スポンサーリンク

2009年03月13日

『インターセックス』  帚木蓬生

20090313-00.jpg


インターセックスとは 半陰陽、両性具有。男でも女でもないが、どちらでもある人間のこと。



冒頭の産婦人科医の医療ミス裁判の場面から引き込まれました。
産婦人科医や小児科医の不足は 社会的な問題であり、そこには 過剰なまでに医師の責任を追及する風潮がある と思っているので、とても共感できました。

その後で、インターセックスの人たちの悲劇、現在も抱えている深い問題が 平易な文章で 判りやすく綴られるのだけど、僕の知らない世界、見ようとしてこなかった世界の話であり、大変興味深く、考えさせられながら 一気に読み進めました。


ただ、この本は 一応「衝撃のサスペンス長編」と謳っていますが、ミステリーとしては肩透かしもいいとこで、全然ミステリーになっていません。ミステリーを期待して読むと 正直 ガッカリします。
ミステリーとサスペンスの雰囲気を調味料とした インターセックスの解説書 といったところですね。

で、読み終えた後で 裏表紙近くに掲載されていた 『エンブリオ』の広告を見て、ああ この本の続編だったのだ と初めて気が付きました。どうりで サスペンス、ミステリーに膨らんで行きそうな部分や、衝撃的な部分を あっさり書き流しているのだな と気が付いた、というお粗末でした。


しかし、この本単体でも とても面白いです。
インターセックスの人たちは、症状の差はありますが、広義に見ると100人に1人くらいの割合で出現し、日本全国では100万人くらいになるのだとか。
100人に 1人というと、高校のときは1学年 450人でしたから、同期に4~5人いたのかもしれない。そう考えると とても大きな問題です。 
スポーツの世界では、本当は男性だった という女性アスリートの話が 時々聞かれますが、あれはこういうことだったんだな、と納得させられます。
今までインターセックスに関心が無かった方には 是非読んでいただきたい本です。



この作家の本は『閉鎖病棟』に続いて2冊目だと思います。
『閉鎖病棟』 は 精神病患者を描いていて、これも とても考えさせられる本でした。

去年も 半陰陽がテーマの本を読んで、貞子を引き合いに出したような記憶があるな と思い検索してみたら、一昨年の 『樹の上の草魚』 でした。


posted by aozora |22:19 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(0)