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2008年01月31日

北極圏での生活(5・生業1)

【狩猟】
今時のイヌイットは、ライフルを担ぎ、ヤ○ハのスノーモビルに跨って猟に行きます。
しかし、犬橇よりもスノーモビルの方が良いとは限りません。確かにスピードは出るし遠くまで行けますけど、途中で故障したら生命の危険に遭います。(彼らは簡単には死にませんけど)

なまじ遠くまで行けてしまうので、自力で帰って来れなくなる恐れがあります。これが犬橇であれば、たとえ2・3頭が動けなくなったとしても、とにかく自宅まで戻って来れます。
犬には毎日餌を与えなければならないけど、スノーモビルなら走る時だけガソリンを入れれば良い、という利点はありますが・・。

ソープストーンと呼ばれる、柔らかい石を彫刻して作ったイグルーの模型
イグルー
手前にアザラシが横たわっており、後ろに解体した肉を置いてあります。イグルーの中では、アザラシの脂に苔の芯を浸して、灯りや暖房に使います。

右手に持ってるのが「ULU」(ウル)と呼ばれる万能ナイフで、
ULU
取っ手は骨製で、刃は恐らくバンドソーの破片を利用していると思われ、よく切れます。これで肉の解体や料理、裁縫、大工作業など何にでも使います。これは近代の製品ですが、石器時代からこんな形をしていました。

こんな風に持って使います。
手の内を明かす
カメの甲より手の甲


アザラシなどを獲る時には、「離頭銛」という道具を使います。
離頭銛というのは、銛先が獲物に当たると横向きに刺さって柄から外れ、抜けなくなります。獲物が弱ってから、銛先に結んであるロープをたぐり寄せて捕獲します。

離頭銛の銛先
銛先
これは近代の製品なので、刃は鋼、本体はアルミで作られています。古代の遺跡から出土する製品は石と骨とで作られていますが、構造は全く同じで、ずっと変わっていないんです。(人間が進歩していない?)
しかもこの銛先の形や構造は、北極圏を取り巻く民族間で共通しており、アイヌ民族も同じ銛を使います。

街には、漁協とスーパーとホームセンターとが一緒になったような店があり、その一角でライフルを売ってました。もちろんチェーンをかけてありますけど、「それくれ」と言ったらすぐに 撃って 売ってくれそうな感じです。
何しろ生活必需品ですから、銃も弾丸も手近な店で買えないと困るんでしょう。

知り合いになったイヌイットに「生まれはどこ?」と尋ねてみたら、「そこのブッシュだ」と答えました。
イヌイットの妊婦が猟に付いて行くこともあり、産婆さんを呼んだって来る筈がないので、とにかく産気付いたらその場で産むしかありません。子供を産むのも取り上げるのも、自分しかいないんですから。
母親は、しゃがんだ姿勢で子供を産みます。現場を見たことはありませんが、そういうシーンを彫刻した工芸品があります。

真冬だって子供は生まれてきますから、急に冷たくなって気が付いたら(?)ブッシュの中の雪の上だった、という場合もあり得る訳です。寒さに強いはずですよね。
彼らは-40℃という世界でも下はジーンズを穿いてるし、上は防寒着を着てたとしても腰をかがめたら背中が出たりするんです。

つづく


posted by 雁来 萌 |23:16 | 雑念 | コメント(0) |

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