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2014年12月25日

『小太郎の左腕』  和田 竜 

「のぼうの城」や「村上海賊の娘」の著者、ニューウェーブ時代小説の旗手とも言われる、和田竜の作品です。
時代小説を期待すると裏切られますが、まぁまぁ 面白いです。


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時は 1556年、鉄砲が まだ“種子島”と呼ばれる火縄銃で、戦場にあっても 武将同士は 正々堂々名乗り合ってから一騎打ちをするという、大らかさの残る戦国時代を舞台にした エンターテイメント小説です。
登場人物は 皆それぞれに単純で判りやすく、ある意味 ファンタジー的、マンガ的ですが、とにかく 勢いと迫力があります。
猛々しい戦闘シーンの連続で、結構 悲惨で 残酷なシーンも出てくるのですが、それも勢いでカバーしています。

「小太郎の左腕」というタイトルですが、ひたすら真っ直ぐで熱い武辺者、林半右衛門の物語でしょう。
天晴れな男であれば 敵であっても素直に認め、自分が死んだ後は その男を頼るように遺言し、卑怯なまねはしないという 自分の美学を 最後まで貫き通して死んでいく姿は、切なく悲劇的ではありますが、清々しい爽やかささえ感じます。

一方の 小太郎、雑賀衆の生き残りで、隠された鉄砲の名手という設定なのですが、鉄砲に関しては ちょっとスーパー過ぎるのが難。そのせいで 後半の展開が 少々浅薄になってしまいました。
人物設定もちょっと雑な印象で、残念です。もう少し 人間らしい設定にすれば、作品全体に もっと深みが増したのではないでしょうか。


posted by aozora |23:20 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)

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