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2008年10月28日

父の愛読書

週に1、2度、寝たきりの父と過ごす1日。

命の綱である栄養点滴を、欠かすことはできないが、その作業を何度かすることの他は、静かに時間が流れる1日だ。

たいていは、本を読んで過ごす。

かつて自分のものであった部屋は、今は、姪が使っているが、
自分の本が壁一面に並んだままなので、
そこから、何冊か取り出して読んでいる。

そこで、覚えのない時代小説を見つけた。

父が買い求めたものらしい。

私が実家にいた頃は、父はまだ現役で働いていたから、
父の読書する姿はあまり記憶にないが。

定年後のゆったりとした時間に、
父はずいぶんと本を読んでいたらしい。

実家を訪ねると、
ソファーの上に、読み掛けの本が置いてあったりしたものだ。

父の買った時代小説を何冊か読み終えたころ、
私の本棚とは別のところに、
ずらっと並んだ本を見つけた。

「鬼平犯科帳」。
それは22冊もあった。

父はこれをどんなふうに買い集めたのだろう。
1冊読んではまた1冊とだったのか。
何冊かまとめて買ったのか。

今はもう言葉を発することをしない父に、話を聞く術はない。

「鬼平犯科帳」を読み出したら、
思いがけない面白さに、
ぐいぐいとひきつけられて、
時間を見つけては、次、次と読み、今日は9冊目に入った。

父が過ごした穏やかな日々を思いながら、
父の愛読書を読み続けている。

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posted by consatai |19:30 | コメント(0) |

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