2013年12月10日
『僕とおじいちゃんと魔法の塔』 他 香月日輪
古本屋さんで ふと手に取って、パラパラとめくると面白そうだったので 買ってきました。 ただ、初めての作家で、本当に面白いかどうか 判らなかったので、何巻かあったけれど、とりあえず第1巻だけ。 薄い本ですし、文章も平易で、自宅に戻って すぐに読み終えました。
なかなか面白かったですよ。 ただ、大幅な加筆・修正が加えられているとはいえ、元々は ベネッセコーポレーションの「チャレンジキッズ5年生」に1年間連載された『ぼくの幽霊屋敷日記』という作品だそうで、基本的に 小学生向けの児童書、ファンタジーです。 自我の確立というのでしょうか、子供が一番成長する時期の 親離れ 子離れの物語ですね。 大人が言うところの“良い子”は本当に良い子なのか? という 誰もが一度は思った事がある素朴な疑問に対する答え(の一例)が書かれています。 世の中の善と悪は相対的なものであり、絶対的な善や悪はない。人と違っていてもいいじゃない、という作者の強いメッセージを感じ、共感できるところが多々ありました。 おじいちゃんの言葉には なかなか深いものがありますし、子供に読ませたい一冊ですが、大人が読んでも 面白いと思います。 続けて 第2巻も買って読みましたが、1巻とは ずいぶんと趣きが違っています。 主人公が 小学生から高校生へ成長したという変化だけではなく、表面的なファンタジー感だけが前面に押し出され、物語の深みが無くなってしまったように感じます。 魔性の者や 異界の者が出てくるだけでは ファンタジーとは言えないと思います。 2巻は話の途中で終わっていますが、3巻を買ってまで 続きが読みたいとは思いませんでした。 『下町不思議町物語』 も 読みました。 主人公である小学6年生の男の子が 異界の人たちに助けられながら 自立していく物語で、僕とおじいちゃんと魔法の塔の第1巻に近いものがあります。 あるがままを受け入れて 堂々と 一生懸命生きて行くことの大切さを訴えており、ここにも共感できる価値観があります。 自立した後も 異界の世界から卒業するのではなく そこに留まるというのが 今時というか、香月日輪の世界なのでしょうか。 大人でもそこそこ面白く読めますが、ファンタジーで味付けした 子供向けのライトノベルというところでしょうか。
posted by aozora |21:13 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)
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