2012年02月29日
寒候期の気温極小値@札幌
1年のうちで最も寒さが厳しい「立春」の時期も過ぎたし、例年より1日多い2月も終わりそうなので、札幌における今冬の寒さを振り返ってみようと思います。振り返るだけであって、間違っても寒さがブリ返さないように・・。 シーズン別に、札幌における冬期間の毎日の日最低気温や、日最高気温を調べました。(ここで) そして、冬期間の中で最も低かった値(極小値)を求めてみました。 安直な発想で、年別に年間の最低値を調べてもダメです。 一応、12月から翌年の2月までを「冬」と呼び分けますが、少し広げて寒候期(10月から翌年3月まで)の間で統計することにします。 これらのような場合は年をまたぐので、前年の10月1日から翌年の3月31日までの値を比較して、最低値を求めなければなりません。
通常、冬期間の年の呼び方については、後の方の年、つまり1月が含まれる方の年を付けて呼ぶので、2011年10月~2012年3月の寒候期を「2012年の寒候期」、あるいは単に「2012年の冬」とか「今シーズン」と呼ぶことにします。 統計値がある1962年の冬から2012年の冬までの、51シーズンについて調べました。 2012年の冬については、まだ3月が残っているので暫定値ですが。 寒候期の日最低気温の極小値を近い年から書くと、以下のようになっています。 2012/2/19 -12.1℃ 2011/1/ 7 -10.1℃ 2010/2/ 4 -12.6℃ 2009/1/26 - 9.9℃ 2008/2/25 -13.2℃ やはり1月や2月が多いですが、たまに12月のうちや3月になってから一番寒くなるシーズもあります。 このように1962年まで遡って統計し、グラフに表しました。 注目点:
- 日最高気温の極小値は、ほぼ-5℃と-10℃の間に収まっている。
- 傾向としては、ほとんど変化していない。(50年間で0.9℃上昇)
- 日最低気温の極小値は、近年では-15℃まで下がることは無いけど、昔は-15℃が当たり前で-20℃近くまで下がっていた。
- 明らかに上昇する傾向が見られ、50年間で5.5℃(10年間で1℃の割合)高くなっている。
次に、日最高気温や日最低気温が最も低くなったのはいつなのか?を調べ、それらの極小値が出現した日付の変遷をグラフに表しました。 縦軸は12月1日からの日数を表し、ひと目盛が約1ヶ月で、60の目盛は1月30日に当たります。 ひと冬の間で最も低い値が出現した日付なので、最高気温の極小値と最低気温の極小値が同じ日に出現するとは限りません。 注目点:
- 日最高気温の日付は、50年間で8.5日ほど早まっている。
- 日最低気温の日付は、50年間で11日ほど早まっている。
- 1990年代は極小値が早い時期に出現した。
これらの結果から推定すると、
- 札幌では極小値が出現する(最も冷え込む)時期が早くなる傾向が見られる。
- 気温の極小値は2月から1月に移る傾向があり、2月が冷えなくなった?
- 今日(2月29日)は縦軸で90の目盛に当たり、この後に極小値が出現したシーズンもあったから油断できない。
この傾向を基に、単純に「地球温暖化の影響だ」と考えるのは安直過ぎます。最高気温が高くなっていないのだから。 札幌のような大都市の気温が上昇する原因として、都市化の影響も考慮しなければなりません。 人口が増加すると・・
- 住宅が増えるから暖房で発生する熱量が増える
- 蓄熱効果が大きいビルが増え、昼間に蓄積した熱を夜間に放出する
- 工場やオフィスやコンビニは夜間も暖房されている
- 夜も大人数が集まって、昼間と同じように活動する
- 車両から放出される廃ガスが増えて、大気中に熱と水蒸気が注入される
- 除雪して地面を出すから、昼間の日射を吸収して地中が暖まりやすくなる
・・などの効果が現れてきます。 じゃぁ、都市化の影響を受けない田舎のデータを調べればいいだろ、と考えるのが自然ですが、田舎では長年にわたる観測をしていません。 長期間の変化傾向を調べ得るほど古くから観測を始めていた地点は、昔から人が住んでいた地点、つまり都市化の変化が激しい地点になってしまうので、都市化による影響を差し引いて、純粋に自然現象による変化量だけを抽出するのは難しいです。 札幌のみならず、道内の主な観測点で同様な調査を行うと面白い結果が出てきて、内陸部の地点では時代変化が大きく、海岸部の地点では昔からあまり変わらない、という傾向が見られます。
posted by 雁来 萌 |22:57 | 気象細事記 | コメント(0) |
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