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2009年07月26日

『利休にたずねよ』  山本兼一

今日、大河ドラマで利休が自害しましたね。
だからと言う訳ではありませんが、『利休にたずねよ』。
第140回 直木賞受賞作です。



20090726-00.jpg


千利休は秀吉から切腹を命じられて、70歳で命を絶った。
この作品は、何故 利休は腹を切らねばならなかったかという謎と、利休が完成させた侘び茶の中に秘められた色艶の謎に迫る歴史ミステリーです。

著者は 利休が好んだという茶器を見て その一点一点の美しさに驚き、利休=侘び寂びだけではないぞ と疑問を感じたらしい。それが この作品を書くきっかけだったという。
利休の研ぎ澄まされた感性、色艶のある世界を生み出した背景には何があったのか。

切腹の朝から始まる短編24話は、時を遡って進んで行く。
各々の短編では利休を取り巻く人たちのエピソードや心情が語られ、それにより(著者が考える)利休像が浮かび上がっていく。


こういった歴史小説の場合、作者が描く利休像がどれくらい真実に近いのかを検証する術は無く、茶道の嗜みも全く無い僕にはどこまで信じて良いのか判らないけど、千与四郎が 利宗易となり、千利休となっていく人生に ひとりの女性の存在があったという設定は 俗っぽいけど 面白い。


利休が最後まで手離さなかった緑釉の香合。
著者が描く利休は 大柄な美男子で、骨太な男、侘び寂びとは対極にある。


茶の湯を人心掌握の道具として利用する秀吉、茶道具に払うくらいなら有為の者を召し抱えよという黒田官兵衛、その外にも徳川家康、石田三成、古田織部など、様々な人物が出てくるが、それぞれの「茶の湯」観がそれぞれの人となりを表していて面白い。


誰よりも美を追求した男、利休。己の美学を貫く事で時の権力者に気に入られ、天下一の茶頭に昇りつめるが、やがてそれ故に対立し、嫌われ、追い詰められて行く。
しかし、最後まで権力に屈することなく己の美学を貫いた男の生き様が、最も美しいのかもしれない。







posted by aozora |22:43 | 本の話 | コメント(1) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『利休にたずねよ』  山本兼一

利休の恋の逃避行の部分は100%作者の創作だと分かるのに、なぜか利休頑張れ利休の恋よ成就せよと応援する。成就したら歴史が変わるのでありえないのだが。

皆既日食の太陽より。
空に浮かぶ月はまだ一つなのか
それが、気になる。

posted by 野風| 2009-07-27 20:04

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