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2006年10月19日

周産期医療の崩壊「序曲」

奈良妊婦死亡問題です。

はじめに,残念ながら亡くなってしまった方には,慎んで哀悼の意を表します。

周産期とは出産前後のことで,早産や難産などなにかと緊急性が高く,また危険な時期です。
奈良で起こったこの件では,分娩中に妊婦がけいれんを起こし,それを医者が子癇と誤診して結果的に死なせてしまった。

わけではありません。たぶん。

情報が少ない,というより情報を伝えるマスコミが,医療についての知識があまりに,もうほんとに絶望的なほどあんまりにも乏しすぎて,重要なことはまったく伝わってきません。
医療にかかわるニュースほど,マスコミの情報がアテにならないことはありません(特に毎日新聞はアテにならない)。

ことの発端はもっと別の所からだと思います。
奈良県では,ごく最近出産後に母親が死亡した事故で,書類送検したことがあります。
福島県でも同じことがあり,こちらはすでに逮捕・起訴されました。

医者(特に産科医)には,できる限りのことをしたとしても,患者が死亡してしまったら逮捕される,とほぼ間違いなく思っています。
今回起きた大淀病院の件でも,その片鱗が見られます。

重篤の子癇で,確実に緊急帝王切開,おそらく脳出血,当然胎児も危ない。

対応に必要なものリスト
 産婦人科医
 脳外科医
 麻酔科医
 小児科医
 夜間緊急手術スタッフ
 集中治療室
 新生児集中治療室
 その他諸々

もしかしたら,帝王切開と脳外科の手術を同時に行うかも,とここまでくると,もうブラックジャックか誰かを呼んでやるべきことです。
しかも夜間,っていうか深夜。

残念なことに漫画でもドラマでもなく現実に起きてしまったことで,当然,人口2万人程度の大淀町の病院にそんな体制はありません。

まして,先の福島の件では担当検事が「十分な体制がないのに、一か八かで治療されては困る」と名言を出しています。
不十分な体制での治療は逮捕なんだそうです。なので,大淀病院はほかを探します。

連絡を受けた病院の選択肢は3つ。

1.体制があり受け入れる
2.緊急性を考え,不十分な体制だが受け入れる
3.体制がない以上,受け入れない

といっても2番は死亡事故が起こったら逮捕です。今回のような重篤な患者を受け入れられるわけもありません。
で,2番が先ず消える。

1番に該当するはずの奈良医大では,陣痛待機室まで患者が溢れているなんていわれるほどの満員。
奈良医大の普段の状況は分かりませんが,先の大和高田市立病院が,受け入れを地元民に制限してますので,その影響が出ていたのかもしれません(そもそもの大和高田市立病院だって,周りの産科が休診したためあふれかえってました)。

奈良医大も大淀病院と手分けして搬送先を探しますが・・・

結果,搬送先を探すのに2時間,受け入れを決めた病院が1番だったのか2番だったのか分かりませんが,新生児はなんとか無事に生まれましたが,母親は不幸な結果となってしまいました。

で,最初の大淀病院は・・・

県警が捜査 医療ミスとの因果関係焦点に

正義の名の下に社会システムを破壊する警察が,またまた張り切っています。
で最初に戻る。。と。

次はどこでこんなことが起こるのでしょうね。

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posted by cudos |09:05 | 医療 | コメント(2) | トラックバック(0)