コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2013年09月02日

「許されざる者」

 1992年に公開されたクリント・イーストウッド監督・主演作品の日本リメイク版。メガホンを取ったのは「フラガール」「悪人」などで知られる俊英・李相日。主演はイーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」にも出演した渡辺謙。
 先週の木曜と金曜になんと2日続けて試写会で見ました(笑)。当たらない時は全然当たらないんですが、本当に一刻も早く見たい作品でしたから行きましたよ2日とも(^^;;。

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 なにせオリジナルがアカデミー作品賞・監督賞など数々の映画賞に輝き、わが国でもキネマ旬報ベストテンで第一位を獲得している名作。誰がどのように作り直そうとも茶々が入ることは明らかで、そういう意味では「オリジナルを超えてはいない」と言いきれます。しかしながらこの李監督+謙さん版の「許されざる者」はオリジナルとは別の高みを目指し、そして極めたのではないかと思えるほどの重厚な手ごたえがありました。

 ストーリーはほぼ踏襲されており、セリフやカット割りなどにも…まぁ見たのが20年前なので詳細には憶えていないのですが(苦笑)…オリジナルを相当に意識した箇所が見受けられます。アイヌが登場するところが日本版ならではで、この若者(和人とのハーフ)を柳楽優弥が演じています。オリジナルのスコフィールド・キッドですね。他にも主人公・十兵衛の亡き妻(出てきません)の出自などにアイヌの影が見えます。
 柄本明さん演じる金吾が白眉。今年も恐らく助演男優賞を根こそぎ持っていくのでは?…と思うほど。國村隼サンがその分見事な使い捨てになっておりましたが(苦笑)。数少ない女優陣から小池栄子と忽那汐里の視線がいい。特に顔に傷を負ったなつめ(忽那)のローソクに浮かぶ表情が絶品で、小池も今回は珍しく最初から「小池だ」という感じではありませんでした。彼女はどんな役でどんな作品に出ても最初は「あ、小池栄子だ」と感じてしまっておりましたが(笑)。今回はそうではなかったです。

 スタッフからはベテラン・笠松則通のカメラも非常によくヌケており、原田満生・杉本亮の美術スタッフの仕事にもぬかりはありませんが、岩代太郎の音楽がやたらと出しゃばってきております。劇伴が入るタイミングなどいかにもワーナーといった感じで、「いや、ここはいらねぇだろう」と舌打ちをしてしまう箇所も度々。数少ない明確な失点のひとつとなってしまっておりました。それを抜いてもこれは「映画」。シネマスコープであることも加味されて、まさしく映画を見た後だけに味わえる満足感と充足感で五体が震えました。

 撮影は昨年の秋から初冬にかけて北海道の上川町などで行われました。北海道の雄大な手つかずの自然が鮮やかに画面を彩っています。また札幌大学が時代考証他の協力を施しております。

 ところでこの映画、プロダクションは日活とオフィス・シロウズですが、製作は委員会方式ではなくワーナー・ブラザース(ワーナー・エンターテイメント・ジャパン)が単独で行っている模様です。TV局や出版社が付いている気配がありません。これは今どき非常に珍しい。失敗したら全額ワーナーが負わないといけないわけでして、リスク分散という観点から昨今多くの映画が「おたくもぜひ」的に作られているのとは大違いでした。

 今年の少なくともベスト5には入るであろう秀作。2時間15分は決して長くない。9月13日の封切り予定です。

 ただ…若い人はこれ見ないだろうねぇ(苦笑)。見ても感じるところが少ないと思う(推定)。試写会での客層も普段は身銭切って映画を見るような人たちばかりじゃなかったし。これからトロントやベネチアからいい話が来れば風向きも変わるでしょうが。その意味では李監督の前作の「悪人」では深津ちゃんのモントリオールでの女優賞受賞が追い風になり動員が伸びました(19.8億=映連調べ)から、柳の下にドジョウが2匹いるかどうか注目ですね(推定)。


posted by higuma |13:51 | コメント(0) | トラックバック(0)