2016年03月29日
【映画】 家族はつらいよ
男はつらいよシリーズの最終作は1995年、寅さんに代わるものとして撮った「虹をつかむ男」は2作でポシャったので、山田洋次監督作品としては 実に約20年ぶりのコメディとなるのでしょうか? 舞台は、結婚50年を目前に控えた平田家。夫はもうすぐ誕生日を迎える妻にプレゼントを贈ろうと欲しいものを尋ねるが、その答えは なんと「離婚届」。突如として持ち上がった離婚話に、子どもたちは大慌て。すぐに家族会議が開かれることになるが、それぞれが抱えてきた不満が噴出してしまう、というストーリー。 熟年離婚がテーマと言えば重たくなりますが、そこはコメディですから、軽妙に描かれています。だいたいが予定調和で、予想を裏切るような展開はないのですが、笑いの中にホロッとさせる演出は 寅さんに通じる安定感があり、安心して観て 笑える映画でした。 僕は封切初日の夕方に 札幌駅の上で観たのですが、シアター6は シニア層中心の観客で 7割ほどの入り。笑いのツボが 少々古臭い印象なのは否めませんが、僕ら夫婦を含めて あの観客層には ピッタリ。最初から最後まで あちこちで絶えない笑い声が 程よい効果音でした。 とかく男は 「言葉に出さなくてもわかるだろう、わかってくれよ」 と思いがちですが、それは大きな間違いで、判ってはいるけれど 言葉で確認したい、感謝の気持ちや 相手に対する愛情は 言葉に出してこそ伝わるものがある、ということなのでしょう。 映画の中のセリフに、良い音楽には不協和音が必要なように、幸せな家庭を維持する為に 多少の不協和音は適度なエッセンス というようなニュアンスのセリフがあったと思うのですが、その通りの作品でした。 山田洋次監督は 「家族というのは、厄介で、煩わしくて、無くてもよいと思うこともあるのだけれど、やはり切り捨てるわけにはいかない。そのつらさを何とか切り抜けていかねばならない、そのためにあくせく大騒ぎをする。そんな滑稽で不完全な人間を、表現したいと思いました」 と語っていますが、上手く成功していると思います。
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2016年03月23日
『つまをめとらば』 青山文平
妻をめとらば 才たけて 顔(みめ)美わしく 情けある 友をえらばば 書を読みて 六分の侠気 四分の熱 与謝野 鉄幹の 「人を恋うる歌」 の冒頭です。 後に曲が付けられて、いろいろな人が歌っているので、 結構有名だと思うのですが、今の若い方はご存じないかな。 かく言う僕も 与謝野鉄幹の作品は これしか知りません。
第154回直木賞受賞作。 「ひともうらやむ」 「つゆかせぎ」 「乳付」 「ひと夏」 「逢対」 「つまをめとらば」 の6編からなる短編小説集です。 連作ではないので 主人公は 各編毎に替わるのですが、いずれも 満足なお役目は無くとも 何か一芸に秀でた下級武士と その妻女たちです。 太平の江戸の世を舞台にした時代小説で、基本的に男からの視点で 女性の姿が描かれますが、男と女の関係は 今の時代と さほど変わらないのか、あえて現代的な感覚で描いているのか、「こんな女や こんな男、いるよなぁ」 と 思いながら読みました。 簡潔な文章で リズムよく書かれているので サラサラ読めます。女性のずるさや嫌な面も書かれますが、一方で 女性の凛とした強さや覚悟、逞しさが 心地良く、どれも味わい深い作品に仕上がっており、読み応えがありました。
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2016年03月16日
『小説・震災後』 福井晴敏
「こんな時だけど、そろそろ未来の話をしようか。」 『亡国のイージス』 や 『終戦のローレライ』 の 福井晴敏の作品で、 東日本大震災直後の 2011年6月から同年11月にかけて 週刊ポストに連載されたものです。 震災後の状況が ほぼリアルタイムで書かれており、ノンフィクションではありませんが、震災後の緊迫感、人々の不安、心の闇が 行間にあふれています。 文庫化に際し、敢えてタイトルに “小説” を冠していますが、小説という形を借りて 作者の思うところをストレートに書いているという雰囲気で、未来に向けて立ち上がろう、前を向いて進んで行こう というメッセージが 熱く伝わって来ました。 東日本大震災から5年が過ぎ、計画停電があった事、Fkushima 50 と呼ばれた 生命を賭して最悪の事態を防いだ69人の作業員がいた事など、忘れてはいけないのに 忘れてしまいそうな事を 改めて 思い出します。 解説を 石破茂が書いていて、この解説も良かったです。
posted by aozora |21:49 | 本の話 | コメント(5) | トラックバック(0)
2016年03月10日
『月と太陽』 瀬名秀明
東日本大震災から 明日で5年。
これは 仙台在住の作家、瀬名秀明による、2011年から2013年にかけて発表された作品を集めたSF小説集で、どの作品にも東日本大震災がトピックとして出てきます。 タイトルの「月と太陽」は 「絆」で扱われる双生児を象徴していますが、一方で "月や太陽の引力が 東日本大震災発生の引き金になった可能性が高い” という説があり、それが関係しているのかもしれない・・・・・ というのは 僕の勝手な想像です。 1年ぶりに飛行機を操縦する作家と飛行教官の訓練風景を描く「ホリデイズ」は 雰囲気が良く、好印象の一編。 制御不能となって地球を周回する人工衛星を 仙台上空で捉えた奇跡と その利用の夢を描く「真夜中の通過」は、昨年末に成功した金星探査機「あかつき」の 金星周回軌道への再投入とも重なり、面白い。 「未来からの声」は タイムマシンもの。ちょっと 難しかったかな。 皆既日食とともに世界を巡る結合双生児の〈夢〉を描く「絆」。その夢とは 世界の人々が "絆” を実感するプログラムの開発なのですが、ストーリーは飛躍し、時間が複雑に前後しながら展開される為、読み進めるだけでも難儀。意識と身体をテーマに 心の繋がりの大切さを扱っているのは判るのですが、ストーリーを追うのに必死で、残念ながら 僕には面白さがよく理解できませんでした。 テレパシー装置と、ネット上に放たれた個人情報などのビックデータ、エージェントプログラムなどから〈個性)を考える「瞬きよりも速く」は、原発事故に象徴される“科学技術への失望” に対する反論と希望を描いていると思うのですが、これも微妙。 瀬名秀明は好きな作家の一人なのですが、この作品集は ちょっと難しかったな。 「絆」にしても 「瞬きよりも速く」にしても、もう一度読んでみると 面白さが判るのでしょうか? それにしても、それぞれに別個の科学的テーマを扱っているのですが、「未来からの声」に登場する 脳から脳へ直接言葉を送る〈フラッシュ〉や、「絆」に登場する 見たものを全て記憶する〈瞳のレンズ〉など、作者がイメージする近未来の技術は 怖いです。
posted by aozora |20:42 | 本の話 | コメント(1) | トラックバック(0)
2016年03月07日
ともに、勝利を 。
初戦の東京V戦は イライラの募る試合で、昨日の岐阜戦も 立ち上がりから押し込んではいたものの 得点が奪えず、このままでは いつもの悪いパターンに陥りかねないぞ と思い始めた頃に 都倉のゴール。 それからは あれよあれよのゴールラッシュで、特に 進藤のスーパーアシスト、都倉のきれいなボレーシュートによる3点目は素晴らしく、前半だけで 4-0の大量リード。 後半は得点が奪えず、結局 そのまま試合終了でしたが、10年ぶりという 本当に久々のハットトリックもあり、気持ちの良い快勝でした。 とりあえず 無失点で終わったのは良かったけれど、PKとオウンゴールが無ければ 2-0の平凡なスコアだった訳で、後半に追加点を奪えなかったのが 今の札幌の実力。下手をすると どこでどうなっていたか判らない試合だったかもしれません。得失点差は プラスが多ければ多いほど良い訳で、常に1点にこだわり、得点は 取れる時に貪欲に取って欲しいと思います。 とは言え、4-0の快勝は PR効果も高く、今日は朝から気持ちよく「勝ったじゃん」「おめでとう」と声をかけていただき、嬉しいですね。これで 開幕戦にも誘いやすいというもの。35000人とは行かずとも、2万人を超える大観衆で 連勝の後押しをしたいですね。 さて、 2001年8月18日のFC東京戦の時に 札幌ドームの大型ビジョンで流された 「ともに勝利を」 というビデオ。 北海道新聞社の提供で、ゴール裏の熱いサポーターやCVS、すいか隊など、コンサドーレを応援する全ての人たちに 熱いエールを送ってくれました。 ドームで流されたのは 多分 あの日だけですが、非常にインパクトが強く 忘れられないもので、今でも語り継がれる伝説のビデオとなっています。 当時とは 選手も ユニフォームも スポンサー(パートナー)も変わっていて、公の場で流す事は出来ませんが、有り難いもので、今は you tube で見ることが出来ます。 15年近くも前のビデオで、既にご存知の無い方も大勢いらっしゃるようなので、昨日はゆるキャラブログの方でリンクしましたが、再度 こちらでもリンクさせていただこうと思います。 もちろんビデオの内容が一番な訳ですが、懐かしい顔もたくさん出てきて、年配者には涙物です。 https://www.youtube.com/watch?v=mxDTcocxWe0&index=66&list=PL64E6D4EDCF297111 このビデオを観て、CVSに興味を持ってくれた方は コチラ から。
posted by aozora |20:35 | コンサ | コメント(2) | トラックバック(0)
2016年03月01日
『雪と珊瑚と』 梨木香歩
「西の魔女が死んだ」以来の 梨木香歩です。 食べる事をテーマにした小説は 「かもめ食堂」 や 「食堂かたつむり」 など たくさんありますが、これも その中の一冊です。 不幸な生い立ちの 21歳のシングルマザー(珊瑚)が、周囲の人たちに助けられて カフェをオープンするというお話で、いろいろと大変な問題や 嫌な事も起きるのですが 概ね順調に進み、現実ではこんなに上手く行くはずがない、というのは 誰もが感じるところでしょう。 ただ、基本的には 「生きる事ことは食べること」 をテーマとしたファンタジーだと思います。だからこそ シンプルなストーリーで、珊瑚の頑なな心も 優しい人たちとの出会いにより解けていき、ハッピーエンドに向かうのでしょう。一生懸命に戦い 生きる姿を見ると 応援したくなりますもの。 最後の「おいちいねぇ、ああ、ちゃーちぇねえ」という 幼い雪の言葉は秀逸です。心がホッコリと暖かくなります。
posted by aozora |22:53 | 本の話 | コメント(5) | トラックバック(0)
2016年03月01日
『ゼロの迎撃』 安生 正
前作 「生存者ゼロ」は 作者のデビュー作で、第11回このミス大賞受賞作。 北海道や札幌を舞台にしている事もあって、途中までは 面白かったのだけれど、ネタバレした時点で 興醒め、ガッカリな出来でした。
この本は それに続く2作目で、中国の陰謀に操られた北朝鮮の精鋭部隊が 東京壊滅を狙ったテロを起こす というストーリー。 北朝鮮軍が核砲弾を入手するという展開や、米軍との集団的自衛権の問題などは なかなかタイムリーです。 敵の陽動作戦に簡単に惑わされる 平和ボケした日本、政局や保身が優先し 危機管理のできない政治家、法律上の制約から常に後手に回る自衛隊の対応、マスコミが声高に叫ぶ 報道の自由や国民の知る権利により 敵に筒抜けになる自衛隊の作戦行動 などという展開は、こうしたテーマを扱った作品では ありふれたものではあるのだけれど、この作品は 奇をてらっていない事もあってか、隣国やテロ組織が本気で攻めて来たなら 本当にこうなるかもしれないという妙なリアリティがあり、結構 怖い。 前作同様、後半の展開が今一歩で、少々アラも目に付き、ラストも ちょっと違和感を感じたのだけれど、腹を括った総理大臣の 自衛隊員に対する熱い檄 は良かったし、結局は 北朝鮮や中国による攻撃だとはせずに 正体不明のテロ組織による犯行として納めようとする日本政府の弱腰外交などは いかにもありそうで、なかなか面白かったです。
posted by aozora |20:21 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)