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2007年10月27日

『水の時計』   初野 晴

20071027-00.jpg


オスカー・ワイルド作 『幸福の王子』 をモチーフにした作品 

幸福の王子では 王子の像から 宝石や金箔を 貧しく困っている人達へ届けるけど 
この作品では 脳死と安定された女の子から 臓器などを 移植を待っている人へ届ける 
この設定は なかなか面白い 


ところが その脳死状態の女の子は ある条件下で一時的に意識を取り戻すことがあり 
蘇生器に 取り付けられた意思伝達装置から 彼女の言葉が伝わってくる..... 

はたして 脳死を 人間の死とする事に 間違いはないのか? 
人間の死とは どの段階で判断されるべきものなのか?
肉体の死と 精神の死 
なかなか難しいテーマをはらんでいる作品だ



主人公は 違法な臓器移植のために 臓器の運搬係をつとめるのだが 
臓器移植を受ける人達の物語が サブストーリーとして展開される


全体としては 面白く 一気に読み終えた 
リリカルなラストも 悪くない 
読んでみて 損はないと思う



ただ 第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作だが ミステリとしては たいしたことない 
ストーリー展開の中でも 説明不足なところと 説明過剰なところが 混在
意思伝達装置を通して出てくる 女の子の言葉遣いにも 設定された年齢との差に 違和感あり 
全体に 納得できないこと 違和感を感じるところが 少なからずある
文章も まだ こなれていないところがあるし 
これからに期待 というところかな




人間の身体の問題を扱った作品としては 久坂部羊著『廃用身』が衝撃的だった
もう何年も前に読んだ作品だが この作品については 改めて.....


posted by aozora |23:45 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)

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