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2009年02月24日

『ブラザー・サン シスター・ムーン』  恩田 陸 

「brother sun sister moon」 という映画がある。
13世紀のイタリアを舞台に、聖フランチェスコの半生を描いた、1972年のイタリア映画。
地主の息子が富も名誉も家族も捨てて 裸になって生まれ変わり、街の門から光り輝く世界に旅立つ時の 自らが十字架となったようなシーンは印象的だった。
僕はクリスチャンではないけど、自然を愛し、謙虚に慎ましく生きようとするフランチェスコの言葉には感動すら覚えた。
今でもとても好きな映画だ。



で、書店で見掛けた『ブラザー・サン シスター・ムーン』。
恩田陸の新刊。

恩田陸には裏切られる事が多いので、新刊を定価で買うというのに少々ためらいがあり、何度か購入を見送ったのだけど、映画と関係あるのだろうか、あるならどのように映画を扱っているのか、やはりどうしても気になって買ってしまった。


20090224-00.jpg






 以下、少々ネタバレあります。  





高校も大学も同じ 男2人女1人の物語。
3人を繋ぐのは 高校時代に3人で一緒に観た「brother sun sister moon」であり、社会科学習の途中で偶然見つけた 空から降ってきて絡み合って泳ぐ蛇の姿。
“繋がっているけど 繋がっていない人たちの話”だ。


3人がそれぞれ主人公の3つの短編からなり、それぞれの進む道により、「あいつと私」(石坂洋次郎の本のタイトル)、「青い花」(Blankey Jet Cityの曲のタイトル)、「陽のあたる場所」(エリザベステイラー主演の映画のタイトル)という題が付けられている。


ストーリーというほどのものは無い。3人が各々の学生時代を淡々と語るだけ。
それは過去であったり現在であったりするのだけど、関連は殆ど無い。
過去を振り返る中で 一瞬 同じイメージを共有するが、それにも三者三様の思い入れがあり、決して同じものではない。
従って、これといったオチや結末も無い。
これから何か始まりそうな余韻を残して終るのだが、それも非常に微妙。



悪くないです。
淡く微妙な感覚が 一種独特な雰囲気を醸し出していて なかなか良いです。

でも、何かちょっと物足りなさがあり、評価も微妙です。



僕にも高校時代や 大学時代があり、この3人とは全く違うけど そこには僕なりに事件がいろいろあったわけなのだけど、青春の思い出は 甘酸っぱいのか ほろ苦いのか それとも酔わせるものなのか。 



青春小説ではあるけれど、『夜のピクニック』 の続編などではなく、全く関係ありません。




posted by aozora |00:17 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(2)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『ブラザー・サン シスター・ムーン』  恩田 陸 

『夜のピクニツク』の続編はぜひ書いてもらいたいですね、僕的には『ノルウエイの森』と同じレベルの作品です。
今回の直木賞候補になった『きのうの世界』はどうかなと、考えていました。
期待が大きくてもの足りなかったのは『六番目の小夜子』それより『球形の季節のほうが好かった。
『Q&A』はいつもと違うと、思ったがいつの間にか恩田ワールド、流石!

『ブラザー・サン シスター・ムーン』は『夜のピクニック』 の続編ではないが、同じ後味のする作品ですか?

posted by 野風| 2009-02-24 19:30

Re:『ブラザー・サン シスター・ムーン』  恩田 陸 

確かに『夜のピクニック』と『ノルウェーの森』は似たようなレベルの作品かもしれません。双方とも一般受けするストーリーで、ヒットしましたしね。
けど、僕としては どちらも二人の本流から外れた作品のような気がして、評価は今ひとつです。代表作は別にあると思います。

さて、『夜の~』と『ブラザーサン~』
後味は かなり違います。
『ブラザーサン~』にはオチがありませんから、中途半端なまま放り出されたような気がする読者が多いのではないかな。なんとも不思議な、微妙な作品だと思います。その微妙さが、好みに合う人と合わない人と、はっきり分かれるような気がします。

例によって、途中は面白いのです。
女子学生と女子大生の差をテーマにしたり、3人の付かず離れず微妙な距離感だったり、ふとした感覚がとても共感できたり、この辺は本当に上手いなぁと思うのです。それだけに、、、、、という所ですかね。

でも、僕は割と好きですよ。こんな風な 終らない終り方。
人生ってそんなもんですしね。

posted by 青空| 2009-02-24 21:31

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