2009年12月16日
“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。
今季、“ゾーンディフェンス”から“チャレンジ&カバー”に、 守備戦術を変更したので、序盤はそれに慣れるまで時間がかかったとか、 それで後半、あたかも守備が良くなったかのようにいわれていますが、 それはあくまでJ2レベルで慣れてきただけであって、 昇格、そして残留を目指すなら、まだJ1レベルではないと思っています。 また、昨季から続く根本的な守備の課題が、 明らかに改善された結果と考えるべきでもないと思うのです。
燃えろ!コンサドーレ 平川弘の通信簿 精神的支柱の不在響く (2009/12/16) >三浦前監督の引いて網を敷くゾーンDFから、積極的に前に出て ボールを奪いにいくチャレンジ・アンド・カバーへと守り方が180度変わった石崎コンサ。 その対極の守り方に選手は戸惑い、慣れるまでに時間を要した。 といっても石崎さんが要求するのは、1人がボールにアプローチして その後ろをもう1人がカバーし数的優位をつくるというごく基本的なこと。 ゾーンとマンツーは対極というコメントは、他でも散見するので、 特に平川さんに噛み付くという意図でもないのですが、代表者ということで人身御供になってもらいましょう(苦笑)。 結論からいうと、私は“ゾーンディフェンス”と“チャレンジ&カバー”は、対極ではないと思う。 守備の本質から考えれば、同じだと思うからだ。 むしろ、“チャレンジ&カバー”も大きな枠組みでいえば、“ゾーンディフェンス”と考えるべきだろう。
そもそも、これは、“ゾーンディフェンス”が自分のゾーン(守備範囲)を守り、 “マンツーマンディフェンス”は、マン(人)に付くというイメージ、 それぞれが別物であるという発想から来ていることが多い。 (※混乱するかもしれないが、“チャレンジ&カバー”は、 確かに、三浦さんの時よりマンツーマン気味の守り方ではあるが、基本的に、“ゾーンディフェンス”であるといえる。) 実際、昨季のJ1では、ボールホルダー(保持者)に対して激しく付かず、陣形を維持すること、 相手に付くことよりスペースを空けないことを優先したため、 ゾーンの間に位置する相手選手に十分なプレッシャーを与えられず、 J2レベルでは、精度が高くなかったのであまり問題にならなかった ミドルシュートやゴール前へのクロスをJ1では入れ放題という事態を招いた。 これをバスケットボールで例えるなら、ゾーンで自陣ゴール下に隙間なく人を配置し、 ゴールの下に入り込むスペースがなかったとしても、 ボールホルダーに対するプレッシャーが弱ければ、 ゾーンの外側から遠距離の3ポイントシュートをガンガンうたれているのと同じといえる。 技術のあるシュートが上手いチームほど、3ポイントはたくさん入るだろう。 この例からもわかるとおり、それが本来のゾーンディフェンスの守り方ではない。 (※一般的に、サッカーでも、大きな意味で、ゾーンで守っていないチームはない。) 確かに、ゾーンは相手にスペースを与えないことが優先されるが、 だからといって、ボールホルダーに対してノープレッシャーで良いということにはならない。 ゾーンであっても、自分のゾーン(守備範囲)では、ボールホルダーに対して、 プレッシャーを与えなければいけないので、マンツーマンで守る必要がある。 問題は、“ボールホルダーに対して、どこからどこまで付いていくか”である。 ボールホルダーへのプレッシャーを厳しくすると、ボールホルダーに付いていくため、 自分のゾーンにスペースを空ける可能性が高くなる。 しかし、ボールホルダーへのプレッシャーが弱いと相手を自由にしてしまうため、 J2よりJ1では、プレッシャーを厳しくする必要があった。 だが、そうなると、自分のゾーンにスペースが空く可能性が高くなるため、 周囲の選手が、そのスペースを埋める動き、 つまり、“カバーリング”をする必要がJ2よりJ1では高くなっていたといえる。 したがって、平川さん自身が書いているが、守備の基本は、 >1人がボールにアプローチしてその後ろをもう1人がカバーし数的優位をつくる ことであって、これは、“ゾーンディフェンス”であっても何ら変わらないことになる。 というよりも、“カバーリング”という発想そのものが、ゾーンディフェンスの考え方である。 監督が三浦さんから石崎さんに代わっても、 守備戦術が“ゾーンディフェンス”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、 要は、“ボールホルダーに対して、どこからどこまで付いていくか”の違いであって、 大きな枠組みでいえば、どちらも“ゾーンディフェンス”であることには変わりない。 したがって、まず、ボールホルダーに対してしっかりプレッシャーをかける1対1の強さ、 そして、スペースを埋めるカバーリングという点が問題になることも変わらない。 確かに、一見、“ゾーンディフェンス”と“チャレンジ&カバー”は全く別物に見える。 しかし、“ゾーンディフェンス”の基本は、 ボールホルダーへのプレッシャーとスペースを埋めるカバーリングのセットであって、 その点でいえば、別物でも対極でもなく、マンツー気味かゾーン優先かの程度の差であって、 昨季も今季も同じ課題を抱えているだけといって良いのではないだろうか。 つまり、守備は、用いている戦術が問題の本質ではないだろう。 頭の中で理解する時に、“ゾーンディフェンス”と“チャレンジ&カバー”は、 細かい点では違うかもしれないが、本質的な点では同じといえる。 本質がわかっていれば、例えば、ゾーンからチャレンジ&カバーに戦術が変わっても対応できるはずである。 別物としてしまうと、良い面もあるが、悪い面もある。 別物だから慣れるまで仕方ないということであれば、問題の本質が隠されてしまい、 本当の問題は何であるか?が見えてこなくなってしまうのではないだろうか。
posted by whiteowl |12:50 | Tactics (戦術) | コメント(8) | トラックバック(1)
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“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。 - whiteowl's Point of View | コンサドーレ札幌オフィシャルブログ
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Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。
こんにちは。
いつも難しくて「左様でございますか。はは~っ」と平伏しているだけなのですが,今回私でもものすごく納得できることが書いてありました。ここです。
>というよりも、“カバーリング”という発想そのものが、
>ゾーンディフェンスの考え方である。
この一言で,今までスッキリしていなかった疑問が氷解しました。
三浦さんのときの守り方と今の守り方は「180度違う」という言い方がしばしばされますし,たしかに今はチャレンジしているのだけど「カバーってどこをどうカバーするの?」と考えると,空いたスペースとかボールの出そうなところなわけで,それがどうして「180度違う」ことになるのか分からなかったのです。
要は,やっていることは同じだけど,仕掛けるタイミングや意識の置き方が違う,ということなのでしょうか。
そういえばスキーの世界でも,カービングスキーが出てきたとき「テールを流して曲がる」から「エッジのしなりを生かして曲がる」に180度変わったように言われましたが,いったん動作が身についてしまうと外足にしっかり体重をかけるという基本はまったく同じであることに気がつきます。これと似ている?
posted by ○た | 2009-12-16 17:28
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。のお返事。(○たさんへ)
私の勝手な都合の話ですが、私の文章を書く訓練も兼ねて、このブログを書いているので、
硬い表現になってしまうことが多くなっています。
書く方はその方が楽なんですが、読み手にとっては読みやすい文章ではないなと思っています。
スタイル含めて変え時なのかなとは感じています。文章力がもう少しあればいいのですが(-"-;A ...
>やっていることは同じだけど,仕掛けるタイミングや意識の置き方が違う
仰るとおりです。
三浦監督と石崎監督の守備の戦術の大きな違いは、ボールに対して、
積極的に仕掛けていくか、受身で待つかの意識の違いです。
後の対応は、基本的に何も変わりません。
ただ、積極的にボールに仕掛けていくと体力を消耗します。
受身であれば、体力の消耗を積極的に仕掛けるよりも防ぐことができます。
ですから、チャレンジ&カバーであっても、90分続けることが難しいので、
受身で対応する時間も必要になってくるという話になるわけです。
>カービングスキー
そうですね。道具が変わっても(戦術が変わっても)、本質の部分(守りの基本)は変わっていないと思います。
posted by whiteowl| 2009-12-16 17:55
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。
おひさしぶりです。
結局は判断の基準と行動力が備わっていないのかなと感じました。
頭ではわかっていても、ん~抜かれたら怖いなとか、
リスクを背負えなくて、余計にハイリスクにしてしまうみたいな。
そこを突っ込めるくらい周りのサポートを信用できないというのもあるのかも。
攻撃も守備もリスクを背負えるメンタリティがあれば、
ゴールを逸したり、失点したりしても、
中身は大幅に違いますから、来期はプレー内容をより注視したいです。
ミスしてもいいから本当のチャレンジをしてほしいですし、
そうしていかないとそのうち消えていく選手になってしまうので、
大きな視点でプレーしてほしいし、そういうのを理解して、
結果だけに捉われない見方をしていきたいです。
サッカーって難しいスポーツですねw
posted by Ryosuke| 2009-12-16 21:19
恐縮です(^^;
コメントへのレスありがとうございます。
レスの冒頭の部分は,もしかしたら私にむけて書かれたのではないかも知れませんが,私はwhiteowlさんの文章が読みにくいとは感じたことはないですよ。いつも勉強させてもらって感謝しております。
「難しくて…」と書いたのは(サッカーに詳しくない)私のほうの問題ですので,どうかお気になさらずに。m(_ _)m
posted by ○た| 2009-12-16 21:39
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。のお返事。
>Ryosukeさん
>そこを突っ込めるくらい周りのサポートを信用できない
しっかりチャレンジするには、カバーがしっかりしていることが前提ですね。
自分の空けた後ろのスペースの心配をしながら、
相手に当たりに行って止められるほど相手も甘くはないでしょうし。
>判断の基準と行動力が備わっていない
その点では、昨年の守備の課題と全く変わってないと思うんです。
>攻撃も守備もリスクを背負えるメンタリティ
それが今の札幌に一番足りないところでしょうね。
オシムが、よく言ってましたよね。
リスクを払わないと攻撃できないって(笑)。
それにそもそも何のためにリスクを賭けるのか
何のために守備をするのかってことだと思うんですよ。
でも、その一方で、リスクをただ侵せばいいというだけじゃなくて、
リスクマネージメントも同時にしないと破綻してしまう。
確かに、その辺りのバランスが難しいけど、それがまた楽しいかな(笑)。
>〇たさん
〇たさんへのレスですよ!(笑)
まあ、ちょっと反省文的な内容になってますけど(-"-;A ...
相手がいればわかるのですが、不特定多数に向けて書くときに、
どの辺りまでわかってるという前提で書けばいいのかの判断が難しいですよね。
詳しく書くと長くなってしまいますし、言いたい事が何なのかわかりづらくなってしまう。
ただ、言いたいことを優先してしまうと、少し横暴な表現にもなりがちです。
だから、もっと自分の理解を深めて、
ポイントを端的に表現できるようになれればいいんですけどね(-"-;A ...
そのためにも、書くって作業は非常に有効だと思ってるんですが、
書きながら考えがまとまってる感じなので、
読んだ人が必ずしもわかりやすくない場合もあるなと。
あ、また独り言っぽくなってますが、お返事です(苦笑)。
posted by whiteowl| 2009-12-16 22:09
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。
こんばんは。
“ゾーンディフェンス”と“チャレンジ&カバー”って、そもそも言葉として並べて比較できるものなのでしょうか?前者は戦術のひとつ、後者はプレイスタイルなのでは?180度違うなんて乱暴な表現以上に、そこからして怪しい。
まあ、“ゾーン”も三浦さんの場合、“ゾーンの有用性の追求”という方向で研究対象であっても不思議ではないので、そういう意味では“自分のサッカーで目指す守備の形”におけるテーマやスローガンみたいなものとして比べることはできるかもですが…。
個人的には、三浦サッカーの方が、技術的体力的に優れた選手をふんだんに集められないチームには向いていると思います。攻めて守って走って補い合っては、仰るとおり選手がすぐ疲れるでしょうから。今季のまるで守る気がないような失点シーンの数々はそれが問題かと(だから、どっちかというと新たな問題だと思います)。
そこを諦めるなら、“相手に攻めさせないためにできるだけ攻撃している時間を長くしよう”という柳下札幌の“守備”になるでしょう。個人的にはあれが好きかなぁ。取られた時も“うわぁ、ぃやられたあぁぁ”って感じで悔しがれるし(笑)。
posted by MasaMaru| 2009-12-16 22:56
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。
ゾーンディフェンスの対極はマンツーマンっていうのがより近いのかなあ、と。
ゾーンが“静”のディフェンスならマンツーは“動”のディフェンスだし。
Masamaruさんもおっしゃっていますが、チャレンジ&カバーはディフェンスの手段の1つっていう感じがします。
180度変わる、ってのは三浦式ゾーン(?)が待つ守備、受ける守備っていうイメージなのに対して、石崎式チャレンジ&カバーは動く守備、奪いに行く守備というイメージが強く、見た目にもガラッと変わるので用いたんじゃないかと・・・。
まあ、どういう手段だろうが結局は1対1で勝てるかどうかなので、
基本的なスキルが上がらない限りは昇格は見えてこないのかな、と月並みな答えしか出せないんですけどね(苦笑)。
posted by フラッ太| 2009-12-18 03:47
Re:“ゾーン”から“チャレンジ&カバー”に変わっても、札幌の守備の課題は変わっていない。のお返事。-その2-
>MasaMaruさん
守備なので基本的にリアクションなんですが、ボールを取りにいくか、待ち構えるかの違いですね。
どちらにしても、ボールホルダーに対してプレスはかけなければいけませんし、
それによってできるスペースは埋めなければいけません。
三浦監督の時に、はまっていた西や芳賀は、石崎監督になってもしっかり動けていますしね。
>三浦さんの場合、“ゾーンの有用性の追求”
追求してた節はありますよね(笑)。
>三浦サッカーの方が、技術的体力的に優れた選手をふんだんに集められないチームには向いている
三浦さんのサッカーは、ノルウェー代表監督のエギル・オルセンの戦術と似ています。
SHに長身選手を持ってきて、起点にするという戦術も酷似しています。
(※札幌なら、中山。)
ノルウェーは、この戦術を用いて、あのブラジルに短期間で2回も勝っています。
チャレンジ&カバーは、90分持続させることが難しいので、
どこかで受身になる時間が必要なんですが、それができないから
後半スタミナ切れを起こしちゃうんでしょうね。
ヤンツーサッカーは、ちょっとリスクマネージメントという点では・・・。
反町監督にギャンブルサッカーっていわれましたけど(苦笑)。
>フラッ太さん
>ゾーンディフェンスの対極はマンツーマンっていうのがより近い
理念的には、対極なんですが、実際、完璧なマンツーも完璧なゾーンも存在しえないので、
(やってもいいですけど・・・)
マンツーとゾーンの常に間の戦術をとっている。
確かに、取りに行くか受身かの意識の違いではあるんですが、
どっちもボールを奪ってカウンターにつなげるという点で、実は同じです。
三浦さんが、守備的って言われて怒っていたのは、多分そこです(苦笑)。
だから、取りに行っても、絡めとっても、ボールを奪った後に、
カウンターに繋げるという意識が重要です。
>どういう手段だろうが結局は1対1で勝てるかどうか
私が言いたかったのは、正にコレです。
posted by whiteowl| 2009-12-18 23:15