2008年03月01日

CONSAISM clasics #26

今回はclasics #26、奔流怒濤の大事件(私事)を経て文体もからっとさせてリニューアル。
これ書いたとき、読んだ人たちから「一気に文体変えてどうしたの?」と良く言われたことは内緒。


僕はもともと日焼けしやすい肌をしている。
一度日に焼けると腕やら顔やらが赤くなるより早く黒くなり、あっという間に夏男完成しかも長持ち、という訳だ。ただし外見だけだけれども。
今年の夏もずいぶんと日に焼けた。会社の人から「そんなに焼けて、どこ行ったんだ?」なんて聞かれるくらい日に焼けていた。そのたびに僕は答える。
「あ、これですか?サッカー焼けですよ~。」
 
今年の僕の肌が(特に腕周りが)どうして一気に焼けてしまったかはだいたい見当がつく。国立2連戦のせいだ。まず最初の浦和戦。僕は10時半という、普通の「サッカーファン」なら決して来ないであろう時間に国立競技場に来た。しかも僕より早く並んでいる人がいた。つくづくサポーターというのはナンギな性分やなぁ、なんて関西人でもないのにつぶやいて列に並ぶ。
アウェイサポーターの入場列は代々木門というところに設定されていて、この場所が晴れた空の下で並ぶには少々、いやかなりきつい場所である。だだっ広い入場ゲートの前にロープが縦に幾列も張られていてそこに並ぶわけなのだけど、何しろ燦々と降り注ぐお天道様の紫外線を遮る場所がどこにもない。気温30度をとっくにオーバーした東京のど真ん中で、そこに並んでいるだけでたらたらと汗がつたい、じりじりと僕のカラダの露出した部分を容赦なく焼いていく。これはもう我慢大会の領域である。このままいたらぶっ倒れるなおい、なんて話しながら日陰を求めてその場を離れた。
隣にある明治公園の木陰でわずかな涼をとりながらいろんな人たちと話す。顔なじみの人、久しぶりの人。初めて顔を合わせる人。いろんな話。バカ話。昔の話。そして応援の話。そうして時間は過ぎていって、入場しても太陽はまだ高い位置から僕たちを照らしていた。けれどもその長い長い、僕たちを照らしていた太陽はどうやら僕たちの味方ではなかったらしい。時間は流れ、夜になり、ボールが動き、ゴールが決まり、ゴールを決められ、そして最後は僕たちの目の前でVゴールを押し込まれ負けた。
次の日にベッドからのそっと起きあがり洗面所の鏡を見ると、腕と、サングラスをかけていたところ以外の顔の部分が信じられないほど黒くなっていた自分がいた。
びっくりした。
 
それでも僕は(というかアウェイサポーターの大多数も、だけど)翌週の日曜日に同じ顔で同じ場所に並んでいた。しかし今回は余裕を持って開門1時間前の4時前に代々木門に同じように並んでいた(そもそも浦和戦が異常だったのだが)。そしてきっちり僕よりも前に来て並んでいる人がいた。ここまで来るとサポーターというのはナンギな性分、とか言うよりも何か別の苦行を課せられる坊主のような感じだ。
しかしそんな夕方になろうとする時間でも、東京の夏の太陽は容赦なく照りつけてくる。何しろ浦和戦の時に並んでいる最中梅雨明けをしやがった太陽だ。夏本番の太陽だ。僕の皮膚が焼ける感触が伝わってくる。
そうして僕らは同じように入場して、キックオフを待ち、そしてボールが動き、立て続けに3点取られて「がんばれ札幌!」なんて東京サポーターからコールされて、素直に頑張って見たけれど1点取るのが精一杯で、負けた。
そうしてやはり次の日に鏡を見ると、いっそう黒さを増した肌がそこにあった。
肌に当たるシャワーが痛かった。
 
2,3日経つと焼けた部分が痛み出した。じんじんと火傷をしたような痛みではなく、日に焼けた部分をひりついた痛みが静かにまとわりついてくる感覚。
痛いなぁ、と呟きながらそれでも僕は何でもない風をして会社に行き、仕事を淡々とこなした。ミスもあったし成功もあった。普通の生活の日々。
そうしてその間、札幌は未だ勝ち星をあげられずにいた。
ただ、もう日に焼けるのは嫌だった。真っ昼間に外に出てどこまで焼けてしまうのか、、たまったもんじゃない。
 
8月10日も普通の休日だった。キックオフの頃に買い物にでて、冷房の効いた百貨店のお中元コーナーで祖母の喜寿祝いを探していた。気に入ったものを見つけて、支払いを済ませて、携帯で試合結果を確認する。1対0。勝った。やっと勝った。
嬉しかったと言うよりもほっとしたという感情の方が強くて、僕は人知れずため息をついた。深く、大きい安堵のため息をついた。そしてそろそろ帰ろうかと腕時計を見る。
腕時計の巻かれた僕の左腕。真っ黒だった腕は少しいい具合に色が落ちてきて、あのひりついた痛みもいつの間にか消えていた。

僕たちの夏はこれから始まる、と思った。ここからが札幌の夏だ。そしてそれがずっとずっと続くことを、熱く僕らを焦がすことを、勝利が続くことを心の中で願いながら、僕はいつもよりも軽いフットワークで人々をかわし、電車に乗った。
 

posted by retreat |23:29 | classics | コメント(0) | トラックバック(1)

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