2008年07月04日

厚別前夜

本格的に夏が来たと感じさせる蒸し暑さだ。吸い込む空気がどこか湿っぽくて温い。市内のどこかではスコールのような雨が降ったという。家の近くでは降らなかったようだけど、こんな蒸し暑い時はさっと一雨来れば涼しくなれるのに、と胸元を緩めながら思う。明日雨が降るのなら、その分まで今日降ってくれればいいのに、とも。だって明日は「厚別」なのだから。

チケットの券面には久々の文字<札幌厚別公園陸上競技場>。長ったらしい漢字の羅列も、10年以上も通っていればすらすらと書けるくらいにはなる。札幌ドームも好きだけど(特に雨や雪の日には)、やっぱり厚別じゃなきゃ、という気持ちもどこかにある。どこよりも多く記憶の積み重ねられた場所。歓喜も、落胆も、怒りも、悲しみも、すべての記憶があの芝生に、スタンドに、積み重なっている。からりと晴れた週末の午後、暮れる太陽の光を浴びる夕暮れ時、仕事が終わって慌てて駆けつけたときにひときわ輝く照明は誰もをそわそわした気持ちにさせる。アウェイからホームに向かって吹き抜ける「厚別の風」はふと一息ついたときに味わえる涼しさと、風に乗ってひょんな事からゴールを生むのが持ち味だ。そして、そのすべてが札幌のホームアドバンテージ。風を味方につけたゴールキックは意外と遠くまで飛ぶことを、アウェイの選手もサポーターも余り知らない。僕らはそれにつけ込んでボールをかっさらい、あっち側に流し込む。寮母さんと寮監と、試合に出られなかった若手達が手づから売る「しま福」の売店は残念ながら今年はないけれども、ここで飲むビールの味は相変わらず最高だ。でも、興奮のあまりこぼさないように注意が必要。

サミットの厳戒態勢で賑わう市内中心部を一歩抜けて地下鉄で15分、そこからのんびり歩いて20分。汗のにじみが気になる頃、厚別の凛としたたたずまいが出迎えてくれる。あとはここで跳び、歌い、手を鳴らし、歓喜の声を上げる90分が始まる。警官の多さと閉鎖されたコインロッカーに苦い顔をするよりはよほど有意義な時間の使い方だと思う。そして、市内がそんな様子だからと外に出るのを躊躇ってBSやスカパー!にしがみつくよりもよっぽど爽快であることは確かだ。落胆を恐れず、考えず、さあ、"La ATSUBETSU"の開幕戦へ。

明日は晴れ渡った空に、オレンジ色のサンバのリズムもかき消して圧倒してしまうほどの、赤と黒の歓声が厚別の風に乗って吹き渡ってくれれば完璧だ。そして、北海道はそれほど涼しくはないということを、古巣を相手にした西澤が涼しい顔をして教えてくれるだろうと期待している。彼が「世話になった」と話している、モミアゲの長さが微妙なあの人へのささやかな恩返しとして。

posted by retreat |21:44 | life | コメント(0) | トラックバック(0)

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