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2016年08月26日

瀬戸物に凝縮する芸術意匠

どんな内容の記事なのかを想像できなかった人は不幸かも。

久し振りに江別市セラミックアートセンターに行ってきました。

今回のお目当ては、「トイレに見るやきもの文化 ~染付便器の民俗誌~」という展覧会です。(チラシ:PDF)

副題には「百花繚乱 染付便器の粋」とあって、これは美術を愛好するトイレ評論家としては避けて通れません。笑

新さっぽろ駅、あるいは野幌駅から野幌総合運動公園行のバスに乗って、セラミックアートセンター前で下車すれば便利です。
アート引越センターではない

てっぺんにある展望室の中は暑いに違いないと思ったけど、せっかくの晴天だから登ってみました。予想通り蒸し暑かったんですが、景色は良かったです。
夕張岳方面

展示室の入口に掲げられた垂れ幕ポスター・・この時点で既にワクワク
着物文化ではない

陶器の産地である瀬戸地方では、白い瀬戸物の表面に染付技法で花鳥山水の図柄を描く装飾法が発達し、「瀬戸染付」と呼ばれます。

現代の衛生陶器が普及する前に、その高度な技術を食器のみならず便器にまで惜しみなく注ぎ込み、非水洗式の陶磁器製の便器にも瀬戸染付が施されていました。

圧倒的な存在感を放ってトイレ内に鎮座する豪華絢爛な芸術作品が、口に出すのも憚られる狭い個室空間を格調高い美術館に昇華させていたものです。
百花繚乱
「台の上に乗ってはいけません」とは書いてなかったなぁ・・。

たとえ対象が便器であっても手を抜かない意気込みは、日本人が便器にかける情熱とこだわりの象徴と言えます。

かくも華麗な便器を備えることによって、それまで閉ざされがちだった厠の空間を、客人を応接するおもてなし空間へと転換させた効果も絶大です。

 
左から時計回りに、男子小用(朝顔形、厠下駄付き)、同(向高形)、蓋付壷、大用(小判形)、同(角形)
ルーブル美術館「東洋の間」か
向高便器は、元々は木の桶で作ってあった形を模したので、材料が瀬戸物に変わっても相変わらず桶の「タガ」の部分を膨らませてあります。

奥にある蓋付壷は、底に付いた口から水が出て手を洗う、あるいは、水を流しながら用を足して音消しとして使ったのかも・・と説明にあったけど、そんな勿体ない事したかなぁ?

 
どの絵柄も見事で、後代にはエアブラシを使ったボカシの技法も導入され、まるで水墨画や友禅染の作品を鑑賞するような錯覚も感じます。
絵描きの名人もいてブランドになったそうで、印影のようなサイン入りの作品もありました。

しかし考えてみれば、将来は便器として使われるであろう瀬戸物の素材に向かって、朝から晩まで曲率のある器面に緻密な絵柄を描き埋めていく作業は、職人とはいえ極度の集中力と根気を必要とする作業に違いありません。

心血を注ぎ込んで完成させた芸術作品が、やがてトイレに設置されてオシッコをかけられる仕打ちを受けるなんて、堪え難い屈辱ではないんだろうか?

 
時々、古い民家を修復して資料館として公開している屋敷などを訪れると、厠に見事な便器が据えられていることがあります。(もちろん使用禁止)

北海道内にも結構残されていますが、まだ未訪問の場所もあるし、ここに載っていない場所で見たこともあります。
道内に残る染付古便器

逆境に堪えて大役を果たすべく頑張っている(いた)姿を見ると、イジらしくもイトおしくも感じますね。
思わず便器に抱きついて頬擦りしたくなるほどです。←不審者として通報されます

瀬戸物の便器が広く売れるようになったのは、皮肉なことに濃尾大地震とか関東大震災の後だそうで、スクラップ&ビルドの原理そのもの。

このような古い便器を多量にコレクションしてるミュージアムもあって、それがINAX社の関連施設だと聞けば納得します。

比較のためか、奥まった部屋に現代の便器も展示してありました。(これは使用可)
展示品に手をふれないで下さい

最近の便器(というか便座)は必要以上に多機能ではあるけれど、全体が白一色で面白くありません。
もはや温水洗浄便座は、白物家電として分類されているくらいですから。
「白い便器」ではなく「面白い便器」に出合いたいもんです。

 
館内の図書室には、様々な美術関係の文献が揃えられています。
今回の展覧会に因んで、入口にはトイレ関係の書物が並べられていました。
じっくり読んでみたい

展覧会の図録も素晴らしくて買ったんだけど、残念ながら転載は禁じられています。


いつだか書店の商品棚に「トイレ学大事典」という分厚い書物が並んでいました。
・・・トイレって、学問だったのかっ!?

ひょっとして「日本トイレ学会」とかあるんですか?←見あたらない
日本トイレ協会はあるし、日本トイレ大賞なんてのもあるんですねぇ。コンサートホールKitaraも受賞しています。

中国人も買い漁る便座を見ると、技術力もさることながら、日本人がトイレにかける思い入れ(というか執念)は世界一であると断言できそうです。
 ・便座が暖房されています。
 ・温水シャワーが出ます。
 ・温風で乾燥されます。
 ・ノズルが自動洗浄されます。
 ・「ワンダーウェーブ洗浄」・・って何ですか?
 ・消臭・芳香機能があります。
 ・擬音や音楽も出ます。
 ・便座カバーが自動で開きます。
他に何かありま専科?というくらい、至れり尽せりな・・痒い所に手が届くような・・ある意味でお節介な機能が満載されています。

我侭を言えば、他に一つだけ追加して欲しい機能があります。
体重計で(不正確ながらも)体脂肪率を測れるくらいなんだから、排出物の重量を測る機能が便器に備わっていれば、ヘルシーで便利だろうと思うんです。

そんな便器を体重計と共に日々使っていれば、成人病やメタボ体形を解消しやすくて健康増進に役立つんじゃないでしょうか。

自分でもその計測原理を考えてみたんですが、求める変数の数(3)よりも測定できる変数の数(2)の方が少なくて、算出できないという結論に達しました。固形物の比重を一律に仮定するのは現実的ではないし。

誰か、(イグ)ノーベル賞を目指して頑張ってくれませんかね。


次はこれでも見に行くかな?
5時ら


posted by 雁来 萌 |21:43 | 雑念 | コメント(0) |

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