コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2015年03月13日

映画通に贈る「サッポロ・フットボール映画祭」

 いよいよ明日14日に迫った「サッポロ・フットボール映画祭」。今の段階になっても「行こうかなぁ~、ど~しよぉかなぁ~」と逡巡しているそこのアナタの背中をドンと押す(確定)。サッカー好き、あるいは映画好きならば見ておいて決して損をしない4本をご紹介しよう。そう、ひぐまさんにはこの映画祭を全力全開で推す資格(ってゆーか、むしろ義務)があったりするのだ(後述)。

 「ご紹介から」と書いておいていきなり見ていない作品からスタートする(笑)。
 「ネクスト・ゴール!」。今年のヨコハマ・フットボール映画祭でも上映されていたのだが、所用のため見逃していた作品だ。
 日本版ではサブタイトルとして「世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」と付く。これで内容はほとんど割れたも同然の作品ではある(苦笑)。「0対31」とは2001年にW杯オセアニア地区予選で記録されたFIFA国際Aマッチ史上最多の得点差がついた試合であり、勝った方は現在ではアジア地区に組み入れられているオーストラリア。負けた方がこの映画の主役:アメリカ領サモア代表を指す。
 映画的な見どころとしてはこのアメリカ領サモアの新監督としてトーマス・ロンゲンという人物がやってくるところがひとつのポイントになると思う。彼はそもそもはオランダの出身で、現役半ばにアメリカに移住し、引退後は指導者となる。2011年前半までアメリカ本土でアンダー世代の代表監督を務め、そこそこの実績を残してきたと思われる彼が、アメリカサッカー協会から派遣される形でサモアの土を踏み、選手たちを鍛え上げて国際試合初勝利を目指す姿が描かれる。その情熱の背景にあるものは何なのかを見たい。
 これまでの上映レポートを読むと、観客はラストには鼻をすするらしい。花粉症が酷いのだろうか?いや、そんなことはない。自分自身も初めて見るこの作品に酔いしれたいと思う。

 二本目は「エリックを探して」。日本では2010年の年末に一般公開されている。僕もその翌年に一度鑑賞している。前年のカンヌ映画祭コンペ部門出品作という触れ込み付きであり、実際に最高賞であるパルム・ドールを「麦の穂をゆらす風」で2006年に受賞したイギリスの名匠ケン・ローチがメガホンを取った。
 ケン・ローチ自身が大のサッカーファンであることは有名であり、監督作の中にもたびたびサッカーシーンやサッカーにまつわる話が出てくる。2005年製作のオムニバス映画「明日へのチケット」でもチャンピオンズリーグに出場するセルティックスのサポーターたちを、あの中村俊輔も袖を通したライトグリーンと白の横縞のユニフォームを纏わせて登場させている。
 ネタバレしないように内容に触れると、ショボくれたオッサンであるエリックの元に、彼の憧れの的であったエリック・カントナが現れて「オッサンも頑張れよ!」と尻を叩いてくれる作品である。途中、本物のカントナのマンチェスター・ユナイテッド時代の試合映像も挟み込まれており、プレミアリーグ通をも納得させる構成となっている。
 日本ではあまり有名ではないかもしれないが、カンヌの最高賞に輝いたケン・ローチのコメディ映画である。「麦の穂…」の衝撃かつ非情なラストとは好対照のタッチを楽しみたい。

 三本目の「メッシ」は今回のジャパン・ツアー中、各地で最も引きの強い作品と言えるだろう。僕も横浜で鑑賞した。
 今をときめくアルゼンチンの名選手であるリオネル・メッシをめぐるドキュメンタリー映画であり、彼の周囲の様々な立場の人間たちがとあるレストランに集い、彼らの視点からメッシが何故あれほどまでの偉大な選手への道を辿っていけたのかを描いている。この手法が巧みだ。メッシの幼馴染たちやイニエスタ、ピケらのバルセロナでのチームメートに、クライフ、メノッティといった名選手・名伯楽らが咲かせる会話劇を卓越した編集で整理し、メッシ自身の成長を追った映像を絡ませて描いている。レストランには登場していないが、マラドーナ(兄)ももちろんメッセージを寄せている。その豪華絢爛たる顔触れもさることながら、日本では無理じゃないかなと思わせるその製作技法に敬意を表したい。サッカーファンなら1食抜いてでも、映画ファンなら2食ガマンしてでも見るべき一本だ。

 ラストを飾る「プライドinブルー」は今回最もひぐま的に楽しみにしている作品である。と、いうことは未見ではあるのだが、2010年に発表された「アイ・コンタクト」の上映会の際に中村和彦監督と知り合い、今年もヨコハマでご挨拶させていただいている。両作品とも札幌では未上映というお話であり、中村監督自身も楽しみにしておられた。
 知的障がい者サッカーという、一般社会から見るとニッチな世界にカメラが入り込んで撮った作品であり、その点では非常に気を使って作られた作品ではあると思う。しかし一旦「中」に受け入れてもらえれば、選手たちの飾らない素顔が見えると思われる作品であり、そんな彼らの素顔から、我々が抱いている誤解や差別・偏見というネガティブな要素は拭い去られていく構成になっているのではと思われる…頼りない書き方で申し訳ないが、「アイ・コンタクト」がそうであったためあえてこう書かせていただいた。
 中村監督によると、この2本に続く3本目の障がい者サッカー映画がすでに完成を見ているらしい。とりあえず今年と来年は既発表の2本を楽しみ、3年後にその新作をサッポロで…という方向性もアリだと思う。

 「サッポロ・フットボール映画祭」は「ヨコハマ・フットボール映画祭」のジャパンツアーという位置づけで行われる。2011年にスタートした「ヨコハマ」は今年で5年めを迎え、満を持して全国進出!という段取りだ。やがて回を重ねて、コンサドーレのホームゲーム開幕と同様に冬の札幌にひと足早く春の訪れを告げるイベントとして定着してほしいと思う。

 実は「ヨコハマ」の5年前の第一回目、前売りの一日通し券購入者の第一号がひぐまさんで、映画祭当日の整理券番号の1番をゲットしたのもひぐまさんだったのである!(大本当)このブログでも積極的に宣伝させていただいた記憶も新しいところであり、映画祭がここまで続いたその礎の一部となったことは自負している(本当)。ついでに書くとサッポロの実行委員長であるKくんは昨年W杯予選「日本-コートジボワール」のパブリックビューイングなどで協力していただいている。オレが札幌在住であればもっと力になれたのに(Kくんすまん)…というのはともかく、つまりぜひ成功させてもらいたいと心から願っているわけだ。

 話をちょいとそらせると、問題はヨコハマやサッポロなどジャパンツアー各地だけのものでもない。昨年1年間に日本国内で公開された映画作品はついに600本を超えた(注・日本で制作された映画。洋画は含まない。総本数は615本=統計はすべて一般社団法人日本映画製作者連盟調べ)。史上最高の公開数であり、全国的に映画館の軒数が3,364スクリーンとほぼ横ばい傾向である現状(蠍座も閉館になったんだよなぁ…)を鑑みると、ごくごく1部の単館系映画館でわずか1週間だけレイトショー公開、あるいは1日だけの公開などという、よほどの映画ファンでもなければ見逃してしまうような興行形態を取らざるを得ない作品が大多数を占めているとしか思えない。
 そんな中で、日本製のサッカー映画が極めて少ないという悲しむべき現実がある。ためしにWikipediaで「サッカー映画」と検索すると、出てくるのはたった6本(無論本当はもうチョイ多いのだが)。今回サッポロでかかる「プライドinブルー」の上に記載されているのはなんと「かにゴールキーパー」である!アレも確かにサッカー映画ではある(オレも見た)が、膨大な作品数が検索にヒットする野球映画と比べると寂しい限りである。この現状を打破するためには「サッカー映画でも客が入る」ということを、映画詐欺師(プロデューサーと読んでください)たちに知らしめてやる必要がある。(だから来年は「ガンバレとかうるせぇ」を是非・笑)

 だから来て! ホラ、そこの「え~、どーしよっかなぁ~」と考えている皆さん!明日は「ストロボ」なんちゃらとか「風」なんちゃらとか「イントゥ」なんちゃらいかにも客が入りそうな作品の公開初日だったり、も○クロが来るとか(「幕が上がる」は意外に素晴らしい映画だった)いろいろありますが、とにかく4本中1本でもいいから「札幌プラザ2・5」(旧札幌東宝プラザ)に足を運んで、サッカー映画を楽しんでいただきたい。

 本家「ヨコハマ」が漢字ではなくカタカナで表記される理由は、前年公開の一般映画を表彰する「ヨコハマ映画祭」に倣ったものであるそうだ。今年36回目を数え、日本で最も良心的な映画ファンが集う祭典として業界でも一目置かれる存在になった「ヨコハマ映画祭」を目標にしようとは良い志を抱いていると思う。その志の一部でも札幌に根を付け、やがて太い幹となっていくよう、微力ながら応援していきたい。

posted by higuma |20:21 | コメント(0) | トラックバック(0)