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2014年04月18日

知里幸恵 銀のしずく記念館

昨年の秋に、小樽市総合博物館で開催された「ロシアが見たアイヌ文化」という展示を観覧してきました。

小樽市総合博物館の旧手宮機関庫(鉄道車両保存館)
機関庫
鉄道記念物で国の重要文化財です。


この展覧会は、ロシア・サンクトペテルブルク市のピョートル大帝記念人類学民族学博物館のコレクションから約140点のアイヌ工芸品を展示するもので、日本初公開の展示だそうです。→参考記事

展示品を見て回ると、ほとんどがポーランド人のブロニスワフ・ピウスツキによって収集された品物でした。

ピウスツキと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、「ピウスツキの蝋管」です。
蝋管というのは古い時代のレコード(というかテープレコーダー)のような物で、円盤形をしたレコードを円管形に丸めたものだと解釈して下さい。
羊羹ではない蝋管
録音する時は円筒を回転させながら振動する針で外側に溝を刻み、再生する時は円筒を回転させながら溝をなぞるピックアップで振動を拾うという原理です。

参考:それらしい器械に組み上げたエジソン蝋管蓄音機
エジソン・・という選手がいたなぁ

古い時代の蝋管資料は表面にカビが生えたりしてるので、クリーニングした上で(溝をすり減らさないよう非接触式の)レーザー光の反射を検出して音を再生させます。

 
ピウスツキは樺太(サハリン)へ流刑になったんですが、流刑といっても幽閉されていた訳ではなくて、樺太でアイヌ民族の生活用具を収集したり、北海道に渡ってアイヌのユーカラを録音したりしました。樺太アイヌや千島アイヌは、北海道アイヌと言語や用具が少し違います。

そのアイヌ語録音コレクションが「ピウスツキの蝋管」な訳です。

ピウスツキの功績を称えて、ポーランド政府から白老のアイヌ民族博物館に彼の記念碑が寄贈されたというので、昨年の初冬に見物してきました。

ポロトコタンの敷地内に巨大なアイヌ像が立っていますが、その脇にピウスツキの記念碑がありました。
ひっそりと佇む
正直言って目立たないけど、分かる人が分かれば良いのかも。

台座には、ポーランド語(多分)、日本語、アイヌ語、英語で説明が書かれています。
マルチリンガル
ロゼッタストーンのように解読できそうな・・。

記念碑の除幕式の様子がYou Tubeにあります。

ピウスツキについて詳しく知りたい方は、北海道大学学術成果コレクションの『ポーランドのアイヌ研究者 ピウスツキの仕事』あたりを参考にして下さい。18MbのPDF資料もあります。


ついでに登別まで足を伸ばして、2010年に開館した「知里幸恵 銀のしずく記念館」を見学しました。

登別で1903年に生まれた知里幸恵(ちり ゆきえ)は、アイヌのユーカラを日本語に訳した「アイヌ神謡集」を著作したんですが、心臓病のため19歳で夭折しました。

その業績を紹介する施設を建設しようという構想が持ち上がり、記念館を建設するために2002年から募金を集めて、2010年9月に開館できました。→参考
シロカニペ ランラン
彼女が書いた日記やノート、金田一京助からの手紙、関連文書、木像などを展示してありました。

ちょっと分かり難い場所にありますが、記念館の裏手に知里幸恵の生家があったからここに建てたんだと説明してくれた館長さんは、知里幸恵の姪に当たります。

観光シーズじゃないので館内をじっくり観覧した後に、お茶のおもてなしを受けました。
添えられていた紙に書かれた説明を読むと、アイヌ民族が飲む「エント茶」というハーブだそうです。

えっ・・それって、さっき白老で買ったのと同じ物じゃないの?
薙刀の形をした香る草
ポロトコタンの土産物屋で初めて見たから、試しに買ってみたのでした。
「ナギナタコウジュ」という草を乾燥させたお茶で、香りに少し癖がありますが、慣れると良い感じです・・二日酔いや風邪の時に飲むんだとか・・効用を確かめるために酒を飲まなきゃ。

登別市内には、幸恵の弟でアイヌ言語学者である知里真志保の碑もあります。
銀のしずく 降れ降れ まわりに

 
さらに登別温泉へ向かい、温泉街の手前に立つ「のぼりべつ分化交流館 カント・レラ」を見学しました。
天空の風
ここは閉校した登別温泉中学校だった建物で、近隣で発掘された遺跡の出土品を展示したり、勾玉作りや火起こしの体験学習が出来る施設です。

何しろ、今年の最終開館日の午後に訪れたもんだから、歓待はされなかったけどゆっくり見学できました。


所変わってここは新千歳空港・国際線の2階にある「アイヌ文化展示コーナー」です。
ルウンペ
アイヌの民族衣装やタペストリー、テクンペ(手甲)、マタンブシ(鉢巻)、イタ(盆)、マキリ(小刀)などを展示してあります。
目が回りそう

空港内のエレベーターの扉にもアイヌ模様があしらわれている他、国内線の4階にはアイヌ工芸品店「アイヌモシリ」もあります。

新千歳空港に降りたら、『ここは先住民族の土地なんだ』と意識する仕組みになっています・・イランカラテ。


空の玄関ばかりでなく、札幌駅にも今年の2月に観光客を迎える木製モニュメントが設置されました。
まるで生きてるような
この木像は、アイヌ民族彫刻の第一人者である藤戸竹喜(ふじと たけき)さんが札幌大学の「ウレシパクラブ」からの依頼で彫り上げた作品で、制作・維持費は全て寄付で賄われます。

像は弓の舞(ク・リムセ)を象っており、1年ほど前に近代美術館で開催された工芸品展「風のかたりべ AINU ART」に展示されていた藤戸さんの彫刻に感銘を受けました。→アイヌ工芸品&難波田龍起

木像の足元に並ぶ巨大な「イクパスイ」(捧酒箆)は、6名の木彫家に依頼した作品です。
ほどいてみたくなる
紐を結んだ模様を彫るのが得意な貝澤幸司さんの作品など。

一日中、マジマジと眺めていたいなぁ。←ホームレスと勘違いされそう


雁来練習場の横にある分譲地のモデルハウスに空き巣が入り、家具などが盗まれる被害が相次いだそうな(記事)・・私の仕業じゃないですから。


posted by 雁来 萌 |21:22 | 雑念 | コメント(0) |

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