コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2011年11月09日

北極星

 彼の名前は坂大楽踊一。サカヲタノヨウイチと読む。もちろんハンドルネームだ。
 踊一が愛して止まない地元Jリーグチーム、コンサドーレ札幌。昇格争いが佳境に入った。元来寝ても覚めてもコンサの事が頭から離れない男だ。最近では何でもかんでもコンサに結び付けて考えてしまう。

 札幌サポーター御用達のサッポロビール。秋の限定ビール『CLASSIC 富良野VINTAGE』をグラスに注ぐ。踊一はコンサが勝った時しか『CLASSIC』を飲まないつもりだった。コンサはヴェルディに1-2で敗れた。しかし、ナイトゲームで行われた四国ダービーでライバル徳島が愛媛と2-2で引き分けたので祝杯を挙げたのだった。愛媛が0-2のビハインドから追い付いたのだ。しかもアディショナルタイムで2点追い付いた。これだからサッカーはわからない。踊一は前半徳島が2得点した時点でスカパー中継を見るのを止めてしまっていた。徳島の勝利を疑わなかった。しかし…。

「コンサはツイている。まだ運がある」

嬉しさのあまり思わずビールに手を伸ばしてしまった。
 敗戦の後だけに反省も忘れない。
「コクは中盤のタメ、キレはパスやドリブル、サイドチェンジの切れ味」。
踊一はいつものようにビアグラスを眺めながらサッカーに例えていた。

「喉越しは爽快感、つまりシュートだよな。原料のホップ、選手は地元産だ。泡はスタジアムの熱気でどうだ。醸造方法に問題はないのか」

いつしかクラブの育成方針を振り返っていたら、時計の針は零時を回っていた。

 西嶋が徳島に移籍を決めた時に、札幌と徳島が昇格争いをするだろうと思っていた。むしろ、昇格争いしたかったし、しなければいけないと思った。本気で徳島が昇格を狙う年なんだと理解していた。FC東京、札幌、徳島の三連複でいい。競馬になぞらえて本気でそう思っていた。
 だがサッカーの神様は気まぐれだ。1999年以来「J2の兄貴」と言われ続けたサガン鳥栖に昇格のチャンスを与えたのだ。韓国人監督の緻密で攻撃的なサッカーは、驚異的な猛追を実現し、10月には昇格ほぼ確実と思われる勝ち点を積み上げていた。
 鳥栖の躍進により、札幌と徳島が3つ目の椅子を争う形になった。残り4試合。勝ち点59。得失点差は徳島が札幌を2点上回っている。だがモノは考え様だ。愛媛がアディショナルタイムに2点追いついていなければ、勝ち点が徳島61札幌59。得失点差は4点差もついていたのだ。札幌はヴェルディ戦敗戦のダメージを最小限に食い止める事が出来たのである。

 気分が高揚していた。2009年、2010年と事実上昇格の望みが断たれたのは夏だった。文字通り真夏に“終戦記念日”を迎えていたのだが、今年は枯葉が舞い散る季節まで昇格争いを繰り広げている。冬タイヤへの交換、暖房に電源を入れようかという季節までコンサは粘ってくれた。勝ち点に、得失点差に、一喜一憂できる歓びを噛みしめていた。シナリオ通りと言えばシナリオ通りだった。33節フクアリ。千葉に引導を渡したのは西嶋のヘッドだった。34節、運命に導かれるように札幌と徳島は勝ち点59で並んだ。2本目の発泡酒『麦とホップ<黒>』は、ほろ苦さと甘さが入り混じっていた。

「相変わらずクオリティが高いな、サッポロさんは」

踊一はアルミ缶を握りつぶしながら「これからが本当の勝負だ」と呟き、晩秋の夜空を見上げた。

 北極星がひときわ強い光を放っていた。コンサはJ1リーグの北極星にならなければいけない。コンサを中心に回るJ1、コンサがかき回すJ1を踊一は思い描いていた。上がるだけではなくJ1を引っ掻き回したい…酔うと夢が拡がるのだった。広大な天の川、オリオン、カシオペアの他に、ベガ(仙台)、白鳥座(新潟)、いるか(川崎)も見える。
「輝け ポーラスター 私のポーラスター♪」
AMラジオから八神純子の名曲が流れていた。


http://www.youtube.com/watch?v=D4Lp5i0oYlE
(「ポーラー・スター」 八神純子)


posted by Yohichi Sakawotano |18:35 | 坂大楽 踊一 | コメント(0) | トラックバック(0)