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2008年01月21日

北極圏での生活(1・気候)

兼ねて予告した通り、冬の間の試合が少ない時期に、北極圏を訪問した折に見聞した現地での生活について、数回に分けて書き綴ってみようかと思います。

この寒い時期に寒い話か?とお思いでしょうが、札幌の寒さなんて寒いうちには入らないし、冬の間も部屋の中をガンガン暑くしておいてTシャツ姿でアイスクリームを食べる、ってのが北海道スタンダードらしいですから。

はじめに基礎知識:
北極圏には、マイノリティーと呼ばれる少数民族も暮らしています。
日本のアイヌ民族の境遇もそうであるように、必ずしも社会的地位が高いとは言えず、少なからず偏見も存在します。
エスキモーとかラップ人とかいう呼び名は西欧人による呼び方であって適切ではないので、ここでは彼等が自分達を呼ぶ呼び名である「イヌイット:Inuit」や「サーメ:Same」(あるいはサーミ)を使います。
途中で分からなくなったら、「イヌイット」=エスキモー、「サーメ」=ラップ人、と解釈して下さい。
ちなみに「イヌイット」は、「人間」を意味する「アイヌ:Ainu」と同じ語源であり、北方民族の文化は結構つながっているんです。


北極圏というのは、北緯66.5°より北に位置する地域で、冬に太陽が昇らない(または夏に沈まない)日がある地域です。
札幌が北緯43°ほどですから、宮古島(24°)と北海道との緯度差を札幌の緯度に加えたほどの場所になります。緯度が高いので、当然、桁外れに寒いです。

そんな寒い土地に3回、それぞれ真冬の1ヶ月間ほど仕事で滞在しました。場所は、カナダの北の端と、ノルウェイの北の端近くと、グリーンランドの中部と・・聞いただけで寒そうでしょう?笑
私が寒さに強いのは、そんな地の果てで暮らしてたことがあるからかも知れませんが、現地で暮らしてる人たちは更に強いんです。

犬ぞり
犬ぞりと犬をモデルにした彫刻、土台はトナカイの角、吹雪に耐えてる犬は骨、橇は樹皮と皮で作られています。

【気候】
札幌でも実感があると思いますが、緯度が高いほど冬期間の太陽高度は低くなります。もっと緯度が高い地域では、太陽の南中高度が地平線よりも低くなって、太陽が出なくなります。この現象が起こる緯度が66.5°な訳で、原因は地球の地軸が公転軌道面に対して23.5°傾いているから(90°-23.5°=66.5°)って思い出して下さい。

北緯66.5°に位置する地点では、冬至の日には太陽が一瞬だけ顔を出して、直ぐに引っ込んでしまいます。それより北へ行けば行くほど、太陽が出ない日数が多くなります。

気温はもちろん低くて、-40℃はアタリマエです。私が体験した最低気温は-48℃で・・これは南極の昭和基地での記録(-45.3℃)よりも低いんです、実は。昭和基地は海岸部にあるので、南極大陸の内陸ほどは冷えないんです。

北海道でも、母子里とか江丹別あたりでは-40℃近くまで冷え込みます。でもそれは、晴れた夜間の放射冷却が強くて、明け方の最低気温が-40℃近くになるだけであって、日中は太陽が出てれば-10℃くらいまで上昇しますよね。

ところが北極圏というのは太陽が出ないから、「夜間の放射冷却、日中の加熱」という日変化が起こらず、1日中(というか毎日ずっと)放射冷却しっ放しになります。これ以上冷えることができない、という気温まで下がったままになり、1週間ずぅ~っと-40℃のまま続いて、温度計が壊れてるんじゃないか?と思うほど、気温が一定な状態が保たれます。

-40℃あたりになると、「ダイヤモンドダスト」という微小な氷の結晶が降ってきます。北海道でも、旭川や名寄あたりでたまに見られます。とても綺麗な現象なので、極端に寒い地域でしか見られない特権を享受している、という優越感に浸れます。(寒さが苦手でなければ)
さらに冷え込みが強くてダイヤモンドダストがもっと濃くなると、「アイスフォッグ」になって、視界が悪くなります。

眼鏡のフレームが金属だったりすると、フレームが接触する部分の皮膚が凍傷になったり、鼻水が出たままにしておくと鼻先が凍傷になったりします。
彫りが深い顔付きの人は、出っ張った部分が凍傷になります。北方民族の鼻が低いのは、気候に適応した結果だとか。
外で立ちションしてると凍る・・ってのは嘘ですが、試みない方が身のためです。

そんな低温でもカラスは飛んでいて、「ワタリガラス(Raven)」と言う少し大型のカラスです。飛んでる鳥が寒さで落ちてくる、ってことはありません。元々、か弱い鳥は極地にまで辿り着けないから?
ペットの犬は外の犬小屋で暮らしていて、ホントに冷え込んだ日には室内に避難させます。でも犬ぞりに使う犬は、いくら寒くてもずっと外で暮らしています。動物虐待ではなくて、平気なんです。

※カラスという種類って、(途中を省略すると)スズメ目・カラス科・カラス属という分類になり、動物の分類上はスズメの方がカラスより上位にいる、ということを初めて知りました。

つづく


posted by 雁来 萌 |23:41 | 雑念 | コメント(1) |

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この記事に対するコメント一覧
Re:北極圏での生活(1・気候)

北極圏が-40度なんてさむすぎですね

posted by マリオ| 2011-08-15 15:47

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