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2011年04月07日

日本人の体形変化を考察

2011年版の「理科年表」(国立天文台編・机上版)に、「年次別・年齢別・性別平均体位(日本人)」という項目がありました。

このデータは、厚生労働省による「平成19年国民健康・栄養調査報告」に基づく資料で、1970年から10年ごとに身長と体重とを調査した結果が掲載されています。
ただし1970年だけは、同じく厚生省による「昭和61年国民栄養の現状」に基づくものです。

掲載されているうちの、最新(2007年)のデータと最古(1970年)のデータとを比較して、(物好きにも)37年間における日本人の体形の変化を比較してみようと思った次第です。

 
理科年表に載っているのは数値だけなので、グラフ表示してみないとイメージが湧きません。

まず、1970年の身長と体重の年齢別変化を図示します。
幼児の頃は時代・性別による違いが少ないので、8歳以降の経過を拡大してあります。
身長体重1970

男の身長は16歳あたりで頭打ちになり、30代あたりから減っています。
女も同様に、14歳あたりから平坦になって30代あたりから減っています。

体重も男は16歳あたりで頭打ちになり、50代あたりから減っていきます。
女の体重は14歳あたりで上昇が鈍りますが、30代~40代にはむしろ増える傾向があって、60代から急減しています。

 
次に、2007年の身長と体重の年齢別変化を図示します。
身長体重2007

男の身長は17歳あたりで頭打ちになり、50代あたりから目に見えて減っています。
女の身長は早めに13歳あたりから平坦になり、男と同様に50代から減っています。

体重は男が17歳あたりでいったん頭打ちになりますが、23歳から急に増えて、50代あたりになると減っています。
女の体重は14歳で平坦になり、20代後半から60代の間に増えた後、70代になって減っています。

 
両年を比較すると、生まれたての身長は1970年も2007年もほとんど違わないのに、2007年の8歳以降は背が高くなって、成人では1970年よりも5cm前後高くなっています。

2007年の女の体重は1970年とほとんど変わらなかった一方、男の体重は20代~40代で1970年よりも10kg前後増えています。

つまり、女は少し身長が増えたけど体重が変わらなくて「スマートになった」のに対し、男は身長の増加を上回るほど「顕著に太った」と言えそうです。
ただしこれは「体積と重さとは比例する」という仮定に基いているのであって、もしかしたら軽い脂肪の比率が増えて重い筋肉が減ったとか、その逆なのかも知れません。

 
身長と体重を個別に見比べただけでは分かり難いので、次に「BMI」値を用いて比較してみます。
BMI値とは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で、22あたりが「標準」と言われています。

長さを表す身長を二乗した値は人体の表面積を表す目安になり、体重は重さの指標だから人体の体積を表す目安になります。

体積を面積で割った値が一番大きくなる形は球形なので、BMI値が大きいほど「丸っこい」体形、小さいほど「尖った」(or 凹凸が多い)体形だと見なせます。(ここでも、脂肪と筋肉との比率は変わらないと仮定して)

そのBMI値の年齢別変化を比較します。
BMI

1970年には、成人のBMI値は男女とも21ほどで、ほぼ同様に変化した後、20代後半から増えて60代から減っています。
思春期と中年以降は女の方が太っているのも、感覚的に納得できます。←異議あり?

これが2007年になると、男は23歳から急に増えてBMI値が24に迫り、70代でやっと減少しています。
他方、女は20代後半まで一定で、しかも1970年よりも小さい値になっています。ところが30代以降の増加は急激で、最終的には男にほぼ追い付いています。

少し穿った見方をすると、男は若い頃は貧乏で痩せているのに、就職したら飲み食いの機会が多い上に運動不足で太ってしまう・・ということかも。

一方の女は、若いうちはダイエットに努めて無理に痩せた体形を保っているけれど、結婚・出産した後はホルモンも変化して一直線に・・。

 
次に、身長と体重とを軸に取った散布図で、両者の成長の経過を比較してみます。
経過
このグラフは言うなれば、[体重/身長]の比が年齢と共にどう変化するか、を辿るような経路です。

左下が出発点(8歳)で、時代・性別の違いにかかわらず小学生までは順調に身長や体重が増えていった後、途中からは身長の伸びが鈍って体重だけが増えていきます。

さらに歳を取ると身長も体重も減りますが、増える年代の経路とは違って体重が多い側にシフトした経路を通っています。

往復の経路の違い(隔たりというか、シフト幅)が大きいほど、太ったまま歳を取ることを意味します。

1970年の男(水色)は経路の隔たりが小さかったのに、2007年の経路(紺)は隔たりが大きくなり、女の経路(ピンクと赤)の隔たりは時代に関係なくもっと大きな幅になっています。

 
結論として(非難を恐れずに言えば)、女は「元々太る素質を持っている」(から努力しても無駄だ?)けれど、男は「生活習慣が変わって太った」(から努力すれば戻る?)のかも知れません。


噂には聞いていたけど、こうやって図示してみると衝撃的なほどの変化だと実感します。わずか37年間の出来事ですから。

なお、データ中で時々不連続な値を示す年が見られますが、統計を取るサンプル数が少ないことが原因のようです。

2008年の報告は最近になって発表され、こちらに載っています。

「国民栄養の現状」という表現が示す如く、当初は「戦後の食料不足の状況下で栄養が足りているか」という調査から始まったんでしょうけど、近年では「体重を管理しているか」とか「朝食を食べているか」、「睡眠は取れているか」、「余暇の過ごし方は」、「ストレスの対処法は」などという点に主眼が移ってきているようです。

それだけ、近年は油っこい食べ物や生活習慣が健康に影響を及ぼしている、ということなのでしょう・・耳が痛いや。


posted by 雁来 萌 |20:31 | 雑念 | コメント(0) |

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