2010年12月03日
来年から平年値が変わる
気象の世界では「平年値」という言葉(値)がよく使われますが、平年値とは、30年間の平均値のことです。 平均的な状態と比較して現在の値はどうなのか、を把握する目的などに使われます。 ところが「平均的な状態」というのは、人によって捉え方(感じ方)が違います。 10歳の人間には過去数年間の記憶しか無いし、お年寄りなら50年間以上の記憶が残っている場合もあります。 多くの場合、古い体験ほど記憶が薄れていって新しい出来事ほど鮮明に覚えていますが、強い印象を受けた事件はいつまでも覚えているし、自分に都合の悪い事はあっさり忘れてしまうのが人情です。 年毎に変動している現象の平均値を求める訳ですから、平均する期間が短か過ぎると信頼性が有りません。 かと言って平均期間を長く取ろうとすると、平年値が求まるまで待っていられないし、同じ地点で同じ観測を長期間続けるのも結構難しい作業です。 そこで現実的な期間として、30年が採用されています。 これならば、1人の人間が体験して記憶していられる長さに近いし、年々の変動も適当にならされているし、統計処理に耐えうる観測値を揃えることも可能です。
求まった平年値を1年毎に更新するとしたら、紛らわしくてしかも使い難くなります。 例えば・・去年は平年よりも暖かかった、今年は去年よりも暖かかったけど平年よりは寒かった・・などという不自然な関係が生じないとも限りません。 逆に、いつまでも変えないで同じ値を使い続けるとしたら、平年より暖かい年が何十年も続いたりして、「平均的な状態」とはどういう値なのか分からなくなって不都合です。 なので、平年値は10年毎に更新することに決めています。 現在使っている平年値は、1971~2000年の30年間の平均値であり、2001年から2010年まではこの平年値を使っています。 2011年からは10年シフトして、1981~2010年の30年間の平均値を使うことになります。 「十年ひと昔」と言うように、10年経ったら古い記憶はさっぱり忘れ去って、仕切り直すことになります。 10年前にJ2で優勝したことなど、夢の中での出来事のように記憶から抹消してしまうか、日付を改ざんして遠い過去の話だと思い込むかして・・。 時々「気候変動」という言葉が安易に使われますけど、気候というものは暑くなったり寒くなったりと「変動」するのが当然であって、雨が降ったり晴れたりして毎日の天気が変わるのと同様です。 だから変動することが問題なのではなくて、どっちかの方向に継続して「変化」していくとか、変動の振れ幅が大きくなるとかなら問題です。 気候が暑い方向に変わり続けるとか、寒い方向に変わり続けるのが困るのであって、それを「変動」という語句で表現するのは適切ではないんですね。
測器の比較試験かな?(2010/4/3@札幌管区気象台)
posted by 雁来 萌 |07:28 | 気象細事記 | コメント(0) |
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