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1978年生まれ。 コンサドーレ創立年度から応援を始め、1998年よりアウェイコールリーダーとなる。2003年春に札幌へUターン。 またコラムサイト「コンサイズム」では2001年末~2003年末までコラムを掲載。このブログではそのアーカイブと、当時を振り返るアフタートークをお送りします(予定)。
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2008年03月06日
clasics #28、このあたりから人生とか哲学とかに例えてサッカーを語り出してきます。文章もなんだか堅い。
サッカー好きでサッポロ好き、という以外は、僕も多分に漏れずごく普通のサラリーマンの一人だ。 朝起きて、シャワーを浴びて、ネクタイを締め、ラッシュにもまれて東京へ、会社へと早足で歩く。 そんなわけでごく普通にいろいろと仕事上での失敗も成功もある。電話をかけたり、会議したり、資料作ったり、ごまかしたり、謝ったり。上司とのコミュニケーションがうまくいかなくていらいらしたり。プレゼンで何を話そうか考えて耳から煙が出そうになったり。でも割合に日々のサイクルは単調で、普通の人とおそらく変わらない平日の一日。でも、すべてがうまくいく日があれば、トラブルが起こって不安と焦燥と憤りのうちに一日が終わることもある。 そういうときに、僕がしおれた菜っぱみたいに疲れてぼーっと帰りの電車に乗っているときに、ふと浮かんでくる情景がある。 場所はどこかの競技場。厚別にも似ているし国立競技場のようでもあるけれど、はっきりとはわからない。僕はそこを俯瞰的に眺めている。ちょうどテレビが反対側のゴール裏を映すみたいな感じ。 やがて選手入場の音楽が鳴り、同時にゴール裏ではそれをかき消すほどの声が響き渡る。めいめいが手にマフラーを、旗を広げ、赤と黒の荘厳な光景が僕の視界を覆う。 フェアプレーフラッグに先導されて、札幌の、そして対戦相手の選手が入場してくる。スタンドに向かって整列し手を挙げる選手達。それと同時に縦に揺れるスタンド、振り回されるマフラーや旗、爆発する声、声、声。この試合を見るために集った人々が想いのたけをありったけに、これでもかと言うほどに詰め込んでみんなが歌っている。叫んでいる。 試合が始まる。応援の響きは一層その激しさを増し、それに押されるかのように札幌の選手達は前線から果敢にプレスをかけていく。ディフェンスラインも高く、全体がコンパクトになっているのがよくわかる。そして何より選手達から伝わる気持ちがある。戦う気持ち。勝ちたい気持ち。 札幌ペースのまま試合は進んでいく。ボランチの選手が見事な読みでインターセプトを見せ、サイドアタッカーが鋭いドリブルで切れ込んでいく。早くて低い理想的なクロスがゴール前に上がる。けれどもフォワードが合わせられなくてボールがこぼれ、そこに猛然と走り込んできた二列目がミドルを放つが相手キーパーに止められる。あっと言う間にカウンターで攻め込まれ、ディフェンスのスライディングもわずかに届かず、絶好の位置からシュートを打たれる。けれどもキーパーが美しい弧を描いて跳びクリアする。ラインを上げろ、と味方を鼓舞するキーパーの姿と重なり合うように歌い出すスタンド。僕らのチームを鼓舞し、僕らも選手も共に戦うための歌。声とボールの動きが止むこともなく、そこに一つの大きな響きが体中を埋め尽くしていく感覚。 だけどそうして浮かべている情景には、不思議なことに選手の顔がはっきりと出てこない。背番号もあやふやだし、そもそもここがどこなのかもわからない。相手のチームがどこなのかもわからない。そんな奇妙なビジョンの中で、僕の頭の中の札幌は攻め込んでいく。ピンチを招く。先制する。失点を食らう。さらに逆転ゴールを奪われる。 一瞬の静寂、そして悲鳴とため息が漏れる。けれども、選手の誰かがすぐさまボールを脇に抱えて走り出す。取られたら取り返すばかりだ、と言わんばかりの勢いでボールをセンターサークルに置き、そして札幌は再び攻撃を掛ける。同点ゴールが決まる。耳を貫く狂喜の声。赤と黒の交錯する、猛り狂うスタンド。みんなが立ち上がり、拳を突き上げて喜んでいる姿。けれども、それすらもどこか朧気な世界。顔の見えない情景。 けれどもその断片だけは何故か見えるのだ。体を張り歯を食いしばって競り合うディフェンダーの顔が。相手を振りきってサイドラインを疾走するアタッカーの形相が。隙をついてゴールを奪わんとするフォワードの野生に満ちた目が。ゴールキーパーの絶対的な自信に溢れた表情が。 そして僕は理解してしまう。すべての表情が僕のものであることを。ピッチの上で戦う自分、それをゴール裏で後押しする自分、冷静にメインスタンドから見つめている自分。僕は僕自身と戦っている。自身の内面からの恐怖や不安と。日常の些末で不快な出来事と。思うようにいかない意志の疎通と。それらすべてが、この競技場の中で展開されている。 その感覚を覚えて、僕はそれらに打ち勝ちたいと強く想う。自分の人生の中で、一度で良いからとてつもなく美しいゴールを決めたいと想う。僕が守るべきモノを守りたいと想う。信じるべき人を信じていたいと想う。胸を張って歩きたいと願う。 夜の漆黒に染まった電車の中で窓に映った自分の目を見つめながら、僕はそんな想いが心の奥から湧き出る音を聞く。そして同時に、現実の世界では目の前のドアが開き、僕は電車を降りる。そして生きる力を(というのは大げさで照れるけれども)、完全にではないけれど、いくらか取り戻している自分に気づいて家へと歩き出す。そして眠り、目覚めれば新しい朝が始まる。僕はユニフォームを着て社会のピッチへ駆け出していく。 このゲームがまだまだ続くことを、僕は本能でわかっている。 だから、がむしゃらに走って、走って、走ってやる。 ゴールを決めてやる。 この試合に勝ってやる。
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1978年生まれ。 コンサドーレ創立年度から応援を始め、1998年よりアウェイコールリーダーとなる。2003年春に札幌へUターン。 またコラムサイト「コンサイズム」では2001年末~2003年末までコラムを掲載。このブログではそのアーカイブと、当時を振り返るアフタートークをお送りします(予定)。
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