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2009年12月18日

『めくらやなぎと眠る女』  村上春樹

黄色の表紙が印象的だった『象の消滅』に続く ニュヨーク発の短篇集です。
ピンクの表紙のこの『めくらやなぎと眠る女』には 24篇が納められています。

20091218-00.jpg


『蛍・納屋を焼く・その他の短編』から 1篇、
『レキシントンの幽霊』から 4篇、
『中国行きのスロウ・ボート』から 2篇、
『TVピープル』から 2篇、
『カンガルー日和』から 5篇、
『回転木馬のデッド・ヒート』から 2篇、
『東京奇譚集』から 5篇、
村上春樹訳によるアンソロジー『バースディ・ストーリーズ』に書き下ろした 『バースディ・ガール』
全集にしか納められていない 『人喰い猫』
書き下ろしの 『蟹』、
の 計24篇です。

個人的には この3篇を読みたくて購入したようなものです。





結論から言えば どれも村上春樹的世界に遊べる作品で、楽しめました。
そのための短篇集なわけですから 当然なのですけど、過去に読んだ事のある作品でも、その時の環境や体調で 読後感や作品の解釈、意味が違ってくるという事はありますよね。



『バースディ・ガール』は 中学3年生の国語教科書(教育出版)に収められているそうです。
また難しい作品を収載したものですね。教師は この作品をどのように教えるのか とても興味がありますが、半面、紋切り型のつまらない教え方をして 小説嫌いを増やさないように と 切に願います。
作者は何を言いたいのか とか 主人公の願い事を100字以内で書け なんて問題は 正解なんて無いし 本当にナンセンスだと思います。

『人喰い猫』は どこかで読んだ気がするな と思いながら読んでいたのですが、『スプートニクの恋人』ですね。
『蛍』が 『ノルウェイの森』に広がって行ったのと同じパターン(短篇小説から長篇小説へ発展)なのでしょうか。

『蟹』は 『回転木馬のデッド・ヒート』に収められてる『野球場』という短篇の中で、登場人物が書いて“僕”に送ってきた作品と思われます。
『野球場』の中で“僕”はこの作品を 「たしかにうまくまとまってはいるのだけれど、小説としてのめりはりというものがまるでなく、何もかもが均等で平板」 と評していますが、この作品は どうなのでしょう?
どう考えても 村上春樹的世界にある作品だと思うのですが。

この3篇を含めた24篇が順不同に収められているわけですが、ラストに『東京奇譚集』からの5篇が並べられています。
『東京奇譚集』には5篇しか収められていないので、『東京奇譚集』の全部が 同じ並び順で ここに収められている事になります。
これって 再編集の短篇集として どうなのかな(?) と やや違和感を感じながら 読みました。


と ここまで書いて、改めてイントロダクションを読み返してみたら、『人喰い猫』のことも 『東京奇譚集』のことも 書かれていました。
選者には選者なりの考えがあっての事 だというわけですね。


『象の消滅』の時には 村上春樹の世界を再認識させてくれるようなインパクトがあった記憶があるのだけど、それに比べると衝撃度合いは薄かった気がします。
『象の消滅』とは違って、『めくらやなぎと眠る女』は 村上春樹の自選だからでしょうか。(『象の消滅』はゲイリー・L・フィスケットジョンが編集)
それとも、単に期待度の違いですかね。


今年 『1Q84』を読んで、村上春樹が好きになった人、村上春樹が理解できなかった人、多少でも村上春樹に興味を持った方には、黄色の『象の消滅』も ピンクの『めくらやなぎと眠る女』も、どちらも入門篇として 丁度良い一冊だと思います。

posted by aozora |10:15 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『めくらやなぎと眠る女』  村上春樹

村上春樹の本は全部保存してあつもりでしたが?
『東京奇譚集』は処分してしまた。
どんな内容か殆んど思い出せない。
私としてはイマイチの作品だったのか。
もう一度読めばまた新しいの感想が生まれる。

posted by 野 風| 2009-12-18 21:51

Re:『めくらやなぎと眠る女』  村上春樹

>野風さん
『東京奇譚集』は 村上春樹らしい作品集ですが、代表作とはならないでしょう。
これといった短篇は無いですが、読めばすぐに思い出すような作品ばかりですよ。

posted by 青空| 2009-12-26 11:01

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