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息子がサッカーを始めたのでサッカーを観るようになり、1997年のフロンターレ戦でコンサにはまりました。自分自身は全くの素人です。観戦はSB席。ホームゲームの半分はCVSやってます。

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『世界の終わり、あるいは始まり』   歌野晶午

2009年02月15日

“世界の終わり” とくれば “ハードボイルドワンダーランド” と続くはずなのだけど、今回は “あるいは始まり” です。
“葉桜の季節に~” が割と面白かったので、歌野晶午作品の2冊目に選んだのがこの本です。



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幼い小学生を狙った連続誘拐殺人事件。誘拐された子供達は皆、銃殺死体で発見された。その残虐な手口の犯人は、、、、、、、、

主人公は 小学6年生の息子の部屋から 被害者の父親の名刺など、息子が犯人かもしれないと疑わせるものを発見してしまう。一度抱いてしまった疑惑はどんどん膨らんで行き、疑惑を否定するために息子の部屋を調べることで、更に疑惑を固める証拠を見つけてしまう。





 以下、ネタバレあります。注意! 






息子が犯人かもしれない となったとき、親として どう対処すれば良いのか。
主人公は 様々なケースを想定して悩みます。その様々なシュミレーションというか、妄想というか、葛藤というか、悶々としたロールプレイングを 書き連ねたのが後半です。
これが結構リアルで、そこそこ共感できるものもあれば、とても出来ないものもあり、なかなか面白いところです。


これほどの大事件ではなくても、親は子供を信じて良いのか悪いのか、子育てをしていく中で悩むケースは非常にたくさんあります。だからこそ決して他人事ではない、身につまされるような思いで読み終えました。
ただ、実際にこんな場面に出くわしたとしたら、とてもこんな悩み方ではすまないだろう、これではまだ甘いとも思います。



主人公は 散々悩んだ挙句にやっと答えを出しますが、その答えの内容は書かれていません。
果たしてどのような答えを出したのか、きっと読者により その答えは微妙に違うでしょう。
僕は きっとストレートで常識的な答えを出したのだろうと、だからこそまっさらな青空の下で息子とキャッチボールをしたのだ と思います。


post by aozora

11:45

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『夜を賭けて』  梁石日

2009年02月15日

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昨秋 『闇の子供たち』 を読んで衝撃を受け、もう一冊 梁石日の本を読んでみたい思い、手に取ったのが この本。小説としての良し悪しというよりも 事実が持つ圧倒的な迫力、この本からも強い衝撃を受けました。 

舞台は昭和33年、僕が生まれた年。前半は大阪城の隣に広がる 広大な大阪造兵廠(大阪砲兵工廠)跡から 生活のために屑鉄を掘り出して売り飛ばしていた在日朝鮮人、通称アパッチ族の したたかで逞しい姿と 警察との壮絶な戦いが 生き生きと描かれています。
後半は 一転して長崎県にある大村収容所が舞台。日本のアウシュビッツと呼ばれていた施設の悲惨な実態と、それと戦う人々の姿が描かれます。
前半と後半は 舞台といい 文体といい 雰囲気といい 全く別物と言っても良いくらいですが、日本という強大な権力が行う理不尽な仕打ちと戦い続ける姿、金義夫と初子の愛情がそこに一貫性を与えています。
最終章で わずかですが ほっとさせられたのが救いでしょうか。しかし、現在も 在日コリアンの方々は いわれない偏見や差別と 戦っているのでしょうね。



大阪砲兵工廠跡は現在、大阪城公園となっていて、当時の面影は全く無いようです。
大村収容所は大村入国管理センターとなり、近代的な施設に変わっているようですが、内部の実態は 殆ど変わっていないのだとか。
恥ずかしながら 大村収容所の事は 知りませんでした。
知らない事は まだまだたくさんあります。



この作品の前半部は映画化されていますが、まだ観ていません。
今度DVDを探して 是非観てみたいと思います。

小松左京の「日本アパッチ族」は このアパッチ族をモデルに書かれたらしいのですが、知りませんでした。開高健の「日本三文オペラ」も このアパッチ族をテーマとしているようです。

梁石日作品としては 次回は 『血と骨』 を読みたいですね。






post by aozora

00:46

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『TENGU』  柴田哲孝

2009年02月13日

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なんとなく書名が気になって購入し、面白くて一気に読み終えた。
読み終えて、書名が『天狗』 ではなく 『TENGU』 なのに 納得。


平家の落人が細々と生き延びてきた山奥の小さな村。
そこで起きた人間の仕業とはとても思えない凄惨な連続殺人事件。
果たして犯人は村に伝わる伝説の天狗なのか。
26年後、思わぬ形でその正体が判明する。


僕は面白かったけど、好き嫌いははっきり分かれるでしょう。
アメリカ軍やFBIまで絡むストーリー設定には相当無理があるし、
ドロドロとした人間関係も 容認できる人と 徹底拒否の人がいるだろう。
結末も 意外なのか 荒唐無稽なのか 評価は分かれるだろうと思う。


しかし、ビッグフットに アイスマン。
いろいろなUMA(未確認生物)が登場するけど、
実は、、、、、、、 おいおい これか!? 
全く想定外。やられました。



post by aozora

00:38

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『葉桜の季節に君を想うということ』  歌野晶午

2009年01月08日

やられたね!

すっかり騙されてしまいました。



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どう騙されたのかは ネタバレになるので 書けません

後から思えば 何ヶ所も違和感を感じるところがあったのだけど、それらは全て伏線だったわけで、先入観というか、思い込みというか、何事も決めてかかっては駄目だと反省させられました。

巷では このラストに賛否両論があるようですが、僕は好きです。
軽くハードボイルドな元探偵の主人公も悪くないです。

読み終えて初めて 『葉桜の季節に君を想うということ』 という どこか古風でロマンティックな書名にも 納得しました。まぁ、葉桜というよりは 紅葉した桜だと思いますけど。




第57回日本推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞、2004年このミス1位 を受賞した作品です。
ただ、本格ミステリーというよりは エンターテイメント系の作品だと思うし、「必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本」という触れ込みはちょっとですね。



歌野晶午の作品は 今回初めて読みました。
もう1~2冊読んでみようかなと思いますが、これはという作品が見えてきません。
お薦めの作品ってありますかね?







post by aozora

21:42

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『切羽へ』  井上荒野 (「キリハヘ」 イノウエ アレノ) 

2008年11月20日

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「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽と言うとよ。トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」 (195頁)

静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。 (帯より)


お互いに意識しあった男と女が、必ず結ばれるとは限らない。
安っぽい小説やドラマの世界では、惹かれあう男と女は簡単に結ばれ、ドロドロとした愛憎劇が繰り広げられるが、現実の世界ではそのようなケースは意外と少ない。
特に、片方に、或いは両方に家庭があった場合、お互いに本気であればあるほど、結ばれることのないまま、お互いの気持ちを確かめ合うことすらないまま、破滅の匂いに魅力をを感じつつも表面的には平静を装ったまま、ひっそりと終わる事が多いのではないだろうか。
この小説は、そんな大人の恋愛小説だと思う。心はゆらゆらと揺れ動くが、何も起こらない。必死に家庭を守ろうとするわけでもなく、男を強く求めるでもなく、自分の心に立つさざ波を持て余しつつも、淡々と静かに日々を送っていく。

刺激的な出来事と言えば、セイの同僚で奔放な性生活を送る月江、月江の愛人である本土さんの妻、3人の女性の忍耐と葛藤が、うまく対比させながら描かれている事くらいか。

読み終えた直後は、あまりにもあっさりした読後感に正直少々物足りなさを感じたが、自分の生活を振り返ってみると、改めて思うところがあり、僕の人生にも確かに切羽があったなと、じんわりと染みてきた。
 

第139回(2008年上半期)直木賞受賞作です。



post by aozora

01:59

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最後まで読み終えられなかった本もあるさ

2008年11月16日

前に書いたとおり 『どすこい(仮)』 も途中で飽きたのだけど、京極夏彦だって 時には息抜きをしたいよね、と思いながら 最後まで読んだ。 
だけど、途中で読むのが面倒になって最後までたどり着けなかった本というのも 結構あるわけで、今回は そんな本の話を簡単に。



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『失格社員』  江上 剛 

セクハラ、パワハラ、公私混同、不祥事、ワーカホリック等々、サラリーマンが抱える問題は シチュエーションが変わっても 基本的なことは昔も今も変わらないんだな、というのが正直な感想。会社員になりたての頃に こんな小説を一生懸命読んだよな と思いつつ、あの頃なら この本も面白く読んだのかもしれないけれど、50歳になった今 読むと どれもこれも中途半端で甘い展開で、現実はもっともっと厳しいぞ と思いつつ、半分くらい読んだところで、GIVE UP。



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『アイズ』  鈴木光司 

『リング』 『らせん』 は面白かったけど、『ループ』 は三部作にしたいがために タイトルから入って失敗したと思うし、それ以降は どうも駄目だな。『楽園』 『仄暗い水の底から』 はそれなりに面白かったけど、あとはどうも、、、、、、、
この 『アイズ』 も期待して読み始めたのだけど、「ホラー小説の旗手が「本当にあった怖い話」を取材して描いた 超恐怖小説!」 という うたい文句の割に 全然 怖くない。本当にあった とうたっているにしてはリアリティが無いし、中途半端なまま 終わっている。この本も 半分くらいで GIVE UP。 



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『こんな話を聞いた』  阿刀田 高 

阿刀田 高は昔から好きな作家で、どの作品を読んでも裏切られなかったと思うのだけど、この作品集はどうも駄目だった。
こんな話を聞いた、で始まる短編18話。どの話もそれなりに面白いとは思うのだけど、続かなかった。何故だろう?
多分 最近の体調と合わなかっただけだ、この次に読めばきっと違う印象になるかもしれない と自らに言い聞かせ、この本はまたの機会にとっておこうと思う。







post by aozora

22:54

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『イエスの遺伝子』  マイクル・コーディ

2008年11月16日

京極夏彦の単行本 『どすこい(仮)』 と 文庫本の 『どすこい。』 は同じ本なのだろうか? 『どすこい(安)』 という本もあるようなのだけど、なにが違うの? と思って検索してみたら、単行本が(仮)で、軽装版が(安)、文庫本が 。らしい。  まぁ どうでもいいや。

単行本と文庫本でタイトルが違う という本は少なからずあって ( このブログで最近紹介したものだけでも、佐々木譲著 『うたう警官』→『笑う警官』、夏見正隆著 『僕はイーグル』→『スクランブル』 などがある)、単にタイトルを変更するケースだけではなく、文庫化を機に 内容や文章にも手を入れてタイトルを変更するケースなど、様々だ。
より良いタイトルに変更されるなら まだ良いけれど、間違って同じ本を買ってしまう可能性があるから、気をつけないといけない。そもそも 年齢のせいか 最近は同じタイトルでも 同じ本を二度三度と買ってくることがあるのだから、本当に困ったものだ。



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マイクル・コーディ著 『イエスの遺伝子』 は、同じタイトルで 一度文庫化されたが、後に 『メサイア・コード』 とタイトルが変更されて 再発売されている。明らかに 『ダ・ヴィンチ・コード』 の影響で、二匹目のどじょうを狙ったものだろうけど、これは行き過ぎだよね。


この本は 古本屋に安く山積みされていて、普通はこの手の本は買わないのだけれど、「ディズニーで映画化決定!」 と書かれた帯に惹かれて買ってしまった。
(物語) 天才的遺伝子学者トム・カーターは、人間の遺伝子をすべて解読する装置を開発し、ノーベル賞を受賞した。だが 祝賀晩餐会の直後、彼を狙う暗殺者が 妻の命を奪った。やがて 妻が脳腫瘍を患っていたことが判明、彼は自らの装置で八歳の愛娘を調べるが、脳腫瘍で一年以内に死ぬことを知る。彼は娘を救う方法を探るものの、有効なものはなかった。残された道は、奇跡の治癒をもたらす イエス・キリストの遺伝子の謎を解くことだった。

イエスのDNAを求めて世界各地を探し回るプロジェクトチーム、イエスの復活を待つ秘密結社、悪を粛清する謎の暗殺者、コンピュータのエキスパートなどが複雑に絡み合い、クライマックスに向かって ぐいぐいと疾走する。
良くも悪くもアメリカ的な小説で、ハリウッドの臭いがプンプン。でも、単純に面白いです。有り得ないストーリーなのは判りきった事なのだけど、あえて騙される楽しみですね。一気に読み終えました。
このラストは意見の分かれるところでしょう。この小説が映画化されなかったのは 当然だと思います。( これから 実現するのかもしれないけれど )

それにしても、この作品が日本で発表されたのは 1998年、アメリカでの発表は その1~2年前なのでしょうけど、この10年間のDNA研究・DNAビジネスの進展は 驚くものがありますね。この作品の中で出てくる最新の技術が 既に半ば常識となり、荒唐無稽なお話とは思えなくなっているのですから ビックリです。





post by aozora

19:37

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『どすこい(仮)』 と 『屍鬼』 

2008年11月15日

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『どすこい(仮)』 京極夏彦

地響きがする - と思って戴きたい。

という書き出しで始まる短編が7本。
 『四十七人の力士』  新京極夏彦 
 『パラサイト・デブ』 南極夏彦 
 『すべてがデブになる』 月極夏彦 
 『土俵(リング)・でぶせん』 京極昌彦 
 『脂鬼』       京極夏場所 
 『理油(意味不明)』 京極夏彦 
 『ウロボロスの基礎代謝』 両国踏四股 

題名を見ていただけばわかるとおり 全部パロディです。 

内容は、、、、、う~ん、、、、、表紙から中身まで 暑苦しいデブ満載で、これを面白いと思う人と くだらないと思う人と はっきり分かれると思うが、いずれにしても馬鹿馬鹿しい本だ。
京極作品だから 一応最後まで読んだけど、どの作品も ひねりがワンパターンで今ひとつ、正直、僕は途中で飽きた。
自分の作品のパロディも載せたら良かったのに、、、、、探偵・榎木津がデブになる話は面白そうだ。



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『屍鬼』 小野不由美

『脂鬼』 の元本ということで読んでみました、『屍鬼』。
「なんで今頃 小野不由美なんだ」 と皆から言われたけど、まだ一冊も読んだことが無かったのだから 仕方ない。
上下巻の単行本で、2段組で 計1200頁超、文庫なら 5巻まである大作。 
読みにくい文章に加えて、大勢の登場人物、細かい描写の連続で ストーリーはなかなか進まず、上巻を読むのは 大変だったが、下巻に入ってからは グッと面白くなり、一気に読み進んだ。
屍鬼=吸血鬼の話なのだけど、屍鬼を 凶暴なバンバイアではなく、姿も心も人間と変わらない存在 として描いているところが面白い。善悪の境はどこにあるのか、神はいるのか、単なるホラー小説では終わらない なかなか深みのある小説だった。



それにしても 『脂鬼』 と 『屍鬼』、前者はパロディとはいえ あまりにも違いすぎる作品だったなぁ。





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23:46

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『のぼうの城』 と 『水の城  いまだ落城せず』

2008年11月04日

天下統一を目前にした豊臣秀吉が、関東の雄、北条氏の小田原城を攻めた際の、その支城である成田氏の忍城(オシジョウ)を巡る攻防戦。
攻め手は5万の大軍を率いる石田冶部少輔光成、守るは足軽・百姓合わせてわずか3000人を率いる城代・成田長親。
光成は水攻めを試みるが、失敗。
結局、小田原城が落ちても忍城は落ちず、自ら開城する。
歴史小説はこうした史実を踏まえて、様々な物語を紡いでいくものであり、そこに著者の想像力が働く。


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和田竜著 『のぼうの城』
野風さんから借りて読みました。
のぼうは「木偶の坊」ののぼうで、それに敬称をつけただけ。忍城の城代、成田長親の愛称、というより蔑称なのだが、そのように城下の民からも小馬鹿にされていた長親が、どうやって城を守ったか。
全体にマンガチックなライトノベルという雰囲気で、いずれのエピソードもヴィジュアル的に 今風に描かれ、登場人物も分かりやすく、とても面白く読みやすいのだけど、如何せん 長親が皆の信頼を得ていく過程が描ききれておらず、前半と後半の差に違和感を感じ、正直物足りなかった。


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風野真知雄著 『水の城 ~いまだ落城せず』
同じ忍城攻防戦を描いた作品で、本屋さんを探して買ってきて読みました。
初めて読んだ作家なのだけど、歴史小説ではベテラン作家らしい。さすがベテラン、読みごたえがある。
ここで描かれている長親も甲斐姫から「うすのろ爺い」と呼ばれるような、どこといって際立ったところのない威厳のない男であるが、なぜ城代となり、どうやって信頼を勝ち得て、どうやって皆を纏めていったのかが丁寧に描かれていて素直に納得できる。
水攻めの描写も細かいし、44歳の長親と17歳の甲斐姫との関係も、こちらの方がアリだな。




歴史小説をあまり読まない人、そもそも本をあまり読まない人にも 『のぼうの城』 は お薦めです。とにかく面白く 読みやすいです。
『水の城』 にも軽い雰囲気が漂っていますが、これは主人公である成田長親の人柄によるところも大きいと思います。きちんとした歴史小説で、これはこれでとても面白いです。
僕としては 『水の城』 の方が面白かったかな。



post by aozora

23:51

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『隠蔽捜査』   今野 敏

2008年09月27日

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キャリア警察官僚が主人公 という繋がりで、今回は 『隠蔽捜査』です。





'''以下、ネタバレあります。 注意!  




主人公である竜崎伸也は 東大卒のキャリアで、現在は 警察庁長官官房の総務課長。
彼にとって 大学とは東大しかない。一流私大に合格した息子を、東大へ行けと浪人させる。
彼にとって 出世することが最優先。上司の息子と付き合う娘に、この縁談は自分の出世にとっても都合が良い と平気で言い放つ。
彼にとって 仕事が何より大事。妻が家族の事を相談すると、国家の事を考えるのが俺の仕事、家庭の事はお前に任せる と突き放す。
竜崎は 父親として、夫として、最低の男だ。

彼は 自分は使命を帯びたエリート官僚だ と信じている。
彼は 目標を達成するために 能力の無い部下をばっさりと切り捨てる。
彼は 出世コースから外れた同僚を小馬鹿にする。
竜崎は エリート意識がプンプンと匂う 本当に嫌な奴だ。


しかし、警察を揺るがす連続殺人事件と 息子の不祥事という二つの事件を通して、次第に竜崎は変わってくる。

清濁あわせ呑む、長いものに巻かれる、という処世術を拒否し、周囲との軋轢、摩擦が生じることを厭わず、原理原則を貫こうとする竜崎。初めのうちは融通の利かない唐変木、変人だと敬遠したくなるのだが、読み進むにつれ、ここまで徹底すると逆に小気味良くなり、応援したくなってくる。

竜崎にとって、官僚として真面目に働き出世する事 = 国を守る事 = 家族を守る事であり、また、いかなる場合でも正義を、自分の信念を貫く事が最善 と本気で考えていることが分かってくる。それは決して建前でもきれいごとでも理想主義でもなく、彼にとっては 至極当たり前の事なのだ。

息子が不祥事を起こしたとき、そんな竜崎にも迷いが生じる。周囲の言うとおりに穏便に処理すれば 自分の出世に影響する事は無い.....悪魔の囁きだ。しかし、いろいろな打算や計算を巡らしつつも、息子の事件に正面から対処し、常と変わらずに筋を通したことで、彼に微妙な変化が生じ、父親として夫として立ち直る。この辺が この作品のポイントであり、面白いところ。
そして、警察全体を巻き込んだ事件に際しても 下手な小細工はせずに 原則を貫いて正々堂々と対応したことで 警察の危機を救う事になる。


警察小説の主人公の多くは 現場で働く刑事、警官であり、往々にしてキャリア組は自己保身に汲々とし、現場の邪魔ばかりをする鼻持ちならない奴らとして描かれる。
竜崎も鼻持ちならないという点では同類だが、少々違ったタイプである。この変わり者のキャリア官僚というキャラクターを主人公に据えたところに この小説の面白さがある。

組織の対面保持のための隠蔽工作 というのがこの作品の表題だけど、本筋は 竜崎という少々変わったエリート官僚の物語です。


post by aozora

18:36

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