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2008年09月17日

『闇の子供たち』 梁 石日(ヤン ソギル) 

20080917-00.jpg


今夏映画化された作品。
しばらく前から読みたくて、古本屋を探していたのだが、なかなか出てこないので先週初めに新刊書店で購入した。一緒に購入した本を何冊か先に読んでいて、これは昨日から読み始めたのだが、そのまま手放せずに一気に読んでしまった。

映画も観たくなった。

失敗した!    

調べたら、昨日15日で終わっていた。もっと早くに読めば良かった。

10月から旭川の映画館で上映されるようだから、旭川まで観に行こうか。それともDVDレンタル開始まで待つか.....




タイを舞台に、幼児売買、小児性愛、幼児売買春、臓器売買の実態が生々しく綴られる。貧しい山間部から実の親に売られ、売春宿の地下室に監禁され、満足な食事も与えられないまま、暴力で脅されながら大人の性の玩具にされる子供たち。エイズに侵され働けなくなると、生ゴミと一緒にゴミ捨て場に捨てられ、必死の思いで親元に逃げ帰っても、実の親からも疎まれ、焼き殺されてしまう。 
幼児売春や臓器売買を取り仕切るマフィアの国境を越えた隠然たる支配と、子供たちを救うべく活動するNPO団体の無力さ。マフィアと癒着する警察、見て見ぬ振りをする政治家、その実態を暴こうとする日本の新聞記者を暴力で押さえ込もうとする闇の勢力。自分たちの利権を守るためには、裏切りも殺人も厭わない。それらが荒々しい文体でリアルに描かれる。
この作品は小説であり、ルポルタージュではないのだが、これと同じような事が実際に行われているのだろうな、と真っ直ぐに伝わってくる。
最後まで希望が見えないまま終わるラスト。希望の光を灯そうと必死にあがいても、あまりにも深く濃い闇の前では弱々しい風前のともし火。子供たちを救いたいのに、何も出来ない.....

この本を読んで、虐げられる子どもたちを可哀想だと思い、何とかしてあげたいと思う僕がいるが、実際に行動に移す事は多分無いだろう。せいぜい何時かどこかで多少のカンパをするくらい。
好むと好まざるとに関わらず、今の僕たちの生活は彼らからの搾取で成り立っている。理不尽な暴力とひもじさに泣いている子供のことを、この本のことを、この映画のことを、居酒屋で飲み食いしながら語る飽食の僕たちは、今の生活を捨てられるか? 
二束三文で我が子を売り飛ばす親たちのエゴ、子供たちを食い物にするマフィアたちの残酷さ、幼い子供を性の奴隷にする外国人たちの嫌らしさ、それらを見て見ぬ振りをする僕たちは同罪。それを非難する資格は無い。 
でも、知らないよりは知っていたい。知ってやましさを抱えながら生きる方が、知らないままノー天気に生きるよりはずっとマシだと思う。
これは小説であり、実際にはこんな事は起きていないのだというなら、それは本当に嬉しい事だ。しかし、似たような事は世界のどこかで必ず起きているのだろう。ほんの数十年か百年程前までは 日本でも同じような事が起きていたのだから.....

posted by aozora |01:11 | 本の話 | コメント(5) | トラックバック(1)

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闇の子供たち 【look! ヒトとクルマのイイ関係】

タイの国境、酷く貧しい村の少女が男に車に乗せられる。両親も同意の上彼女は売られた

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見ました!

こんにちは。
テレビのワイドショーで紹介していて、非常に興味を持ったのですぐに見に行きました。非常に真面目に作られた映画という印象で、衝撃的なストーリーが続き、ウソであってくれと思うほどでした。
映画の帰り古本屋に寄って探してみましたが、本の方はなくて文庫版で買おうかと考えています。
映画と本ではラストシーンが違うらしく、映画はの方はちょっとサスペンス、ミステリー映画っぽいエンディングで、小説の方と読み比べてみたいです。
もし本当にこのようなことがあれば、一刻も早く壊滅して欲しいと感じました。

posted by BEM | 2008-09-22 12:15

Re:『闇の子供たち』 梁 石日(ヤン ソギル) 

>BEMさん 
コメントありがとうございます。
僕の場合は 数百円をケチって 古本屋で探したばかりに 映画を観る機会を失ってしまい、本当に残念でした。
映画の方も なかなか評判が良いようですね。あまり一般受けする映画ではないでしょうから 大ヒットというわけには行かないのでしょうが、映画でも本でも良いので、多くの人に関心を持ってもらいたい と切に願います。

ところで、『魚々子』に行って来られたのですね。
あの店の前は何度も通っていて、何の店なのかなぁと非常に興味を持っていたのですが、金属製工芸品のお店だったのですか。今度 寄ってみたいと思います。

posted by 青空| 2008-09-23 09:32

魚々子よかったです!

青空さんもあの道を通るのですね♪
私もずーっとあの人形に興味があって、ようやく謎が解けました。
入口は普通の民家っぽいのでちょっと入りづらいのですが、お店の感じも良くて工芸品もあまり見ることができないものでした。
私はあまり金属のものは興味がなかったのですが、少し考えが変わりました。ぜひ一度ご覧になると楽しいかと思います。

posted by BEM | 2008-09-24 00:50

Re:『闇の子供たち』 梁 石日(ヤン ソギル) 

いきなりのコメントで、失礼します。
つかぬ事をお聞きしますが。
東京の多摩や調布、南大沢等でこの映画の公開はされないのでしょうか?
調べてはみたのですが、東京はまだ遠い所の
何店舗かのようで。
もし何か情報がありましたら教えていただきたく、コメントさせていただきました。
不快に思われましたら、削除していただいて結構ですので。
よろしくお願いします。

posted by 愛| 2008-11-07 09:44

Re:『闇の子供たち』 梁 石日(ヤン ソギル) 

>愛さん 
残念ながら 僕も情報は持っていません。

なかなか上映館が拡がらないようですね。
重いテーマの映画なので、通常の配給ルートには乗りにくいのでしょうか?
この際 早くDVDになってくれないかなぁ とまで思ってしまいます。

posted by 青空| 2008-11-09 17:37

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