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2016年03月10日

『月と太陽』  瀬名秀明

東日本大震災から 明日で5年。

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これは 仙台在住の作家、瀬名秀明による、2011年から2013年にかけて発表された作品を集めたSF小説集で、どの作品にも東日本大震災がトピックとして出てきます。
タイトルの「月と太陽」は 「絆」で扱われる双生児を象徴していますが、一方で "月や太陽の引力が 東日本大震災発生の引き金になった可能性が高い” という説があり、それが関係しているのかもしれない・・・・・ というのは 僕の勝手な想像です。
 

1年ぶりに飛行機を操縦する作家と飛行教官の訓練風景を描く「ホリデイズ」は 雰囲気が良く、好印象の一編。
制御不能となって地球を周回する人工衛星を 仙台上空で捉えた奇跡と その利用の夢を描く「真夜中の通過」は、昨年末に成功した金星探査機「あかつき」の 金星周回軌道への再投入とも重なり、面白い。
「未来からの声」は タイムマシンもの。ちょっと 難しかったかな。
皆既日食とともに世界を巡る結合双生児の〈夢〉を描く「絆」。その夢とは 世界の人々が "絆” を実感するプログラムの開発なのですが、ストーリーは飛躍し、時間が複雑に前後しながら展開される為、読み進めるだけでも難儀。意識と身体をテーマに 心の繋がりの大切さを扱っているのは判るのですが、ストーリーを追うのに必死で、残念ながら 僕には面白さがよく理解できませんでした。
テレパシー装置と、ネット上に放たれた個人情報などのビックデータ、エージェントプログラムなどから〈個性)を考える「瞬きよりも速く」は、原発事故に象徴される“科学技術への失望” に対する反論と希望を描いていると思うのですが、これも微妙。

瀬名秀明は好きな作家の一人なのですが、この作品集は ちょっと難しかったな。
「絆」にしても 「瞬きよりも速く」にしても、もう一度読んでみると 面白さが判るのでしょうか?


それにしても、それぞれに別個の科学的テーマを扱っているのですが、「未来からの声」に登場する 脳から脳へ直接言葉を送る〈フラッシュ〉や、「絆」に登場する 見たものを全て記憶する〈瞳のレンズ〉など、作者がイメージする近未来の技術は 怖いです。


posted by aozora |20:42 | 本の話 | コメント(1) | トラックバック(0)