2016年03月23日
『つまをめとらば』 青山文平
妻をめとらば 才たけて 顔(みめ)美わしく 情けある 友をえらばば 書を読みて 六分の侠気 四分の熱 与謝野 鉄幹の 「人を恋うる歌」 の冒頭です。 後に曲が付けられて、いろいろな人が歌っているので、 結構有名だと思うのですが、今の若い方はご存じないかな。 かく言う僕も 与謝野鉄幹の作品は これしか知りません。
第154回直木賞受賞作。 「ひともうらやむ」 「つゆかせぎ」 「乳付」 「ひと夏」 「逢対」 「つまをめとらば」 の6編からなる短編小説集です。 連作ではないので 主人公は 各編毎に替わるのですが、いずれも 満足なお役目は無くとも 何か一芸に秀でた下級武士と その妻女たちです。 太平の江戸の世を舞台にした時代小説で、基本的に男からの視点で 女性の姿が描かれますが、男と女の関係は 今の時代と さほど変わらないのか、あえて現代的な感覚で描いているのか、「こんな女や こんな男、いるよなぁ」 と 思いながら読みました。 簡潔な文章で リズムよく書かれているので サラサラ読めます。女性のずるさや嫌な面も書かれますが、一方で 女性の凛とした強さや覚悟、逞しさが 心地良く、どれも味わい深い作品に仕上がっており、読み応えがありました。
posted by aozora |21:14 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(0)