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2009年04月23日

“チャレンジ&カバー”の落とし穴。

今季から札幌にノブリンが導入した高い位置から相手にプレスをかけてボールを奪い
そこからのショートカウンターにつなげる“プレッシングサッカー”。

しかし、セレッソ戦でその代名詞である“チャレンジ&カバー”の弱点が見えた気がする。


疑問の出発点は、セレッソ戦で、札幌の守備時に
左SHの岡本がなんであんなに左サイドで走り回っていたのかということ。

そして、セレッソに(特に前半)、なぜ札幌の左サイドを狙ったかのように攻め込まれたのか。




“チャレンジ&カバー”は、相手に積極的にプレスをかけることを“チャレンジ”、
積極的にプレスをかけるために出て行った選手によって出来たスペースを
他の選手が埋める(しぼる)ことを“カバー”と言い、それをチームとして一つの連動した
守備戦術とするのが、“チャレンジ&カバー”の考え方。


昨季までの戦術との大きな違いは、三浦さんは自分の守備エリア(ゾーン)を出て
相手にプレッシャーをかけることよりも空けないことを優先し、
ノブリンは、積極的に自分の守備エリアを出てプレスをかけることを優先している。
ただし、だからといってそれによって出来たスペースをそのままにしておいて良い
というわけではなく、そこは他の選手がカバーするということになっている。
(※現代サッカーにおいて、基本的にはゾーンディフェンスで守る。
マンツーマンディフェンスは、ずっと特定の人に特定の人が付く守り方。)


しかしながら、だからといって、絶対の戦術がないように、
どちらがいいとは一概には言えないと私は思う。


昨季の三浦さんの戦術は、ノブリンのように局面で数的優位を作って
積極的に相手のボールを奪いに行かないので、
基本的に自分のゾーンでは、1対1の守備を求められる。
しかし、SBにCBを起用するなど守備的な選手起用をしていたにもかかわらず、
この1対1の戦いでことごとく負けていたのが、J2降格の一番の原因だと思っているし、
三浦さんの戦術が、大宮で機能して、札幌で機能しなかった一番の理由だとも思っている。


一方、ノブリンの用いる戦術の場合、最初のプレスでボールをとれずに相手に展開された場合、
ボールのある側に選手が集まるということは、必ずどこか他にスペースを作っていることになる。
特に、どちらかのサイドの場合、カバーするために全体的にボールのあるサイドに寄せるので、
逆サイドにスペースが出来る。つまり、そこからサイドチェンジされると危険になる。

三浦さんの用いていた戦術の場合、ゾーンを守ることを優先していたため
相手が利用できるスペースを自陣に生み出しにくく、
こういった横のゆさぶりにも強く、“網”がすでに張ってあるので縦パスも通りにくい。
相手チームが、ボールを放り込むスペースがなく
最終ラインでボールを回すことが多かった理由はこの辺りにある。
まあ、J1ではそっから個人の力で切り込まれましたけどね(;´Д`A ```




当然、セレッソの技術レベルが高かったというのはあるだろう。

最初のプレスの段階でボールを後ろに下げさせたり、奪っていれば問題はない。
問題は、プレスをかけてもボールをキープされ、横に繋がれた場合である。
そこからボランチを経由して逆サイドに展開されていた。

セレッソの両SH酒本、石神。ボランチのマルチネスは、これをやってきた。

セレッソは、まずセレッソの左サイドの石神にボールを預ける。
そこにすかさず藤田がプレスをかける。
まず優先順位として、縦に突破されることを警戒するので、
このプレス自体は効いていたし、征也は足がつるくらい頑張っていた。

問題は、そこからキープされボランチのマルチネスに繋がれたこと。
キリノが何度かプレスバックしていたが、真後ろからボールをとりに行くのではなく、
(それでイエローをもらって次節出場停止になったわけだし・・・(・・;))
ボランチへのパスコースを塞げば良かったのではないだろうか。

そして、セレッソの右サイドの酒本に渡り、中央に絞っていた岡本が札幌の左サイドにできた
広大なスペースを埋めるために走り回ることになっていたのではないか。
(※選手が走るよりもボールの動きの方が早いため、どうしても後手になる。)

そして、全体的に札幌の右サイドに選手がずれていたために、札幌の左サイドから
攻撃されるとどうしても守備が後手に回る。
それが札幌の左サイドで守備のプレッシャーが弱くなった理由であり、
セレッソに札幌の左サイドを攻撃された理由ではないだろうか。


プレスに行く場合、行った人間が作ったスペースを埋める必要がある。
それをしなければ、逆サイドに振るまでもなく相手にそのスペースを利用されてしまう。
だから、絞りが弱くなれば、中央から突破されてしまうことになるため、
全体的にボールサイドに絞る必要はある。

ということは、プレスをかけた時に数的優位をつくったなら、
必ずボールを取らねば逆にピンチを招くため、ボールを取るのが一番だが、
取れなかったとしても、まず縦を切るのはもちろんのこと、
横に出されるのも防がなければいけないことになる。


ロングボールを放り込んでくるのではなく、しっかりつないでくるセレッソ相手
だったからこそ見えてきた課題かもしれないが、J1昇格を目指すなら、
もっと“チャレンジ&カバー”の戦術を洗練させていかなければ、
またJ1の厚い壁に跳ね返されることになるのではないだろうか。



posted by whiteowl |13:15 | Tactics (戦術) | コメント(4) | トラックバック(1)

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Re:“チャレンジ&カバー”の落とし穴。

 >プレスをかけた時に数的優位をつくったなら、
  必ずボールを取らねば逆にピンチを招くため、ボー  ルを取るのが一番だが、
  取れなかったとしても、まず縦を切るのはもちろんのこと、
  横に出されるのも防がなければいけないことになる。

 これを読んで甲府戦の失点シーンが思い浮かびました。
 あの時はマラニョンに4人で囲みに行ったはいいけど
 ボールを奪えずに横に出されて失点したんですよね。

 キリノがかなり低い位置まで下がってディフェンスしていましたが、ひょっとしたら前後に挟むというのが約束事としてあるのかも・・・。もしくはボールホルダーにプレッシャーをかけてまずは縦を切るというのが前提としてあるとか。
 いずれにしても、プレスをかけるのとゾーンで守るのはどっちも必要で結局はそのバランスをいかに取るかということなんでしょうけど、どのエリアでは厳しく行くとか約束事を1つずつ積み上げていく過程にあるのでしょうね。ある意味で選手同士の足し算じゃなく掛け算の要素があると思うので、まずは第1段階というかボールを楽に持たせないというのができてからというところだと思います。

posted by フラッ太| 2009-04-24 03:26

Re:“チャレンジ&カバー”の落とし穴。

こうやって読むと、なんだか三浦さんの戦術がとてつもなく洗練された素敵なものにも思えます。いや、(柳下さんに去られた悲しみも去った)途中からは明確に好きでしたけれど…。

posted by MasaMaru| 2009-04-24 07:27

Re:“チャレンジ&カバー”の落とし穴。

個の力がまだ足りてない気がします。J2を楽に突破できるようでないと、J1では厳しそうな気がします。
戦術うんぬんより、1対1で勝つというのが前提で、保険としてカバーリングがあるわけで・・・特に取りに行くプレーをしたら、勝たなきゃいけないですしね。
そのあたりは、石崎監督が「考えが甘かった」とおっしゃっているので、思ったよりJ2のレベルが高いか、選手の能力が低かったということなのでしょう。

今年はレンタルの選手がいないことを考えると、育成に舵を切っているように思いますし、社長は昇格・降格を繰り返すチームなので、降格はさしてダメージはないと思っていた。と発言されていたので、あんまり昇格には拘っていない気がします。なので、今年は、シーズン途中の補強はないと思っています。今年は、長い目でみようかと思っています。

あとメディアの露出が増えているのは、社長が売り込んでいるからでしょうか?
今年は、なにがしらの方針を打ち出すため模索しているように、現場も経営もみえます。

posted by langu| 2009-04-24 10:44

Re:“チャレンジ&カバー”の落とし穴。のお返事。

>フラッ太さん

甲府戦は自陣の深い位置だったので、もっとパスを出されてはいけない状況だった。

プレスは、“上下から挟む”というような趣旨のことをノブリンが言ってたので、
ボールホルダーを上下から挟むという約束はあるのではないかと思います。

>第1段階というかボールを楽に持たせないというのができてから

そうですね。守備戦術は経験が反映されるので、洗練していって欲しいですね。

>MasaMaruさん

…c(゜^ ゜ ;)ウーン

三浦さんは、守備においてもリスクをとらないサッカーだったので、
守備においてもリスクをとるノブリンのサッカーと比べると
確かに、合理的で論理的な、機能美というか様式美みたいなものは感じますが、
やっぱり面白くないと私は思っていますが(笑)。

>languさん

>個の力がまだ足りてない

そうですね、それは私も感じます。
戦術の前に、サッカーは局面での1対1の積み重ねですからね。
プレスに行ったら、しっかり「戦」ってボールを取るという
気持ちを継続して、もっとボールに挑戦して欲しいと思います。

矢萩さんは、エレベーターチーム論者だと思っています。
その時の状況にあわせて無理をしない。
ただ、経営面を考えれば、昇格には絡んでいかなければ観客動員は見込めませんから、
その辺りのバランスをどう考えてるかでしょうね。

今年は、去年のサポの圧力によって出てきた、中期計画に基づいてやってるようですね。

まあ、でも、スタジアムに総合案内所もできましたけど、あんなとこにあって、
あんな地味で目立たなくて意味あんのかなぁとか思わなくもないんですが(;´Д`A ```

posted by whiteowl| 2009-04-24 13:57

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