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2008年06月17日

『遠別少年』   坂川栄治

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北海道人でも 遠別町が どこにあるのか 知っている人は 少ないのではないか 
留萌から 稚内へ向かって 国道232号線 日本海オロロンラインを走ると
小平 苫前 羽幌 初山別 遠別 天塩 幌延 豊富 稚内

サンセットビーチのある 羽幌町 
天文台のある 初山別村 
カヌーやシジミで有名な天塩川のある 天塩町 
放射性廃棄物中間貯蔵施設建設で論議をよんだ 幌延町 などと比べ 
遠別町は 特にこれといったものも無く 地味な町
稲作の北限地 
人よりも牛が多いらしいが 酪農の町というイメージでもない 



そんな町で育った著者の 小学生から 中学生にかけての頃の話なので 
物語の舞台は 昭和30年代後半から 昭和40年代前半の 遠別町
都会は 近代化されて 豊かになっていたが 地方は まだ 貧しかった 
中山峠だって 大型車は すれ違えないような 細い砂利道だったんだから 
遠別町みたいな田舎は 推して知るべし 

何も無い町には 厳しくも豊かな自然があり 
深く暖かい親子関係 率直な人間関係がある 

何も無い町でも 思春期の若者には性欲があり 
戦争の傷跡 青春の蹉跌がある 

13の短編からなるが 特別なエピソードがあるわけではない 
全て日常の延長にある出来事 
でも 著者の実体験だけに 生き生きとした描写が 時に楽しく 時に怖い 
読み進めるうちに 懐かしいような どこか心痛むような 自らの思い出に繋がっていく 




僕の友人が この町の出身 
同じ職場の後輩だったが 酒の席で上司と 大喧嘩
酒癖の悪い上司に 非がある と抗議したが 結局 退職
庇いきれなかった無力感 悔しさ 虚しさが 今も胸に残る 

彼も こんな少年時代を 送ったのだろうか・・・・・


posted by aozora |15:05 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『遠別少年』   坂川栄治

遠別少年、私も遠別少年でした。
あの本を読んで子供の頃の記憶がよみがえりました。
作者の栄ちゃんとは中学校・高校とバレーを一緒にしてきた私の一年先輩です。

posted by 西尾逸雄| 2009-01-03 12:50

Re:『遠別少年』   坂川栄治

>西尾さん 
僕は今金町や伊達町(市になる前です)、喜茂別町で少年時代を過ごしました。
山や川や海で 似たような遊びをしていましたし、一歩間違えると 大事になりそうな事も たくさんしました。
今の子供たちに 同じように遊びなさいと言っても、あの頃のような環境は既に無いし、あのような遊びは許してもらえないだろうと思うと、ちょっと可哀想な気もします。 

僕の友人の遠別少年から 年賀状が来ました。 
仕事が相当大変なようですが、元気そうで少し安心しました。

posted by 青空| 2009-01-05 21:56

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