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2017年08月23日

『教団X』  中村文則

 アメトーークの読書芸人で ピース又吉やオードリー若林が推薦した事で話題となった作品です。
 先日文庫化されたので、やっと読みました。

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 作品の舞台は、対立する2つの宗教団体です。 
 ひとつは、“沢渡” という教祖が率いる「教団X」 で、セックスで人を洗脳していくカルト教団。もうひとつは、アマチュア思索家を自称する “松尾” が主催する、宗教とも言えないような温かく緩いつながりの集団です。
 この2つの教団の間で迷う男女 (高原、楢崎、立花、峰野など) の姿に、松尾や沢渡の過去、因縁、欲望などを絡めながらストーリーが展開していくのですが、更にそこへ 公安警察の陰謀、アフリカの貧困ビジネス、テロ集団、太平洋戦争なども絡むため、扱われるテーマは多岐に亘り、なかなか複雑でヘビーな構成となっています。
 ただ、途中でいろいろな話が挿入され、それが各々結構なボリュームがあるので判り難くなっていますが、基本的なストーリーは明確でしっかりしており、そこを外さなければ決して難しい小説ではないと思います。

 松尾の講話が 「教祖の奇妙な話」 として数話挿入されているのですが、その内容がなかなかユニークで深く、とても面白いです。
 第1話は ブッダによる仏教の始まりとその後の姿、人間の身体を構成する膨大な数の原子と意識の関係。第2話は 宇宙の始まりとされるビッグバンと古代インドの宗教聖典 「リグ・ヴェーダ」 の関係。第3話は 人間の身体を構成している原子達は、リサイクルされて再び誰かの身体の構成物に成り得るという話しなどなど、ここだけでも一冊の本になりそうです。

 更に、放送局を占拠したテロ集団のリーダーが、保守系や左翼のコメンテーターと太平洋戦争についてやりあうシーンなども 興味深く面白かったです。
 教団Xの性格上、セックスシーンの露骨な描写が多いですが、そこは小説の構成上、仕方のない部分だと思います。

 いろいろと評価や賛否は分かれているようですが、僕としては とても面白い作品でした。


posted by aozora |23:23 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)

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