がある。 スイスが優勝国のスペインに勝った一戦もこの守り方だった。
その一方で、今回のW杯の国々と三浦監督時代の札幌のそれを比較した時、
札幌の方が、“2ラインが常にきれいに揃っていた”という印象がある。
今回のW杯で、あれだけ常に2ラインをきれいに並べて戦った国はなかった。
しかし、当時の札幌がきれいに2ラインを並べたから悪かったというつもりはない。
なぜなら、ゾーンディフェンスは自分の守備範囲(ゾーン)では1対1が前提になるが、
その1対1で勝つ可能性が高い場合は、2ラインを揃えることには意味があるからだ。
この場合、布陣のバランスが崩れないので、そこからカウンター攻撃に移りやすい。
J1昇格当初は、これを目指していたと思われる。
だから、DFラインにCBを4人並べるなど、
チーム内でフィジカルの強い1対1に強い選手ばかりを起用していたのだろう。
しかし、チーム内では1対1に強いはずの選手を起用しても、
J1レベルでは通用しなかったことに誤算(?)があった。
W杯でも、守備ブロックをつくって守るチームは、戦力的に相手よりも劣る場合が多いので、
きれいに2ラインを形成することよりも、ボールサイドで数的優位を作ろうとしたのではないだろうか。
そこで、1対1で勝つことが望めないので、 ボールのある側で守備の人数を増やして数的優位を作る必要に迫られた。 ラインをきれいに揃えることを優先しては、ボールサイドで数的優位はつくれない。 だが、1対1で相手にかなわないことを前提に、 ボールサイドで数的優位を作って守る場合、 当初の自分の守備範囲(ゾーン)を捨てて数的優位をつくるため、 刻一刻と変化する状況にあわせた 選手個々の危険察知能力≒“カバーリング”能力が問題になってくる。 結局、選手が、1対1の守備も、カバーリング能力もJ1レベルになく、 戦術ではカバーしきれない選手間の実力差があったので、 再びJ2に降格した可能性が高いのではないかという思いを 今回のW杯を見ながら強くした。 本当に選手に実力があるのなら、どのような戦術を用いたとしても、 現在のように、ここまでチームが低迷することもないはずだろう。 札幌はチームとして“選手の育成によって昇格を狙う”というのであれば、 今のところJ1レベルの選手の育成に成功していない ということになるのではないだろうか。
posted by whiteowl |10:20 | Tactics (戦術) | コメント(0) | トラックバック(1)
スポンサーリンク
スポンサーリンク