コンサドーレ札幌サポーターズブログ

スポンサーリンク

2011年11月13日

先制点

 テレビ北海道の中継録画を見返すのを楽しみにしていた。
コンサのGOALシーンは何度も何度も見返す。踊一はコンサのGOALシーンはその数十秒前から巻き戻し、一時停止を繰り返しながら分析するのが至福のひとときだ。
お立ち台に上がった二人の顔。ウッチーと古田。
自信に満ちた表情。やりきった感ありありの良い顔だった。
 ウッチー。七三分けが似合うリーマン顔のウッチーのドヤ顔。
まるで凄腕の営業マンのようだ。
営業課長からのきついノルマ。「開始10分で先制点奪ってきて」
こんな無理難題に愚痴一つこぼさずキッチリ答えた。そんな印象。
 ちゃんと根回しは済んでいた。シュンにロングロングタテポンを頼んであった。
「合図するから。俺が抜けたらDFの後ろに落としてくれ」
岩沼シュンピーのフィードは低空で飛び、ボールはウッチーがコントロールしやすい位置に弾んだ。ゴールハンターの血が騒ぐ。

 同じころゴール裏では踊一が叫んでいた。
「シュート!!」
ウッチーが放ったボールはゴール右隅に突き刺さった。開始7分の電撃GOALだった。
踊一はサポ団体ATKのメンバーのみならず、後ろのサポや通路を挟んだ隣のサポともハイタッチを交していた。バシーンと音がする強いハイタッチだった。
誰もが興奮していた。誰の目も熱く燃えていた。血沸き肉踊るコンサ熱烈サポーターゾーンの面々。
今季先制した15試合、コンサは全勝だった。
「この試合ももらった!!」誰もが信じて疑わなかった。

「このまま終了のホイッスルまで突っ走る!」

 ウッチーの先制ゴールで、ただでさえ雰囲気が盛り上がっていたゴール裏がますますテンションが上がっていった。いつものように“昇格座敷わらし”岡山一成がエンジンを温めてくれていた。改めて岡山に感謝したい、と踊一は振り返る。
ピッチと応援がスイングする試合、それも90分間通してスイングする試合というのは年に数回しかない、というのが踊一の持論だ。
例えば、「サッポロ」コール、「コンサドーレ」コール。ピンチの時や押し込まれている流れの時、絶対に相手にゴールマウスを破らせないという魂の入ったコール。実はこの定番のコールで、その日のサポーターの勝利への執着が表れる傾向にある。クラブ創設から16年目だが、この真理は変わることはない、と踊一は感じている。
 この日の大分戦にゴール裏の意気込みが十分に発露しているのを感じていた。そして重要なのはそのサポーター達の意気込みが空回りすることなく、ピッチの選手達のプレーに反映すること。大分戦は反映していて、とても嬉しかった。応援の良し悪しは、サポーターの自己満足で終ってはいけないと考えている。選手が結果を出せて初めてサポーターの応援、努力は実るものだと踊一は考えていた。
 だから、後半40分に古田が追加点を入れた時、強く確信したのだった。

「勝たせた。勝ったのではなくサポーターが勝たせた」

誰もが傍観者じゃなかった。ゴール裏いやスタジアムのサポーター、ファン全員が「参戦」し、選手と一緒に戦った典型的な試合だと思った。
 先制した後の定番チャント、定番コールは一人一人の心からの「勝ちたい気持ち」がこもっていた。その声、その手拍子の束はやがて大きな塊となり、まるで宇宙戦艦ヤマトの波動砲のようにピッチにとどろいたに違いない。
 
 400試合出場のスナマコは左サイドを牽制しながら、中央のボランチ河合キャプテンにパス、河合は周りを見ながら攻めのスピードをコントロールする。敵味方のポジショニングを確認するとすかさずスナにボールを戻す。スナはスルスルと上がってきたウッチーの足元にパス。この後のウッチーのワンタッチパスが素晴らしかった。スナから来たボールを絶妙な角度、絶妙なボールスピードに変換し、バイタルエリアに迫った古田にアシストボールを出したのである。古田は渾身のシュートを叩きこむ。大分を仕留めるトドメの一撃だった。

 踊一が「サポが勝たせた」と思った要因は、「コーヒールンバ」にある。
 幾多のコーヒールンバがゴール裏で歌われてきた。しかし大分戦のコーヒールンバの出来は珠玉でなかったか。「勝ちたい」気持ちが声の束になって文字通り選手の背中を押していた感覚があった。
目の前の敵、大分トリニータの他に勝ち点で並ぶ3位徳島ヴォルティスとも戦っていた。1-0勝利では物足りなかった。

「もう1点要る。もう1点取ってくれ」

 昇格争いが佳境に入ると、勝ち点1、得失点差1のデリケートな駆け引き、勝負になる。もちろん踊一らサポーターはそれらを待ち望んでいた。そういう駆け引きを楽しんでいるのだ。選手も楽しんでいて、サポーターも楽しんでいる。応援チャントとピッチのスイング感というのはそういうことなのかもしれない。それは昇格争いしていなければ出て来ない雰囲気なのだ。昇格可能性の消えた去年一昨年の“消化試合”では絶対に醸し出されないムードなのは間違いない。

 「大分の選手はスタジアムの異様な雰囲気にのまれている。気迫負けや」(デカモリシ)

 「見ての通り。気持ちの面など全てにおいて札幌に負けていた」(田坂監督)

大分側のコメントを読んで、踊一は再び確信しニンマリした。

「俺達が勝たせたんだ。赤黒の12番の気迫で勝たせることができたんだ」

自意識過剰と嗤うなら嗤えばいい。俺達の気迫はホンモノだった。
カーステレオから BON JOVI が流れていた。試合前に心のアクセルを全開にする儀式だった。
踊一が大一番の前に必ず聴く BON JOVI のLIVEアルバム。CDなのに何故かLPレコードのような人間味溢れるアナログ音っぽいのが気に入っていた。
「You Give Love A Bad Name」をリピート再生にした。テンションをMAXに上げていった試合当日の朝を思い出していた。


http://www.youtube.com/watch?v=KrZHPOeOxQQ

posted by Yohichi Sakawotano |13:28 | 坂大楽 踊一 | コメント(1) | トラックバック(0)