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2009年11月19日

『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3-

前回の記事で、HFCの構造的な経営問題の本質は、

結果を出さなければサポーターもスポンサーも付いてこないからという理由で、
本来的には、経営責任の所在がはっきりせず赤字ができない経営体質でありながら、
毎年、HFCは博打的な予算を組むことを強いられている

と書きました。このことに気付いている方も多いと思います。
ですから、実際、無理に昇格を目指すのではなく、
基本的に、“身の丈”経営をして毎年黒字を出すことが望ましく、
また、それを望む方も多くなってきたと思います。


しかし、その一方で、強くないと飽きられる、
“J1昇格の看板は下ろせない”という現実があることも認めねばなりません。


ですが、まず、その前に、

コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?

を客観的に検証する必要があります。


確かに、J2のチームとしてJ1を目指すのは当たり前ではありますが、
何が何でも上がらなければいけないとか、上がるのが当然のチームなのかを検証するという意味です。


手元に2007年の資料しかないので、
札幌がJ1に昇格した2007年を見ていきたいと思います。

観客動員は、35万人のトップ仙台に次ぐ2位の29万人です。
(※年度別入場者数推移(1999~2009))

確かに、観客動員数だけで見れば、札幌は昇格圏であるといえます。


しかし、よりチーム強化に直結する“営業収入の総額”の順位は、
上から、ヴェルディ、京都、セレッソ、仙台、福岡、札幌の順で、

13チーム中6番目でした。
(※双葉社 『サッカー批評』 43号 P41 参照。)

札幌の営業収入は、トップであるヴェルディの約27億円のおよそ半分、12.5億円です。
(※ちなみに、昇格した2007年の札幌の収支は、約2億円の赤字です。
つまり、実際に使った金額は、5番目の14.5億円。)


J2でも、札幌の営業収入は真ん中より少し上です。
真ん中より上ではありますが、収入だけでいえば昇格圏にいません。

まず、ここの部分で、
札幌はJ1、J2で見ても観客動員数は多いのだからJ1に上がれる
と思っている人は誤解をしている可能性があります。


確かに、他の上位のクラブとの差は広告料収入の差なので、
HFCは広告料収入をもっと上げるべきだという批判はなりたちます。
しかし、HFCの肩を持つ気はありませんが、実は、札幌の広告料収入は僅かですが仙台より高いです。
この点に関して、このままで良いとはいえませんが、特に悪いというわけでもないということです。


前児玉HFC社長もよく言ってましたが、
このように単純な経営規模でいえば、札幌はJ2でも昇格圏にいないのです。





では、議論を最初に戻して、経営規模から見れば札幌は昇格を諦めざるをえず、
“身の丈”経営に専念するしかないのでしょうか?

実は、それはそれで、経営が消極的・現実的になりすぎることで、
どんどん経営が縮小していってしまう危険性もあります。
“強くないと飽きられる”という現実の要請も認める必要があります。


また、サッカークラブは経営規模が全てではないことも事実です。

それは、2007年の営業収入が6番目だった札幌が
J2を優勝したことで自ら証明していることです。
(※赤字額を足せば、使った金額は5番目。)

したがって、経営規模以外の所で、何か工夫することで昇格できる。
そこに希望があるともいえます。


ただし、工夫にも限界があり、
それだけではJ1残留は難しいことを知ったのが、札幌の2008年でした。

したがって、札幌の現状は、J1昇格を目指すことは不可能ではないが、
経営規模でいえば昇格は難しく、何らかの工夫が必要であること。
さらに、J1残留を目指すには、さらなるチーム強化の工夫と同時に、
やはり基本的な営業収入をさらに増やす必要があります。


このような現状から、チームを長期的に強化するビジョンの重要性と
営業的にも、チームが“強い”ことをもはや前提にできませんから、
“強い”以外の付加価値をチームに見つける
必要があることが推測できると思います。


次回は、このような視点からHFCの経営問題を考えてみたいと思います。


posted by whiteowl |17:40 | HFCの経営を考える | コメント(5) | トラックバック(1)

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『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3- - whiteowl's Point of View | コンサドーレ札幌オフィシャルブログ

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Re:『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3-

目指すべきであると思ってました。
今では、短兵急にそれを指向すると今度こそ最悪の事態になると思ってます。

強さ以外の付加価値は、面白いに尽きると思います。
甲府が指向した様に。
そして、多くの人の心を掴んだところで、ある程度の昇格現実路線をとる。
面白い試合って、初めて見る人にも通にも共通するものがあります。
それを実現するためのコンセプトを貫くことでサポーターの共通認識ができてクラブを囲む人の輪も生まれると思うんです。
今までは、やってきたようで出来てない。

ファンサをするにも予算が限られるし、スポーツの本質から離れることはクラブとしてはやっちゃいけない。(ヤスがハシャグのはイイのですが)

お金をかけて強くするにも無いのだし、無いのに結果を出したクラブの真似をしようにも今から急にはできません。

我々が腹を括る必要があり、括れたならばそれをクラブに伝えることから始めないといけない。
我々も我慢してから強くなる。
そう考えます。

posted by OWLS| 2009-11-19 21:10

Re:『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』のお返事。(OWLSさんへ)

>短兵急にそれを指向すると今度こそ最悪の事態になる

その可能性はありますよね。特に、来季はJ2の試合数が減ることが予想される中、
総観客動員数は維持するとか社長は言ってますが、
そのためには平均観客動員数を1試合あたり3000人以上上げないといけないんですが、
その具体的な策もないまま数字だけが一人歩きしています。

まあ、その目標が達成できなくても、その赤字を被るんじゃなくて辞めるんですから、
HFCの社長は長続きせず、借金ばかり増えるわけですがね(-"-;A ...

その負の連鎖は、どっかで止める必要があるでしょうね。

>お金をかけて強くするにも無いのだし、無いのに結果を出したクラブの真似をしようにも今から急にはできません。

まあ、実際問題、仰るとおり腹を括るしかないんですが、
それだけじゃあまりにも夢がないわけで(-"-;A ...

HFCは、現実路線をとりつつも、夢も語る必要があると思うんですよ。
プロスポーツって、少なくともそういうもんだと思いますし。

それは当然、仰るとおりサッカーからずれることではなくて、
サッカーを通じて何を伝えられるかだと思うんです。

posted by whiteowl| 2009-11-19 23:22

Re:『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3-

 ぼんやりと思ったんですが、キーワードを挙げるなら「出世」かなあ、と。

 今の世の中って成り上がることがすごく難しい。普通の会社では自分が生き残るだけで精一杯だし、芸能界だってスキャンダル一発で足を引っぱられるし・・・。でも、個人であろうがクラブ全体であろうが、サッカー界って結果を出せば上に行けるんですよね。可能性だけで言えばファイターズは世界一にはなれないけどコンサはなれるワケだし。

 改めて、拙ブログで書く機会があるかと思います。
 

posted by フラッ太| 2009-11-22 22:56

Re:『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3-

ふーむ。どこに着地するのか、見守ってますよ。

「長期的展望」と「強さ以外のチームの価値」というのはインフォの激論でも書いたとおり、私もこの手の話をする時は外さないキーワードです。ただ、“勝たなきゃ飽きられる”を肯定しつつ、どう現実的にまとめるのか…。お手並み拝見します。

posted by MasaMaru| 2009-11-23 00:16

Re:『コンサドーレ札幌は、J1昇格を目指すのが当たり前のチームなのか?』 -HFCの経営問題 その3-のお返事。

>フラッ太さん

>サッカー界って結果を出せば上に行ける

そうですね。チーム的には、そこに希望があると思います。

長期的に大きな戦術の枠組みを変えない、ユースを含めた長期的な選手の育成。
野球と違って、戦力均衡を目指したドラフトではないからこそできることもある。

>MasaMaruさん

>どこに着地するのか、見守ってますよ。

そんなプレッシャーかけないでください(笑)。

そんな目新しい視点や解決策は提示できないと思います。
問題を整理して、課題を見つけて、それをどう解決していくかは、
最終的には、個々の人たちの問題だと思いますしね。

ただ、今後について重要な点は、イメージの転換だと思っています。
HFCが何か発信すること、アピールすることが重要だと思っています。

戦術的には、フラッ太さんのコメントにも書きましたが、
長期的にやっていくしかないでしょう。

あとは、北海道のサッカーの普及に存在価値を見出すことで、
総体として北海道のサッカーレベルの底上げにつながればいいのではないでしょうか。

posted by whiteowl| 2009-11-23 17:32

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