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2008年06月25日

呼ぶ背中

何歳の頃の出来事なのかさえ、わからない遠い記憶。

場所は、室蘭のデパートの1階。

祖母とふたりで遊びに行った時のことだった。


1Fフロアには当時、お菓子売り場があって、

私はその甘い香りの中を、ひとりグルグル駆け回っていた。


たくさんの人が賑わう店内で、一組の親子がふと目に入った。


白い着物の母親と、白いワンピースの女の子。


ふたりは私に背中を向ける形で立っていた。

やがて、ゆっくりと歩き出す親子を見て、何故か私は


ついていかなくちゃ・・・


そう思った。


その親子はまっすぐデパートの出入り口に行き、そのまま外の通りに出た。


なんの迷いもなく、ついていく私。


どんどん進んでいく親子は、けして姿勢を変えず、最後まで顔を見せることはなかった。


と、親子は突然、交通量の多い車道に飛び出し、反対側の歩道に行ってしまった!!


私も急いで追いかけようと車道に一歩、足を出した時だった。


耳の奥で、何か声が聞こえたような気がした。



・・・イッチャダメ



その声にハッと我に返った私は、あわてて来た道を戻った。





デパートに戻ると、祖母が大声で私を探していた。

私の姿を見つけた祖母は、泣きながら私を力一杯抱きしめた。

不安な気持ちが、祖母の体温で消されていった。



病気で入院している母に代わって、ずっと私を育ててくれた祖母。


いつも優しく、いつだって味方だった。





もう一度だけ。


もう一度だけでもいいから、


会いたいなぁ。





おばあちゃん・・・





posted by た |14:17 | ココロ | コメント(0) | トラックバック(0)

2008年06月23日

架空のコンサドーレ

あのですね。

スポーツ選手とか、芸能人とか、

そういうメディアを通してしか知ることの出来ない、

いわゆる「有名人」と呼ばれる人達を、自分と同じ人間だと思えないのです。


なんていうか、架空の存在というか、

アニメのキャラクターみたいというか、


同じこの世界に生きる、同じ人間だと実感できないのです。


コンサートとか、街角や空港とかで、直接、肉眼で見たことも何度もあるのに、




目の前にその人がいても、常にその人との間には「見えないブラウン管」が存在して、


それぞれの生きる世界を、別のモノにしてしまう。







朝がくれば起きて、夜になれば眠る。


風邪をひいたり、失恋したり、


傷ついたり、傷つけたり、


泣いて笑って、がんばって今日も生きてる。



なにひとつ、変わらないはずなのに。




何を言いたいのか、よくわからなくなってきたけど、



つまり、



自分にとって、コンサドーレの戦士達は、




最も身近な、架空のヒーローなのであーる!!!





posted by た |14:37 | うひ | コメント(0) | トラックバック(0)

2008年06月18日

最終回

連続ドラマが最終回を迎える時期が訪れています。


そうたくさんのドラマを観ているわけではありませんが、


連ドラを観ていると、三ヶ月があっという間に過ぎていく感じがします。




ひとつのドラマが終り、季節がまたひとつ先へ進む。




昔のドラマって、半年が基本じゃなかったっけ?


もっと昔は、どうだったんだろう。


何年もずっとやってるのもあったような。






・・・最終回。





このブログもいつかは終りが訪れる。


どんな理由か、どんな事情かは、わからない。


でも自然消滅とか、予期せぬ出来事とかではなく、


納得してピリオドを打てたらいいなと思う。




それまでは、その時までは、






・・・つづく





posted by た |16:05 | うひ | コメント(0) | トラックバック(0)

2008年06月16日

室蘭で

室蘭にはしばらく帰っていない。


そして、イタンキ浜には更にずっと行っていない。



子供の頃、毎日の遊び場だったイタンキ浜。


室蘭の海。





五歳くらいの頃だろうか、


祖母の家に預けられ、暮していた時期がある。



その祖母の家は山の上にあり、イタンキ浜を見下ろすことができた。



ある日、泡のような物体が帯状に連なり、海岸を埋め尽くしているのが見えた。


祖母とふたり、すぐに山を降り見に行った。


浜辺はあきらかに異様だった。


そしてそこには、大きなカメラを持った男がいて、海岸の様子を何枚も撮影していた。


海に入れる季節ではなかったので、波に濡れないように距離を置いて波打ち際を歩いていると、



不意に強い波が迫ってきた!!!



それを避ける祖母と私。


が、波のスピードは速く、左右から挟み込むようにふたりを囲んだ。


逃げ場をなくしバランスを崩した私はそのまま倒れ、大量の海水を飲んだ。


まるで何者かに足を引っ張られるかのように、強い力で私は波にさらわれた。


意識が遠くなっていくのがわかった瞬間、祖母が私の腕を引き上げた。


祖母は腰まで海につかっていた。



私は泣いていなかった。



ただ、その様子を無言で撮影しているカメラマンを不思議な気持ちで見ていた。



ずぶ濡れのまま家へ戻る二人の背中に、いつまでもシャッター音が響いていた。






その時はまだ、私の中の大きな変化に気付いていなかった。





今でも私は、海に入ることが出来ない。




posted by た |14:21 | ココロ | コメント(0) | トラックバック(0)

2008年06月12日

ケンゴ笑う

ここ最近、よくすれ違う親子がいます。


散歩中のママさんと、よちよち赤ちゃん。



その赤ちゃんが、なんとまぁ謙伍にそっくり!!!



よちよちケンゴちゃんは、目が合うとにっこーり笑って、手を振ってくれます。



それはそれは無敵の笑顔なのです。






よちよち歩きの頃のことは、なにひとつ覚えてないけど、


その時 見たモノ、感じたコトは、間違いなく自分の中に積み重なり、蓄積されている。


母の胸や父の背中のぬくもりに包まれ、守られていた記憶はしっかりと刻まれている。






人生は短い。



若さはもっともっと短い。





永遠にサッカーを出来る人はいない。




だから、誰かのためじゃなくていい。







明日も、よちよちケンゴちゃんに会えるといいな。



謙伍の笑顔で幸せな気分になれる人が、いっぱいいるんだよ。




posted by た |18:12 | うひ | コメント(0) | トラックバック(0)

2008年06月02日

言えなかった

小学1年生の時、

朝の通学途中、晴れていた空が急に曇り、雨が降り始めたのは、

いつもの歩道橋を渡り終えた頃だった。


傘もカッパも持っていなかった。


強くなる雨の中、トボトボとひとり歩いた。


地面を濡らす雨を数えながら歩いていると、不意に目の前の雨が止んだ。



・・・!?



ふと見上げると、隣に見知らぬ少年が立っていた。


傘の中に入れてくれていた。



六年二組。



名札に書かれた、その文字だけが妙に記憶に残っている。



少年はにっこり笑顔を見せたきり、あとは何も言わなかった。


ひとつ傘の中、無言のままの6年生と1年生。


ふたりは学校へ続く宮の沢の坂道をただ歩いた。





それだけの出来事だった。



人生の中のたった数分のこの出来事を、今も強く覚えている。


人見知りの激しいあの頃だったから、お礼も言わずに黙って教室に行ってしまったこと


今でも後悔している。



わずかな時間だったけれど、あの少年は私の人生に確かに関わってくれた。



ただ、



あの日、言えなかった「ありがとう」は


これからもずっと忘れ物のまま、胸の奥に残っているのだろう。





posted by た |14:04 | ココロ | コメント(0) | トラックバック(0)