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2017年03月03日

『騎士団長殺し』  村上春樹 


第1部 顕れるイデア編 は 出張先の仙台空港で購入し、第2部 遷ろうメタファー編 は 札幌に帰ってから紀伊国屋書店で購入し、昨日 読み終えました。

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僕はハルキストではありませんが、昔から村上春樹が好きで、新作が出れば すぐに買って読んでいるので、この作品も 楽しく面白く読み終えました。
巷では この作品は ハルキ的世界の集大成、大いなるマンネリなどと言われているようですし、作中の 「風の音に耳を澄ませて」 というコミのセリフからは 原点回帰なのかとも思うし、どのように表現すれば適切なのか判りませんが、いつもと変わらない安定的な村上春樹の世界、大人向けのファンタジーです。

一方、いつもの定番アイテムが いつものように登場し、またか! と思ったのも 正直なところ。
村上春樹は、自分の中に 「物語のたまり」 があって、小説を書くときはそこから物語を拾いながら無意識のうちに書いているそうです。そこには 様々なストーリーやアイデア、ヒント、素材が たくさん集められているのでしょうね。
村上春樹に限らず、誰でも物を書く時は そうした素材を集めてから書き始めると思うのですが、その質や 量が 違うのでしょう。僕の 「物語のたまり」 が 我が家の物置だとすると、村上春樹のは amazon の物流センターといったところでしょうか。
そこに集まるものは どうしても自分の好みや趣味に合うものが多くなるでしょうから、そこから拾い集めると 同じような素材が多くなるのも仕方のないところ。この作品も、そういう事なのかもしれません。

また、主人公の 「私」 は画家なのですが、
「どれだけ長くキャンパスの前に立って、その真っ白なスペースを睨んでいても、そこに描かれるべきもののアイデアがひとかけらも湧いてこなかった。どこから始めればいいのか、きっかけというものが掴めないのだ。私は言葉を失った小説家のように、楽器をなくした演奏家のように、その飾りのない真四角なスタジオの中でただ途方に暮れることになった」 と語ります。
しかし、一度何かに触発され きっかけを掴めると
「それは私自身が描いたものでありながら、同時に私の論理や理解の範囲を超えたものになっていた。どうやって自分にそんなものが描けたのか、私にはもう思い出せなくなっていた。それは、じっと見ているうちに自分にひどく近いものになり、また自分からひどく遠いものになった。しかしそこに描かれているのは疑いの余地なく、正しい色と正しい形を持った」 作品が出来上がるのだといいます。
これは 作者自身の執筆の姿と重なるのでしょうか。

アーティストは誰でも これが自分の代表作になると信じて新作を発表する、過去の作品が代表作と言われ続けるのは心外だ と聞いたことがあります。
残念ながら、僕にとっての村上春樹の代表作は、今作を読み終えた今も 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、或いは 「ねじまき鳥クロニクル」 です。


ところで、
村上春樹の作品に登場する音楽、車、酒、服などで 具体的な名前で書かれるものは、その殆どが 村上春樹の眼鏡にかなったハイセンスなものばかりなのですが、この作品の中で主人公がスーパーマーケットで選んだビールは 「サッポロ」 でした。
 


posted by aozora |22:45 | 本の話 | コメント(2) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『騎士団長殺し』  村上春樹 

「トヨタ」車のレクサスの名前の由来は『色彩を持たない多埼つくる……』
「朝日新聞」の上、っていうのもありました。
「エッソ」の虎は今はもういない。

posted by 野 風| 2017-03-04 20:07

Re:『騎士団長殺し』  村上春樹 

>野風さん 
まぁ 否定的な例として名前が登場する場合もありますから・・・(苦笑)
でも サッポロビールは肯定的な登場ですから、素直に喜びましょう!

posted by 青空| 2017-03-05 17:58

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