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2010年04月29日

『こころ』  夏目漱石

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息子が置いていった荷物の中にあった文庫本。
今までに何度か読んでいるけれど、最後に読んだのは 10数年前。
息子が何を考えながら読んだのか 想像しながら、もう一度 読んでみた。





平成の世にあって、先生のこころが理解できない若者は多いだろうと思う。
妻の心を無垢なまま汚さぬように死んで行きたいなんておかしい。夫婦なのだもの、悩みを打ち明け一緒に悩むべき. という意見はその通りだと思う。
Kの遺書に自分に不都合な内容が無かった事に安堵しつつ、Kの自殺の原因が自分にあると思い 悶々と悩み、愛する妻を一人残して自殺する先生を ジコチュー、身勝手と非難する気持ちも判る。
罪悪感から鬱になったんじゃない、とバッサリ切り捨てる人もあるだろう。


しかし、友情よりも恋を選び、卑怯な行動に及んだ自分に対する自己嫌悪に悩み続け、結局は自分の命を絶ってしまう心の弱さを 僕は責められない。
人生はいくらでもやり直せるんだ という意見には賛成するけれど、とりかえしのつかない事があるもの 事実。

誰でも 
もののはずみで つい嘘を吐いてしまったこと。
嘘は吐かないまでも、本当の事が言えなかったこと。
言わなくても良いことを 思わず言ってしまったこと。
すぐに言えば良かったのに、言うタイミングを逸して言えなくなってしまったこと。
そんな事があると思う。

利己的な心の醜さ、人間の愚かさ、心の弱さ、孤独と苦悩、多かれ少なかれ誰にでもあるもので、明治も平成も人のこころは変わらない。




さて、息子は 何を感じ、何を思いながら この本を読んだのだろうか?


posted by aozora |21:43 | 本の話 | コメント(4) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『こころ』  夏目漱石

去年、私も数十年ぶりに『こころ』を読み返しました。私も男の友情よりも恋を盗り(?)ます。

ある本で。『こころ』の中の先生の自殺と三島由紀夫の自殺とかは関係があるのか、ということが書かれていました。この話は乃木大将まで遡ればいいのでしょうか。

同じ人が読んでもその時代、その年代で感想が違います。だから私が去年この作品を読み終えた時に少し違和感を覚えました、それは自分が成長(老化)したあるいは時代が激変したということかもしれません。
人の心の迷いには時代の違いにはあまり関係ないのでしょうか。
だから『こころ』という名作の存在感あるのかもしれません。

posted by 野 風| 2010-04-30 08:53

Re:『こころ』  夏目漱石

>野風さん 
僕は 親友に盗られた事があります。(笑)

先生と三島の自殺に通ずるところはあるのでしょうけど、関係があるのかとなると どうでしょうか?

『こころ』
いろんな想いが重なり、感想を書くのが とても難しかったです。
若い頃に読んだ時は 何を感じたのだったか、昔の自分にも尋ねてみたい気がしました。

posted by 青空| 2010-05-01 09:55

Re:『こころ』  夏目漱石

「こころ」好きな本です。
しかーし、なぜ好きなのかと聞かれても…もう何年も読み返してないので、説明することはできません(汗)。(家のどこかにあるはずだ)

でも、多分、古臭くなく現代的な匂いがしたんだと思います。

posted by ブラコン2号| 2010-05-01 15:02

Re:『こころ』  夏目漱石

>ブラコンさん 
僕の本棚にある『こころ』は 昭和52年の新潮文庫(72刷、200円)で、紙は茶色く黄ばんで 活字は小さく、古い匂いがします。
息子が置いていったのも新潮文庫なのだけど、平成20年発売の161刷なので、まだインクの匂いも新しい......って、そういう意味ではないですね。

中学、高校時代に読書感想文を書くときには 結構定番の本だったような記憶があるけれど、いろいろ考え始めえると難しい本だと 改めて思いました。

posted by 青空| 2010-05-01 15:34

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