2010年06月20日
父の日々
幼い頃、両親を亡くした父は、 すぐに養子に出された。 子供のいない、ある夫婦の大きな大きな家へ。 その養父母には、もうひとり養子がいたが、 最初の子供は、父がもらわれる少し前に亡くなられたらしい。 ・・・父が養子。 その話を、父から直接聞いたことは一度もない。 いつだったか、母が教えてくれた。 父の体に残る、いくつもの傷跡も、 右手の親指の関節が変形し固まり、全く動かないのも、 その全ての原因が、養父母からの虐待だった。 食事も満足に与えられず、 朝から晩までこき使われ、殴られ、蹴られ、罵られる日々。 養父母にとって父は、我が子ではなく、ただの奴隷だった。 虐待、虐待、虐待の毎日が続く中、 中学を卒業した父は、逃げるようにその家を出た。 そして、十年後、 父は母と出会い結婚し、やがて私が生まれた。 時々、私はつい思ってしまう。 もしかしたら、 たぶんきっと、 母は、父と出会わなければ、病気になることもなく、 車椅子の生活を、強いられることもなかったであろうと。 父と母の出会いは、そういう出会いだった。 次の悲しみが、すぐそこまで来ていた。
posted by た |21:55 | D | トラックバック(0)