コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2011年11月24日

祈り

敗戦後もあれこれ考え続けた机上の計算。机上の空論ともいう。
50%あった昇格確率があっという間に10数%にまで落ちていた。


<勝ち点計算>

徳島 

第35節 11月12日(土)13:00 栃木 0-1 徳島 栃木グ
第36節 11月19日(土)17:00 湘南 1-2 徳島 平塚

ここまで3位 勝ち点65 19勝8分9敗 得点51 失点34 得失点差17

第37節 11月27日(日)13:00 徳島 vs 鳥栖 鳴門大塚
第38節 12月 3日(土)12:30 岡山 vs 徳島 カンスタ


札幌 

第35節 11月12日(土)13:00 札幌 2-0 大分 札幌厚別
第36節 11月20日(日)13:00 草津 2-1 札幌 正田スタ

ここまで4位 勝ち点62 19勝5分12敗 得点45 失点31 得失点差14

第37節 11月26日(土)14:00 湘南 vs 札幌 平塚
第38節 12月 3日(土)12:30 札幌 vs F東京 札幌ド


3引き分けできたか、引き分けに持ち込めず3敗してしまったかの差。1勝分の重み。トータルで考えればそれだけの差だ。
チリも積もればじゃないが、ドローも積もれば勝ち点3になる、というわけだ。J2というのは昔からドロー臭い、もとい泥臭い。
19日徳島が逆転勝ち → 札幌へのプレッシャー
20日札幌 今まで先制試合16試合全勝 → 今季初の逆転負け

踊一はメモを書き続ける。事実だけ。今は結果を元に分析するしかない。

<開幕前の予測A 負け数>
・「負けないサッカー」ができるか否かの判断材料
・昇格ボーダーラインは、「10敗前後」と仮定 
・6敗東京→優勝、7敗鳥栖、9敗徳島、12敗札幌
・札幌はすでに負けすぎである
・参考:11敗 北Q、緑、千葉、栃木、大分  

<開幕前の予測B 得失点差二桁>
・東京45、鳥栖31、徳島17、札幌14、6位緑23

<A+B>
・3位は「徳島か札幌」という仮定が導かれる

したがって、27日は鳥栖○、徳島× の確率が高い。
そうなると、鳥栖68に伸び、徳島65のまま。
26日に札幌が湘南に勝利していれば、札幌65となり徳島に並ぶ。

鳥栖が1点差で勝てば、徳島の得失差16
鳥栖が2点差で勝てば、      15
鳥栖が3点差で勝てば       14

札幌が1点差で勝てば、札幌の得失差15
札幌が2点差で勝てば、      16
札幌が3点差で勝てば、      17

最終戦に望みを繋げるためには、最低2点差をつけて勝っておきたい。
そうすれば徳島にプレッシャーを与えることができる。

逆に最悪のシナリオも想定しておく。サドンデスのパターンだ。
・札幌が湘南に敗れる
・鳥栖と徳島が引き分け
この条件で鳥栖&徳島同時昇格決定だ。

これでは最終戦のドームが消化試合になってしまい面白くない。
これだけは絶対阻止!!

最終戦までもつれれば、劇的なドラマが待っている…
待っているような…
待っているような気がしないでもない…

どっちなんだ、お前は自信があるのか?ないのか?
仲間を信じろ。仲間とは誰を差すのか。
サポーターか。選手か、監督か。
全員をか。コンサドーレというクラブの未来をなのか。
戦術をなのか、もっと大きな戦略をなのか。

いや、もっと神秘的な何かではないか。
神にすがりたい気持ちになっていた。マライア・キャリーの輸入盤ライヴCDを聴きながら道道46号線を疾走していた。

「1993年のマライアはいつ聴いても最高だ」
「コンサの黄金世代も1993年生まれなんだ」
「ガンバユースに勝ったんだぜ。凄いよな」

踊一はここ数日自らを鼓舞し続けていた。逆転昇格のシナリオを考え続けていた。サッカー関連の書籍を読み考え続けた。答えは出ない。
もしかしたら、答えは心の奥底にあるのかもしれない。サポーター一人一人の「信じる心」の総量じゃないか。
確かに徳島のサポーターは札幌のサポーターより少ない。だが、鳥栖も徳島も初昇格がかかっている。1997年の札幌サポーターがそうだったように、マグマのように煮えたぎっているはず。鳥栖サポと徳島サポの情熱は相当なものだろう。選手・監督のそれもこちらの想像以上じゃないだろうか…

踊一は路肩にクルマを止めた。鳥居が見えたのだ。
こんな気分の時はパワースポットに限る。若い時なら絶対にやらなかったが、厄年をきっかけに神社を真剣に参拝するようになった。

「ここは何の神が祀ってあるのだろう。周りが畑だから農業の神だろうか」

農業なら太陽の神だろう。太陽も風も審判も赤黒の味方をしてくれ。
そう祈るしかない。
まず土曜日、湘南から勝ち点3を奪うこと。
できれば2点差以上つけること。HOME千葉戦のように大量得点して徳島にプレッシャーを与えたい。

人事を尽くして天命を待つ。
やることやって、明るい道を切り開くしかない。自分で。
仲間達は赤と黒のフラッグを大量に運ぶ。湘南まで運んでいく。
はためくフラッグに俺達はひたすら祈る。
GOALが生まれますように。たくさん生まれますように。

踊一が立ち寄った神社は「神明神社」という。
天照大神(アマテラスオオミカミ)が祀られているそうだ。
仲間を信じ、自分を信じ、そしてパワースポットのチカラも信じる。

「とにかく最終戦に望みを繋ぎたい!」

J1かJ2か、決まるのはドームまで待ってくれ。神様に言いたいのはそれだけだ。
最後の舞台まで引っ張れば、あとは選手達がなんとかするさ。踊一は自分に言い聞かせると平原綾香の『誓い』をカーステレオにセットして、再びハンドルを握りしめた。



http://www.youtube.com/watch?v=rE3KlO56OYU
(『HERO』訳詞付 / Mariah Carey)

http://www.youtube.com/watch?v=sfBSD2YqXYs
(平原綾香 『誓い』)

posted by odo |11:00 | 坂大楽 踊一 | コメント(2) | トラックバック(0)

2011年11月21日

風に吹かれて

「熊林親吾か…。」

缶ビールと缶チューハイを飲んでも酔えなかった。3本目の発泡酒のプルタブに指を掛けながら踊一はつぶやいた。いつものようにスカパーの録画で得点失点シーンを分析していた。
同点GOALを決めた草津の中村は、札幌の先制点に絡んでいた。スナマコのサイドチェンジが左後方から右サイドに張ったウッチーにピンポイントで飛んだ。ゴールマウスを向いた時のウッチーは強い。思い切り振り抜いたシュートは中村に当たり大きくバウンド、そのままゴールマウスに吸い込まれた。スナの広い視野25、ウッチーの巧さ25、ラッキー50といったGOALだった。それが後半10分…。

なかなか追加点が入らず、シュート数ではむしろ追い上げられていた。前半押しまくって3本に抑えていたが、残り数分のところで12-14まで迫っていた。そして草津最後の2本のシュートが得点になった。終ってみれば14-14。守り切れなかった。
踊一はコンサの公式速報で確認した。

44分 【草津ゴール】右サイド熊林(草津)のFKに中村が頭で合わせ同点に追いつかれる

45+1分 【草津ゴール】右サイド熊林(草津)のFKはグラウンダーでゴール前へ、一人がスルーし走りこんだアレックスが強烈に蹴りこみ逆転を許す

逆転のセットプレーは、リンコンのスルーからアレックス。普段から練習していたのだろうか、見事なトリックプレーだった。スカパーの実況は熊林が蹴り始めた時から「トリックプレーか?」と叫んでいた。一方、スナのコメントでは「セットプレーが悔やまれる」とあった。スカウティングで知っていたかのようだ。だが、録画を何度も見る限り、あれを防げたかどうか…。同点弾も逆転弾も熊林の「札幌以外の上位陣はすべて倒してきたので、次も札幌を倒して自分たちの力をみせたい」という気迫にやられたとしか思えない。
結論から言えば、コンサの選手達に何かが足りなかった。足りなかったのは、セットプレーに対する警戒心であったように思うし、残り時間2、3分のしのぎ方だったり、あるいは「勝負脳」であったようにも思う。勝負脳は今、踊一が読書中の本に出てくる言葉で、アスリートの心身と脳について書かれたものだった。漠然と守る札幌に対して、草津には追い付いて逆転するイメージがしっかりあったように思う。

草津の副島監督のコメントを読む。
「選手が同点に満足せず勝利に対する執念を持ち続けたこと。後半、風上になって押し込むことができたが、ゴール前でのひと工夫が足りなかった。ただ流れはつかんでいたし、それが最後のセットプレーにつながった。札幌はゾーン・ディフェンスなので、セットプレーではチャンスがあると計算していた。それにトライできたことが勝利へ結びついた」

「セットプレーではチャンスがあると計算していた、か。それにしても残り数分、押し込まれた時点でマンツーマン・ディフェンスにしなかったのは何故なんだろう…。ベンチには櫛引も岡山もいたのに…。」

踊一は、スカパー画面に目を戻した。コールリーダーが悔しそうな表情を見せていた。上州名物の風に吹かれて、赤と黒のダンマクがたなびいていた。

再び監督会見を読む。

Q:風の計算はしていたのか?
「地の利があった。いつどこから風が吹いてくるかわかっていたので、それを活かした戦いができたと思う」(副島)

Q:終盤に押し込まれた原因は?
「風です」(石崎)

そんなときラジコから偶然流れてきた曲に思わず聴きいってしまった。
森高千里の『風に吹かれて』だった。
来年、コンサにとっての「遠い所」はJ1なのかJ2なのか、そんな事を思いながら聴いていた。なぜか悔しさ、悲しさはなかった。踊一は行きたいスタジアムがある。サッカー専用スタジアムでまだ行った事がない所。大宮のナックファイブとセレッソのキンチョーに行きたかった。もちろんJ1に上がらないと行けない。でも、そのためにJALのマイルをせっせと貯めている。
草津戦でわかったことは、来年のAWAYの行先は鳥栖と徳島に委ねられたということだった。



【ラス闘2】
 36試合 勝点62 得点45 失点31 得失+14  
 優勝:FC東京74、2位鳥栖65、3位徳島65、4位札幌
 3月A愛× 4月D湘× A東△
 5月D草○ A熊× D取○ A栖× H岡○
 6月A分○ 室H横× A岐○ D富△
 7月A栃△ H北△ H愛○ H水○ A千× H岐○ 
 8月A富○ D千○ 函H京○ A岡×
 9月A水○ H栃○ A北○ D緑○ H徳△ 
10月A横○ H栖× A京× A取× A徳○ H熊○
11月A緑× H分○ A草× A湘 12月D東


http://www.thespa.co.jp/game/2011/game/111120.html
(ザスパ公式)

http://www.youtube.com/watch?v=yYAX1IIPtVs
(風に吹かれて/森高千里)


posted by Yohichi Sakawotano |04:10 | 坂大楽 踊一 | コメント(0) | トラックバック(0)

2011年11月18日

果実酒

雑誌『O.ton(オトン)』だったら隠れ家的と表現するだろうか。
イチイの一枚板でできたカウンターとテーブル席が3つ、奥に小上がりが1つ。

メニューをさっと眺める。踊一はサッポロクラシックを注文した。マスターはなんとなくジオゴ似だった。突き出しに大根の田舎漬けが出てきた。
ウイスキーは「宮城峡」と「余市」がある。宮城峡には(芳賀)と書き加えてあった。
日本酒も置いてある。

 北の勝 純米
 純米吟醸 宮の沢
 季節限定濁り酒 厚き心に

宮の沢?聞いたことない酒だ。厚き心に?熱き心に、小林旭かっ。でもあの曲は好きだ。チャントにしてもいいと思ってる。
ページをめくる。フードメニューはどんな感じだろう。

 鮭ザンギ ~J1回帰~
 鳥栖地鶏鍋焼きうどん 

ツッコミどころ満載だな。鍋焼きうどんの写真、何コレ、鍋敷きがエルゴラの古紙だし…。ばんぶうのパクリやん。
クラシックを飲みながら、さらにメニューを見回す。
セレクトワインのページに目が止まった。エレベーターガールのイラスト、吹きだしに「上へ参ります」とある。
1997年モノ、2000年モノ、2007年モノのワインがずらりと並んでいる。フランス産、イタリア産、チリ産の中に北海道産も沢山あるらしい。

「昇格年のワインを集めたって訳か」

ブドウの出来不出来ではなく、コンサドーレ昇格決定年のブドウで造ったワインを集めているのだ。マニアックである。イタズラ書きで「(2011)」と書き加えてある。

<アドベンチャー>と題して、1998、2001、2002、2008年のワインも特集されている。文字通りJ1へ冒険した年だ。こういうこだわりは嫌いではない。
こちらもイタズラ書きで「(2012)」と書いてあった。

カクテルのページもサッカー一色だった。
メニューにはオリジナルカクテルが並んでいる。

 バビロンリバー 
 ヤリキレナイリバー

チャント「何も恐れず」のバビロン河に、昔練習場があった栗山に流れていたヤリキレナイ川か。

 ショウリノメガミ 
 ダンスウイズドールズ

女性向けの甘い酒なのだろうか。

<やさぐれカクテル>
 ミスパス 
 ミスキック
 ミスサッポロ
 ノーゴール
 オウンゴール
 イエローカード
 レッドカード 
 ジャルカード

ギャグのつもりなんだろうか。なんだか頼むのが怖い。ふと見やったモニターにジオゴのカラスパフォーマンスのシーンが流れていた。
再びカクテルのラインナップに目を通した。

 <おすすめカクテル>
 1996
 ニアサイド
 ファーサイド
 サイドチェンジ
 アーリークロス
 アーリーカラス
 ストライカー
 4-2-3-1
 4-4-2
 
飲んだことがない、聞いたこともないカクテルのオンパレードだった。
一体何屋なんだ…
ジオゴ似のマスターに聞いてみた。

「あのー、ニアサイドってどんなカクテルですか」

予想外の長い説明が始まった。
コンサにちなんだカクテルを開発研究していること。赤と黒にこだわっていること。サッカー観戦をするお客のために目に良い素材を使いたいこと。
ブルーベリーとアロニアは自分で栽培していること。ブルーベリーは黒実でアロニアは赤実を使用しているから「赤黒」になること。

ニアサイドのニアはアロニアのニアか。じゃあファーは何なんだ…。
で、炭酸割りでサイドチェンジと。メモメモ。

と、その時だった。カランカランとドアのカウベルが鳴った。
山下達也だった。

「た、達ちゃん!!」

「達っちゃんは馴染まないなー。ヤマかタツでいいですよ」

三角山放送局のレディオコンサドーレそのまんまやん!

「レ、レディコンに質問送ったの、実は…」

その時だった。すかさず達ちゃんがプラカードを見せた。
プラカードには「ドッキリ 大成功!!(ハートマーク)」と書かれていた。

やられたーー!!
「それより明日の草津戦、行かなくていいの?」

次の瞬間、踊一は目を覚ました。

posted by Yohichi Sakawotano |15:31 | 坂大楽 踊一 | コメント(0) | トラックバック(0)

2011年11月13日

先制点

 テレビ北海道の中継録画を見返すのを楽しみにしていた。
コンサのGOALシーンは何度も何度も見返す。踊一はコンサのGOALシーンはその数十秒前から巻き戻し、一時停止を繰り返しながら分析するのが至福のひとときだ。
お立ち台に上がった二人の顔。ウッチーと古田。
自信に満ちた表情。やりきった感ありありの良い顔だった。
 ウッチー。七三分けが似合うリーマン顔のウッチーのドヤ顔。
まるで凄腕の営業マンのようだ。
営業課長からのきついノルマ。「開始10分で先制点奪ってきて」
こんな無理難題に愚痴一つこぼさずキッチリ答えた。そんな印象。
 ちゃんと根回しは済んでいた。シュンにロングロングタテポンを頼んであった。
「合図するから。俺が抜けたらDFの後ろに落としてくれ」
岩沼シュンピーのフィードは低空で飛び、ボールはウッチーがコントロールしやすい位置に弾んだ。ゴールハンターの血が騒ぐ。

 同じころゴール裏では踊一が叫んでいた。
「シュート!!」
ウッチーが放ったボールはゴール右隅に突き刺さった。開始7分の電撃GOALだった。
踊一はサポ団体ATKのメンバーのみならず、後ろのサポや通路を挟んだ隣のサポともハイタッチを交していた。バシーンと音がする強いハイタッチだった。
誰もが興奮していた。誰の目も熱く燃えていた。血沸き肉踊るコンサ熱烈サポーターゾーンの面々。
今季先制した15試合、コンサは全勝だった。
「この試合ももらった!!」誰もが信じて疑わなかった。

「このまま終了のホイッスルまで突っ走る!」

 ウッチーの先制ゴールで、ただでさえ雰囲気が盛り上がっていたゴール裏がますますテンションが上がっていった。いつものように“昇格座敷わらし”岡山一成がエンジンを温めてくれていた。改めて岡山に感謝したい、と踊一は振り返る。
ピッチと応援がスイングする試合、それも90分間通してスイングする試合というのは年に数回しかない、というのが踊一の持論だ。
例えば、「サッポロ」コール、「コンサドーレ」コール。ピンチの時や押し込まれている流れの時、絶対に相手にゴールマウスを破らせないという魂の入ったコール。実はこの定番のコールで、その日のサポーターの勝利への執着が表れる傾向にある。クラブ創設から16年目だが、この真理は変わることはない、と踊一は感じている。
 この日の大分戦にゴール裏の意気込みが十分に発露しているのを感じていた。そして重要なのはそのサポーター達の意気込みが空回りすることなく、ピッチの選手達のプレーに反映すること。大分戦は反映していて、とても嬉しかった。応援の良し悪しは、サポーターの自己満足で終ってはいけないと考えている。選手が結果を出せて初めてサポーターの応援、努力は実るものだと踊一は考えていた。
 だから、後半40分に古田が追加点を入れた時、強く確信したのだった。

「勝たせた。勝ったのではなくサポーターが勝たせた」

誰もが傍観者じゃなかった。ゴール裏いやスタジアムのサポーター、ファン全員が「参戦」し、選手と一緒に戦った典型的な試合だと思った。
 先制した後の定番チャント、定番コールは一人一人の心からの「勝ちたい気持ち」がこもっていた。その声、その手拍子の束はやがて大きな塊となり、まるで宇宙戦艦ヤマトの波動砲のようにピッチにとどろいたに違いない。
 
 400試合出場のスナマコは左サイドを牽制しながら、中央のボランチ河合キャプテンにパス、河合は周りを見ながら攻めのスピードをコントロールする。敵味方のポジショニングを確認するとすかさずスナにボールを戻す。スナはスルスルと上がってきたウッチーの足元にパス。この後のウッチーのワンタッチパスが素晴らしかった。スナから来たボールを絶妙な角度、絶妙なボールスピードに変換し、バイタルエリアに迫った古田にアシストボールを出したのである。古田は渾身のシュートを叩きこむ。大分を仕留めるトドメの一撃だった。

 踊一が「サポが勝たせた」と思った要因は、「コーヒールンバ」にある。
 幾多のコーヒールンバがゴール裏で歌われてきた。しかし大分戦のコーヒールンバの出来は珠玉でなかったか。「勝ちたい」気持ちが声の束になって文字通り選手の背中を押していた感覚があった。
目の前の敵、大分トリニータの他に勝ち点で並ぶ3位徳島ヴォルティスとも戦っていた。1-0勝利では物足りなかった。

「もう1点要る。もう1点取ってくれ」

 昇格争いが佳境に入ると、勝ち点1、得失点差1のデリケートな駆け引き、勝負になる。もちろん踊一らサポーターはそれらを待ち望んでいた。そういう駆け引きを楽しんでいるのだ。選手も楽しんでいて、サポーターも楽しんでいる。応援チャントとピッチのスイング感というのはそういうことなのかもしれない。それは昇格争いしていなければ出て来ない雰囲気なのだ。昇格可能性の消えた去年一昨年の“消化試合”では絶対に醸し出されないムードなのは間違いない。

 「大分の選手はスタジアムの異様な雰囲気にのまれている。気迫負けや」(デカモリシ)

 「見ての通り。気持ちの面など全てにおいて札幌に負けていた」(田坂監督)

大分側のコメントを読んで、踊一は再び確信しニンマリした。

「俺達が勝たせたんだ。赤黒の12番の気迫で勝たせることができたんだ」

自意識過剰と嗤うなら嗤えばいい。俺達の気迫はホンモノだった。
カーステレオから BON JOVI が流れていた。試合前に心のアクセルを全開にする儀式だった。
踊一が大一番の前に必ず聴く BON JOVI のLIVEアルバム。CDなのに何故かLPレコードのような人間味溢れるアナログ音っぽいのが気に入っていた。
「You Give Love A Bad Name」をリピート再生にした。テンションをMAXに上げていった試合当日の朝を思い出していた。


http://www.youtube.com/watch?v=KrZHPOeOxQQ

posted by Yohichi Sakawotano |13:28 | 坂大楽 踊一 | コメント(1) | トラックバック(0)

2011年11月09日

北極星

 彼の名前は坂大楽踊一。サカヲタノヨウイチと読む。もちろんハンドルネームだ。
 踊一が愛して止まない地元Jリーグチーム、コンサドーレ札幌。昇格争いが佳境に入った。元来寝ても覚めてもコンサの事が頭から離れない男だ。最近では何でもかんでもコンサに結び付けて考えてしまう。

 札幌サポーター御用達のサッポロビール。秋の限定ビール『CLASSIC 富良野VINTAGE』をグラスに注ぐ。踊一はコンサが勝った時しか『CLASSIC』を飲まないつもりだった。コンサはヴェルディに1-2で敗れた。しかし、ナイトゲームで行われた四国ダービーでライバル徳島が愛媛と2-2で引き分けたので祝杯を挙げたのだった。愛媛が0-2のビハインドから追い付いたのだ。しかもアディショナルタイムで2点追い付いた。これだからサッカーはわからない。踊一は前半徳島が2得点した時点でスカパー中継を見るのを止めてしまっていた。徳島の勝利を疑わなかった。しかし…。

「コンサはツイている。まだ運がある」

嬉しさのあまり思わずビールに手を伸ばしてしまった。
 敗戦の後だけに反省も忘れない。
「コクは中盤のタメ、キレはパスやドリブル、サイドチェンジの切れ味」。
踊一はいつものようにビアグラスを眺めながらサッカーに例えていた。

「喉越しは爽快感、つまりシュートだよな。原料のホップ、選手は地元産だ。泡はスタジアムの熱気でどうだ。醸造方法に問題はないのか」

いつしかクラブの育成方針を振り返っていたら、時計の針は零時を回っていた。

 西嶋が徳島に移籍を決めた時に、札幌と徳島が昇格争いをするだろうと思っていた。むしろ、昇格争いしたかったし、しなければいけないと思った。本気で徳島が昇格を狙う年なんだと理解していた。FC東京、札幌、徳島の三連複でいい。競馬になぞらえて本気でそう思っていた。
 だがサッカーの神様は気まぐれだ。1999年以来「J2の兄貴」と言われ続けたサガン鳥栖に昇格のチャンスを与えたのだ。韓国人監督の緻密で攻撃的なサッカーは、驚異的な猛追を実現し、10月には昇格ほぼ確実と思われる勝ち点を積み上げていた。
 鳥栖の躍進により、札幌と徳島が3つ目の椅子を争う形になった。残り4試合。勝ち点59。得失点差は徳島が札幌を2点上回っている。だがモノは考え様だ。愛媛がアディショナルタイムに2点追いついていなければ、勝ち点が徳島61札幌59。得失点差は4点差もついていたのだ。札幌はヴェルディ戦敗戦のダメージを最小限に食い止める事が出来たのである。

 気分が高揚していた。2009年、2010年と事実上昇格の望みが断たれたのは夏だった。文字通り真夏に“終戦記念日”を迎えていたのだが、今年は枯葉が舞い散る季節まで昇格争いを繰り広げている。冬タイヤへの交換、暖房に電源を入れようかという季節までコンサは粘ってくれた。勝ち点に、得失点差に、一喜一憂できる歓びを噛みしめていた。シナリオ通りと言えばシナリオ通りだった。33節フクアリ。千葉に引導を渡したのは西嶋のヘッドだった。34節、運命に導かれるように札幌と徳島は勝ち点59で並んだ。2本目の発泡酒『麦とホップ<黒>』は、ほろ苦さと甘さが入り混じっていた。

「相変わらずクオリティが高いな、サッポロさんは」

踊一はアルミ缶を握りつぶしながら「これからが本当の勝負だ」と呟き、晩秋の夜空を見上げた。

 北極星がひときわ強い光を放っていた。コンサはJ1リーグの北極星にならなければいけない。コンサを中心に回るJ1、コンサがかき回すJ1を踊一は思い描いていた。上がるだけではなくJ1を引っ掻き回したい…酔うと夢が拡がるのだった。広大な天の川、オリオン、カシオペアの他に、ベガ(仙台)、白鳥座(新潟)、いるか(川崎)も見える。
「輝け ポーラスター 私のポーラスター♪」
AMラジオから八神純子の名曲が流れていた。


http://www.youtube.com/watch?v=D4Lp5i0oYlE
(「ポーラー・スター」 八神純子)


posted by Yohichi Sakawotano |18:35 | 坂大楽 踊一 | コメント(0) | トラックバック(0)

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