2015年11月10日
オマエの目は節穴か?ハイ
自分でも何がなんだか分からないまま、あちらの世界に引き込まれてしまった事故の翌日に、苫小牧の救急病院で言われた通り、某大学病院の受付にCDと紹介状を提出して外来を受診しました。 入院しなければならないのは明らかだから、生活用具なども準備してきました。
診察室で目の状態を正面から撮影すると、水晶体は角膜や虹彩と同心円上に位置してるはずなのに、円の中心位置が2割程度ズレてました。天文現象に親しんでいる身としては、「これは月食だ」と思いました。 即日入院して、翌日には手術の内容について説明を受けました。 病名は「右)水晶体脱臼、硝子体出血」と言うらしいです。こんな場合も脱臼って言うんだねぇ。 (多分、ハンドルにぶつかった)衝撃で水晶体が奥に押し込まれ、周囲から支えている毛様体の一部も切れてしまったため、少し下がった位置に移動しています。 メガネの右レンズが割れて、フレームも曲がったくらいの衝撃ですから。 このまま放っておくと水晶体が腐るので摘出する必要があり、手術の内容は加齢によって水晶体が白く濁った場合(白内障)と同様の手順になります。 眼球内で出血してて眼底の様子を見れないので、水を循環させて洗浄してから眼底の状態を調べます。 もし網膜の一部が剥離していたら(右上の波形部分)、眼球内にガスなどを注入して網膜を眼球の内側に押し付けて癒着させますが、癒着するまでの2週間程度はうつ伏せの姿勢を保って寝てる必要があり、患者にとってはこれが一番つらいんだそうです。←想像しただけでつらそう 医師から「医者は手術で頑張るので、患者さんはうつ伏せ寝に頑張って下さい。頑張りましょう!」と言われたら、一希くんのように「僕は元気なので大丈夫です。頑張ります!」と答えざるを得ませんよ。 前途を祝福するのか、病室から虹が見えました。 どこの病院なのかバレバレですが。 入院当時は顔の右半分が傷だらけで、眼窩は腫れてるし瞼も腫れてて、まるでお岩さんの顔みたいだったらしいです。 直ぐに手術を行うことも可能ですが、皮膚の傷がジュクジュクしてる状態で目の手術を施すと感染する危険があるので、それらの傷が固まった4日後に手術を受けました。 手術は1時間~1時間半程度で終わるけれど、顕微鏡下で行う手術中に体や眼球が動いたら大変なので、全身麻酔になります。 術後の説明によると、幸いにも網膜剥離は無かったそうですが、そんなこと医者は手術前から分かっていたし、私も勘付いていました。 たとえ眼球内で出血してて眼底の様子を見れなくても、瞼の上から超音波を当ててエコーを見る装置があり、網膜の状態は分かるんですね。 ただ患者に対しては、最悪の状況まで説明しておかねばならないものでしょうから。 手術の翌日に眼帯を外したら、右目でも景色が見えました。 ただし、レンズの無いピンホールカメラで撮影した写真のように大ボケな画像で、オブラートを通して眺めてるような景色でした。 水晶体を取り除いたのだから、もし「オマエの目は節穴か?」と問われたら、「ハイ、その通りです。」と答えるしかありません。 節穴であることを隠すために眼帯を付け、金属の保護板も装着します。 自分は独眼竜政宗か、カリブの海賊か 上瞼から下瞼にかけて、割れたメガネレンズで切れた傷が縦に伸びてました。 まるで丹下左膳のような傷で、もしこれが横向きの傷だったなら・・(右だけ)二重瞼になってたかも知れないのに。笑 病院の食事にデザートとしてライチが付いてくることがあり、きれいに皮を剥くと、自分の目玉を食べるような錯覚を感じました。 「大目玉を食らう」とは、このことか。←違 ベッド脇の床頭台には、テレビの他にDVDプレイヤーも備わっていたので、雑誌の付録として付いていたCDを聴きながら眠りに付こう・・ ・・としても無理です、21時に就寝なんて。 手術後の数日間は、1日に4~6回も看護師が点眼して回りました。 感染を防ぐためにまず両手を消毒して、使い捨てグローブをはめて、眼帯を外して目の回りを清浄綿で拭いて、所定の点眼薬を入れて、新しい眼帯をテープで貼って、グローブを捨てます。 次の患者に移ると、また両手を消毒して(以下、同様)・・つまり、患者の数だけグローブを捨てるから、それに1日の点眼回数を掛け算すると、恐ろしい数の廃棄物が発生します。 次のステージとして、患者自身が点眼を行えるように訓練が始まりました。 時刻別にどの目薬を使うかというスケジュールで、取り違えないようにキャップの色を塗ってくれます。 自己点眼するのは廃棄物を減らす意味もありますが、受動的に治療を受けるのではなくて、自分自身で治すんだという自覚を持ちつつ能動的な姿勢で治療に取り組む効果があると思います。 私の場合は普段から疲れ目の目薬を使っていたので点眼は難しくありませんが、初めての人には意外と難しくて、結構厳しい教育的指導を受けてました。 感染を防ぐための訓練だから厳しくて当然なのですが、普通は目薬を入れない方の目を閉じるもので(しかも余計な口まで開ける)、目薬を入れる方の目がよく見えないんだから狙いを定めるのが難しくて、うまく目の中に落ちません。 夜寝る前に鏡を覗き込みながら、目の回りを丹念に拭いて目薬を入れ、眼帯を貼り付ける作業は、あたかもナイトメイク。笑 やがて眼帯を付けなくても良い許しが出ましたが、まだ右目が十分に開きません。 目を閉じた状態を続けてると、瞼を開く筋肉も衰えるそうです。へぇー・・ということは、瞼の筋肉を鍛えれば、お目目パッチリになるのかも。 凸レンズである水晶体を取り除いた代わりに虫メガネを通して景色を見てみたら、結構ハッキリ見えました。 かなり瞼を開けるようになってきました。目力もアップ? 兎の目のように赤かった白目も、だいぶ色が引けてきました。 途中で眼圧が上がったりして、退院が少し先延ばしになったようです。 眼圧が上がると網膜の神経細胞が圧迫されて壊死していき、網膜の神経細胞は再生しないので、そのまま失明する危険があります。 もしかして、ゴーストライターになれるかも・・次回へつづく
posted by 雁来 萌 |21:02 | 雑念 | コメント(4) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:オマエの目は節穴か?ハイ
闘病記。
観戦に来るまでは大変だったんですね。
や、これからも大変でしょうけど。
全快を祈る。
posted by ヨーデル| 2015-11-10 22:31
経過は概ね良好だったらしい
なんだか、記事のタイトルから誤審の話と勘違いした読者が多かったのかなぁ。
私の場合は網膜剥離が無かったし、経過は概ね良好だったようです。
日ごとに快方に向かっている事が実感できれば、精神的には楽なもんです。周囲にはもっと大変な患者さんもいるので。
次回の記事は退院した後の体験談になり、試合観戦の話や今後の処置の話も出てきます。
そこで目の話はいったん中断し、しばらくは他の話題が続く予定です。
posted by 萌| 2015-11-11 07:21
Re:オマエの目は節穴か?ハイ
お見舞い申し上げます。
視力が回復することを祈ってます。
さて、脱臼という用語ですが、漢字の意味としては「ソケットから外れる」ということなので、歯が外傷などによって歯槽から外れる(歯が抜けてしまう)、あるいは外れかかってぐらぐらするのも脱臼と言います。
ご存じでしたら申し訳ありません。
水晶体も脱臼の用語を使うのは知りませんでした。勉強になりました。
posted by かもめ| 2015-11-11 07:40
今日は通院・検査の日
今まで脱臼というと関節の話でしか聞いたことが無くて、水晶体や歯まで脱臼と言うとは知りませんでした。
怪我や病気をすると色々な勉強になります。
退院後は一週間に一度の割で通院して検査を受けていて、眼底に異常は無く、視力は矯正すると1.0まで見えました。
12月中に人工レンズを縫い付ける手術を受ける手筈になっています。
水晶体が無くても、角膜が出っ張ってる部分が度の弱いレンズになってるので、ボケボケながらも景色は見えます。
一時的な視覚障害者になったついでに色々とトライしており、よく見えない方の目だけでも地下鉄の階段を下りられます。
むしろ凍結や工事で凸凹になった歩道の方が怖くて、片目だけでは遠近感が乏しいから凸凹の加減をよく把握できません。
posted by 萌| 2015-11-11 10:57